第126話 璃々亜、前世ごと反省するらしい
私の心はだいぶ落ち着いた。
きっと、相良さんと相原さんは嫌がらせの手紙の犯人じゃないよねと思えたから。
授業開始までの時間もそう長くはないので、問題をさっさと解決することにする。
「あの、お菓子をいただきましたでしょう?」
相良さんが、少しだけ椅子から体を浮かせて返事をする。
「はいっ。あの、お口に合いませんでしたか?」
「いいえ、ありがとうございました。とてもおいしくいただきました」
相良さんが、ほっとした顔で、少し浮かせた体を椅子に沈める。
「一緒にお手紙が入っていましたでしょう?ピンクの封筒に、ピンクの便箋で……」
私の言葉に、今度は相原さんが肩を揺らして緊張した。
「その封筒と同じものを、実はほかでも目にしたことが……」
と、そこまで言うと、相原さんの顔色が明らかに青くなった。
それをみた相良さんが、何かに思い至ったのか、一緒に顔を青くする。
……。
やだ、何、この反応……。
これじゃぁ……。
本当に、二人が……。
二人が私に嫌がらせの手紙を書いてたみたいじゃない……。
違うよね?
だって、ニコニコ笑いかけてくれたし、朝も一番に挨拶してくれてたし……。
そうだ、歓迎会の班決めの時だって声をかけてくれたし……。
違うの?
全部表面上?
嘘だったの?
本当は、私のこと嫌いで、ああ、そうだ、例えば、家柄とかそういう絡みで、仲良くしろと誰かに命令でもされてたりとか?
笑顔の裏の、別の気持ちとか……。
そんなの分かんない。分かりたくない。
私が前世で好きだった漫画や小説は、笑顔の書き分けで気持ちが伝わってきたよ?
笑ってるのに、ほっぺに小さく汗が書いてあれば、焦ってるとかわかったよ?
笑ってても、心の声の描写で全く違うこと書かれてることではっきりしたよ?
現実世界では、そんな裏の探り合いするような人間関係なんて避けてたし……。
心が闇。
すんごい、苦しい。
もしかして、芽維たんや皐月たんも、仲がいいふりだけしてるとか……違うよね。だって、私と仲がいいふりしたって……何にも得になんか……。
ああ、二人に得はなくても、中学んときに「孤高」なんて呼ばれてるボッチだって知って、同情してくれたとか……。
私……。
私……。
頭の中が混乱して、悪いことしか考えられなくて、苦しい。やだ、何、これ……。ああ、違う、二人はそんな人じゃなくて……。
相良さんと相原さんだって何か事情がきっと……。
青い顔をしてぶるぶる震えだした二人が、そろって頭を下げた。
「申し訳ありませんでしたっ」
「私たち、白川様と仲良くなりたくて……」
ん?
どういうこと?
気を引きたくて嫌がらせするとか、それ、小学生男子的発想でしょ?
あ、中学生男子や高校生男子もするけどな!
BL界では、当たり前にしてるけどな!意地悪したくなるのは、好きだからだ!みたいなネタをな……。それにいちいち、小学生男子か!なんて突っ込みなんて入れないけどな!
ふふふ腐。
んじゃなくて……。
「で、ではなぜ、あのような……」
「うらやましかったんです!」
「白川様と仲が良いのがうらやましくてつい……」
ん?
話が見えないよ?
「つい、皐月様、鈴木様、田中様に……あのような手紙を……」
え?みんなが隠してた手紙って、私宛じゃないの?
「白川様と仲がよろしいからって、いい気にならないでくださいませなんて……白川様が選んだお友達に対して……私たちこそ、とんでもないことを……」
あれ?
「なんだ、そうだったの……」
ほーっとして、全身の力が抜ける。
私、嫌われてたんじゃなかった。
よかった。
嫌われてたどころか、友達になりたいと思ってくれてたなんて……。
そうだ、いつも、朝挨拶をしてくれた。笑いかけてくれた。
きっと、仲良くなりたくて3000円お出かけコースを考えて見せてくれたりしたんだよね……。
それに、歓迎会の班を決める時だって……勇気を出して声をかけてくれたのかもしれない。
その、向けられた好意に、私はどう返してたんだろう……。
常に、芽維たんや皐月たん優先で、姿を見かけたらそちらへすぐに飛んで行ってなかった?
食堂に誘われたときも……。
みんな一緒に移動することだってできたのに……。
芽維たんや皐月たんと行動することを優先して、そんなこと考えもしなかった。
歓迎会の班だって……8人で行動するのはめんどくさいとか思って、すぐに断っちゃった……。
私……。
友達が欲しい、ボッチはいやだって言いながら……。
芽維たんと皐月たんって友達がいるもんねって……それで満足しちゃって……。ほかに友達を作ろうなんてしてなかった。
いいや、友達になりたいって子をひどく傷つけながら拒否しちゃってたんだ……。
なんて、ひどい、ボッチの女帝。
ははは。
お読みいただきありがとうございます。
ご、ごめんなさい。解決は次回でしたー。
男女の恋愛スルースキルもあれだけど、友達になりたいスルーとか、あんまり小説なかったので書いてみた・・・・。




