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【書籍化】オタクガール、悪役令嬢に転生する。【web版】  作者: 富士とまと


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第156話 悪役令嬢フラグがあるらしい

 兄がまとめた出題傾向を元に、勉強するところと、捨てるところを決めて、数学と理科の付箋を色分け直した。

 うむ、だいぶスッキリしたよ。

 それで、芽維たんに教えてもらったり、相良さんに教えてもらったりと充実した時間であった。

 けど、私、本当に教えてもらうばかりで……。

「芽維さんはご自分の勉強は大丈夫ですの?」

 申し訳ない気持ちになった……んだけどでも、何もしてあげられないのが悔しいなぁ。

「大丈夫だよ、聞かれた問題を解くことで自分の勉強にもなってるから。それに、過去問とか本当に助かりました」

 その割に、なんだか問題用紙を浮かない顔で睨むように見ている。

「この問題だけが、どうしても分からないの……まだ、先生は職員室に居るかな?」

 時計を見ると、6時半だ。この学校の先生は、割と早くに帰宅する。ホワイト企業なんだよね。この学校。生徒の大半が家庭教師や塾で勉強をするし、保護者対応や部活の指導などは、教科を受け持つ先生とは別だったりもする。

 だから、6時半ともなると、もういないかもなぁ……。


「璃々亜、終わったかい?」

 そこに、兄が姿を現した。

 生徒会の仕事が終わったんだ。

 そうだ!

 私には教えてあげることはできないけど、兄なら芽維たんに勉強を教えられるんじゃない?

「お兄様、この問題なのですが……」

 芽維たんが解けなかった問題を、指さす。

「ああ、この問題か。これは、出題ミスなんだよ。中学までの学習内容では解けないんだ。数Ⅱで習う数式が必要になってくる。ちなみに」

 と、兄はサラサラと数式を書き込んだ。

 芽維たんの目がキラキラと輝く。

「ありがとうございます。解けなくて、もやもやしてたんです。出題ミスなんですね。よかった。すっきりしました!」

「勉強熱心なんだね」

 お礼を言う芽維たん。褒める兄。

 二人が正面を向き合って話をしている。

「また、質問があればいつでも聞いてくれ」

「いいんですか?」

「ああ、もちろん。璃々亜がお世話になっているんだ」

 兄が、私の頭に手を伸ばしてなでた。

 はい。芽維たんにはお世話になっております。

「じゃぁ、璃々亜、資料を職員室に届けたら帰るから、車で待っていてくれ」

 去っていく兄の後姿を、芽維たんが頼もしそうに見ている。

 キラキラした目。

 あ、皐月たんも、ふわんとした目してるような気がする。

 相原さんと相良さんは、逆にちょっと青い顔してる。緊張してるんだね……。


 ぐおおおおっ。

 またしても、またしても、またしても、ヒロイン(候補)と攻略対象(候補)との仲を近づけてしまったではないか!

 オーノーッ!

 まだ4月だぜい!

 4月だというのに、一生徒である芽維たんが、生徒会長でみんなのアイドルである兄と親し気に話をしているとか!

 勉強を教えているとか!

 なーぜーだー!


 ……。はい。

 原因は私です。

 ぐぬぬっ。

 妄想の中で、私は自分の頭を両手でぽかぽかぽかぽかと殴ってみた。私のあほたれー!……。

 ぐずっ。

 破滅ルート回避のために、なるべくヒロインと攻略対象を近づけたくないのに……。あううっ。


「ありがとう、璃々亜さん。お兄さんに質問してくれて」

 芽維たんが嬉しそうな顔を私に向けた。

「解けないまま、土日と過ごすかと思うと、すごぉく気になって仕方がなかったから、本当に助かりました。私、塾にも行ってないし、家庭教師もいないから……」

 ぐおお、マジか!

「私も、塾も家庭教師もいませんが……芽維さんは、それでも、それだけの成績を取れるなんて……!」

 私の言葉に、相原さんと相良さんと皐月たんと芽維たんの……というか、全員の目が私に向いた。

 あれ?注目されるようなこと言った?

「白川様は、家庭教師を雇っていないのですか?」

 あれ、そこ?

「ええ。今は、家庭教師もいませんし、特に習い事もしておりませんわ」

 中学まではどうだか知らないけどさ。

 中学からの持ち上がりの高校じゃないから、受験らしきものをしたはずだよね?

 璃々亜の参考書とかしっかり書き込みもチェックもあったし。

 受験を期に、それまでの習い事やめちゃったのかな?何を私は習ってたんだろう?お嬢様だから、お茶とかお花とか、和装フェチの父の趣味なら、他に日本舞踊とか琴とか?うん、たぶんないな。

 璃々亜は姿勢が悪いわけじゃないけど、和装中心の立ち振る舞いって、重心がちょっと違うんだよね。着物を着た時に美しい動きができるような重心になる。

 璃々亜は、そんな感じじゃないんだよね。

 っていうことは、バレエとか?バレエ体形でもないから、それはないな。あ、バイオリンとかピアノとかフルートとかかな?楽器らしきものを、璃々亜の部屋で見た記憶はないが……。白川家には楽器演奏用の防音ルームとか普通にありそうだよな。どっかに。

 ……。一応、習い事関係を確認もいつか確認せねば。急に「ピアノを演奏して」とか言われても困るざんす。……もう、あれだ、剃刀の刃とかピアノの間に仕込んで「あっ」とか、自己で事故演出でもして回避する羽目になるっす。

 自己で事故。くだらないな、私。

 やばっ。剃刀の刃なんて、悪役令嬢嫌がらせアイテムトップ10に入る代物じゃないの?


 璃々亜、いざという時のためにピアノに剃刀を仕込んで置く。

「しばらく弾いてませんので……」とやんわり断る。

 もし、それでもと言われたら剃刀の出番だなと思っていたら……。

「私でよろしければ、代わりに」

 と、芽維たんが名乗りを上げる。

 そして、ピアノに仕込んだ剃刀の刃で、手を怪我する。


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