第120話 コンピュータールームの名が「京の部屋」になったらしい
日曜日。
昨日は結局、ぐだぐだと嘉久と兄に付き合わされてシアタールームはお預けだったよ。
今日こそは!と思って朝食後席を立つと兄に声をかけられた。
「璃々亜、スマホで歓迎会の写真を撮影しただろう?」
「ええ。カメラ係もいたのですが、自分でも撮りたくて何枚かは」
「せっかくだから、プリントアウトしようか」
え?
その発想はなかった。なんとなく、スマホで撮影した写真は、現像(って今言うと変だけど)するイメージがなかった。
「友達に渡す分もプリントして明日持っていったらいいよ」
おお、写真を焼き増し(という言い方も変だけど)して友達に上げるなんて、いいじゃない!
スマホを片手に、兄とパソコンルームに向かう。
部屋には「京の部屋」と、書いてある。ぐふっ。
スーパーコンピューターもどきの「京」の部屋だからね!でへへっ。でも、ぐふ腐。
「貸して」
おや?
兄は、コンピュータールームを入ってすぐ右側の通路の奥に進んだ。
そこには、スーパーコンピューターじゃなく、普通のデスクトップのパソコン2台と、ノートパソコン3台、モバイルPC1台が並んでいた。
そして、オフィスにあるような立派なコピーもできるレーザープリンター1台と、インクジェットプリンターがあった。
スマホをケーブルでノートパソコンに接続する。
歓迎会の日付のフォルダを開く。
うわー、懐かしい。いや、まだほんの一昨日のことなんだけど……。
15インチのパソコン画面に大きく映し出された写真。スマホで見るのとはまた違う
「皐月さんと鈴木さんだね。おそろいのスカートか。かわいいね」
そうでしょ、そうでしょ!
可愛いでしょ!
ん?
皐月たんも、芽維たんも、かわいいのは間違いない……。
やべっ。また、攻略対象とヒロインとの距離を縮める手助けしてない?
……。あー、もうっ!
兄、迷わず印刷枚数を指定して印刷ボタンをポチ。
ん?印刷枚数、4枚?
私の分、皐月たんの分、芽維たんの分……あと1枚は?
と、思っていたら、今度は紙の大きさ指定を変更して印刷ボタンぽち。
レーザープリンターから、A3サイズで印刷されたの出てきたっ!
ぎゃーっ、こんなに大きく印刷してどうする!
「この写真もいいね!」
バスに乗る前に、班の集合写真を撮った後に、調子に乗って3人で何枚か撮ったんだけどそれを兄が次々とプリントアウト。
いや、だから、そのA3サイズはどうするんだ!
「ん?なんだ、この写真は……?」
ノートパソコンの画面には、轟くんが差し出してくれたポッチーが映っている。
あ、えっと。
その……。なんていうか、この写真見たら、味を思い出せるんじゃない後記念に……ですね……。
「この手は、男のものだな?」
「え、ええ。あの、バスで隣の席だった轟くんが、お菓子をくださってのです。珍しいお菓子でしたので、写真に撮らせていただきました……」
「轟、く、ん?」
兄の声が低くなった。
うええっ、何がダメなの?
そういうジャンクなお菓子を差し出した轟くんに怒ってるの?
次の画像は、ポテチ。
その次は、ハイチョー。
その次は……。
「どれだけ、食べたんだ?」
ごめんなさい。出されたものは、すべていただきました!記念にすべて写真を……。
「断るのも申し訳なくて……。せっかくなので、一口ずついただきましたわ」
嘘だけど。一口じゃないものもいっぱいだったけど。
ついでに、断る気なんて一切なかったけどね!
「轟くんには、いろいろと、お菓子のことを教えていただいけましたし、バスでの移動も退屈しませんでしたわ」
ああ、思い出しても楽しい。
お菓子おいしかったなー。ジャンクフード万歳!
思わず、ニマニマしていると、兄の手元でバキンッと何かが割れる音が。
ん?ボールペンが折れ曲がって……。
「轟くんか。名前はしっかり覚えたよ」
ええ?何?
兄も、食べたかったの?
一人で食べてお土産も持ってこなかった私に怒ってる?
いや、それとも、ジャンクフードを大切な妹に食わせやがってって怒ってる?
やばいっ。
轟くんのフォローを、フォローを。
「お、お兄様、いただいた中でいくつか、お兄様にもぜひ味わっていただきたいものがございましたの。買ってきたら、食べてくださいますか?」
「ん?私に買ってきてくれるのかい?」
「え、ええ。お兄様にも食べていただきたいなぁと、どのようなお味が好みかなぁと思いながらいただいていたら、つい少々食べ過ぎてしまいました。写真を見て、気になったお菓子はございますか?」
「そうか、私のために……」
兄、さっきまでシャシャシャのスピードで画像を次のものに進めていたのが、シャッ・トン・トン、シャッ・トン・トンくらいのスピードになった。
兄が、興味のあるお菓子を二つくらい示した。
もしかして……兄のためという名目で、買える!おお!棚から牡丹餅、いや棚からお菓子ですな!うひゃひゃひゃひゃ。
園内に入った班の集合写真が写った。
ああ、田中くんがシャッター押してくれたんだ。田中くんの姿だけない。
「この写真は?」
兄の声がまた不穏。
「私たち1班の集合写真ですわ」
「1班は、男女混合だったのか……」
兄の驚きの声。
「ええ」
「こちらの生徒は、相模と言ったか?」
さすが兄。もう名前を覚えたのか。
「ええ。皐月さんと一緒にクラス委員をしている相模くんです。男女のクラス委員が同じ班の方が便利だろうと……」
「ああ、なるほど。合理的だ」
「それから、こちらが轟くんです」
「轟……か。なるほど。……体系が……」
体系が?
「父に似ているな……」
おお、言われてみればジャイアントパンダ体系とどすこい体系。似ているといえば、いている。
「娘は父親に似ている人を……という都市伝説……」
ぶつぶつと何やら頭を抱える兄。
?
お読みいただきありがとうございます。
なんだかんだと、田中くんの破滅フラグは、轟くんという尊い犠牲のもとに回避できたようです。
轟、おまえ、いい仕事してるな。
次回、璃々亜にご褒美が!




