第143話 ラッキーガールは図書室へ行くらしい
授業が終わってから、図書室へと足を運んだ。
昨日声を掛けてくれた司書さんに、絵本の修復をお願いしたら、快く引き受けてくれたよ!
何とすばらしい!
しかも、修復作業を見ていくかと言ってくれた。
見る、見る!
司書さんは、いきなりクッキングペーパーを取り出した。
ふえええっ!なぜ?まさか、本の修復の前に、クッキー焼いて、お茶を飲んで精神を集中させる必要があるのですとか言い出したりして!
って、違いました。
クッキングペーパーの上でのり付けの作業をするんだって。
糊は、和糊を使うらしい。和糊って何だろうって首を傾げたら「でんぷん糊です。簡単な修復なら、木工用ボンドでもできますよ」と教えてくれた。
頭の中のメモ帳を取り出し、メモメモ。
前世では、修復したいポスターや同人誌や雑誌が色々あったんだよ!欲しいページだけ切り取ろうとして、ハサミもカッターも見当たらなくて横着して手でびりびりした挙句、びりびりになったやつとかな!
こりゃ、ぜひ覚えておかねばならぬ技術だろう!
見逃すものか!せっかくのチャンスだ!
とりあえず、あとでクッキングペーパーを買おう。
お菓子部なんだから、クッキングペーパーが部屋に大量に積まれていても怪しまれないだろう。
いや、大量に本を修復しようにも、そもそも漫画も雑誌も部屋にないわけだが……ぐすっ。いいよ、問題集とかで練習するもん。
本番で失敗しないように、技術を磨くもんっ!
司書さんが、糊を塗り終わると慎重に張り合わせていく。ふおっ、すごい!ピッタリだ!
その後、余分な糊を丁寧にふき取り、上にもクッキングシートを載せて木の板を重ねた。
さ、次は何をするのかな?二つに分かれちゃったから、それを一つにくっつけるのかなぁ?表紙とかどうやって付け直すんだろうか?
ワクワク。
この技を身に着けたら、連載雑誌でお気に入りの漫画の部分だけをカットして、それを1冊にまとめられるってことだよね!単行本もいいけどさ、雑誌掲載時とどこが修正されてるのか見比べたいし、カラーとか収録されなかったりするし、それに、サイズも違うしね。
ふふふ。
嬉しいなぁ。
「バスケの玉子様」って、チャンプだったっけ?雑誌を買える環境になったら、雑誌を捨てる前に「バスケの玉子様」のページだけ切り取って、製本するんだ!
司書さんの次の作業もちゃんと覚えないとと思って見ていたら「今日の作業はここまで」って言われた。
ガーーーーーーーンッ。
製本、製本、製本っ……ぐずっ。
いや、まて、明日も見に来ればいいんだよね?
「月曜までには修復しておくので、月曜以降に取りにきてもらえるかな?」
何ですって~!
修復しておくですと?作業見せてくれないんだ……はぁ……。がっかり。
肩を落として「お願いします」と言い、部屋を出ようとすると、声がかかった。
「クラスと名前を教えてもらえる?何かあれば連絡するけれど、持ち主の友達に連絡した方がいいのかな?」
「いえ、私にお願いいたします」
司書さんが、ペンと紙を取り出した。
あ、このペン、昨日借りたやつだ!
なんとかっていうアイドルグループのなんとかくん。
人の名前を覚えるのが苦手ってことは、当然グループ名も覚えられません。
だが、不思議なことに、漫画やアニメや小説のタイトルやキャラクターの名前はしっかり覚えられます。ええ、別ものですから。
ふわぁ、都キャプテンじゃないけど、都キャプテンとしか思えないイラストに心が癒される。
おっと、名前名前。
いちねんにくみ、しらかわっと。
書き終わった紙を司書さんに渡すと「ちょっと待っていてね」と司書さんが修復部屋のさらに奥の部屋へと消えていった。
え?なんだろうか?
戻ってきた司書さんが、手を差し出した。
「これ、よろしければお友達にどうぞ」
差し出された手の上に載っていたのは、み、み、み、都キャプテンの人形ではないですか!
ガチャでよく見るサイズだ。
くれるの?マジですか?
「え?いいんですか?みやこきゃ……」
しまった!都キャプテンじゃないよね、これ、ペンのイラストのアイドルグループの誰かだよね?
あわわっ。
「みやこきゃ?」
「い、いえ、何でもありませんわ。ありがとうございます!とっても嬉しいです!」
いい。別に、アイドルグループの誰だってかまわない。
私は、この人形のことを、都キャプテンと呼ぶ。ああ、呼ぶことにするよ!
ちょっと待てよ、司書さん「お友達に」って言ったよね?ど、どうしよう、やっぱり芽維たんにあげなくちゃだめかな?
持ってちゃだめかな……。
いいや。芽維たんは、私がこれを司書さんからもらったこと知らないし、私のものにしちゃおう。ごめんなさい、司書さん。
だって、自分では買いに行けそうもないんですもの。都キャプテンの人形なんて。あ、違うか、なんとかってグループの……。
いや、いいのだ。これは、誰が何と言おうと、都キャプテン。
えへへ。嬉しいなぁ。嬉しいなぁ。
「他にもまだあるけど、いるかな?」
えー!まじっすか!
京様?
ちょっとしゃくだけど、このさい東先輩でもいいよ!
なんて司書さんはいい人なんだ!
女神、女神に違いない!
人形を、上に、下に、楽しませていただきます。きゃほーい!
そうそう、京都派の私は、東京はゆるせんが、東都はオッケーです。はい。
まぁ、何にも買う同人誌が無い時に、仕方なく手を出す程度だが……。ふふふの腐。
「はい、どうぞ」
手渡されたそれ。
(-”-)??
何これーーーーっ!
いったい、誰の人形なの?誰にも似てないじゃないの!
……。
あ、そうだ。
これ、アイドルグループの人形だったっけ……。
う、うん、とりあえず、この似てない人形は芽維たんにプレゼントしよう。喜んでくれるかは謎だけど……。
さてと。せっかく図書室まで来たので、今日も兄が仕事終わるまで勉強していきます。
蜂川さんにはメールしてあるよ。
『今日もお友達とお約束ですか?』ってメールで聞かれた。
えーっと、今日は友達と一緒じゃないよってメールしたら、ボッチだと思われるかな?と、ドキドキしながら『友達から預かった本を持って図書室へ行く用事がございますの。その後、勉強しますわ』とメールしておいた。
友達って単語を我ながらうまく入れることができたと思うの。
私はボッチじゃないよ。
図書室の隅の席に座り、先ほど司書さんからもらった人形たちを、ペンケースの中に入れた。ペンケースの口を開けて、私の方に向ける。
ふふふっ。勉強しながら、都キャプテンの人形がちらちら見えるの。
楽しいな。楽しいな。
おっといけない。勉強、勉強。もうすぐ模試なのですよ。
ありがとうございます。
どうでしょうか、閑話で別視点を先に書いたものです。
あいかわらず、璃々亜さんは残念な脳内です。
でも、勉強しようとするだけいい子だよね?
だけど、人目があるところでの勉強は、科目によってはとても危険だと思うの。




