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◆書籍化進行中◆【選書魔法】のおひさま少年、旅に出る。 ~大丈夫、ちっちゃくても魔法使いだから!~  作者: ひつじのはね
第四章

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99 マーケットで探そう

僕はほんのりむくれながら、マーケットへ足を踏み入れた。

ディアンってばケチなんだから! ガイアスさんは快く貸してくれたのに。

重くないって言ってたんだから、問題ないと思ったのに。

ディアンの背中なら、僕も周りが良く見えるはず。そりゃあ、ガイアスさんほどとは言わないけど。

すげなくおんぶをお断りされた僕は、ディアンを置いて前を歩く。気が付いたんだ。ディアンが先に行くから置いて行かれるんであって、僕が先に行けば、はぐれるのは僕じゃなくてディアン。いいアイディアだ。


あっちもこっちも面白そうで、右へ左へ、吸い寄せられるように歩く。

ただ、僕の身長だと人混みの中に入ってしまえば、ほとんど何も見えない。

気になる露店の前で馬鹿みたいに跳ねていたら、冒険者らしいお姉さんが持ち上げてくれた。


「見えた? 君が欲しいものじゃないと思うわよ」

「ありがとう! 心優しいレディ、とても力持ちだね! ここは武器屋さん?」


ぶっと吹き出したお姉さんの手が、ふるふる震えている。

どうも、冒険者の女性にはレディと言わないらしい。


「ど、どうもありがと……! そうね、ここらの店は小さい武具類が集まってるわよ」

「そうなんだ! 僕、空いてるお店を探してみる!」

「怪我しないようにね、触っちゃダメよ」


そんな、幼児にするような注意に苦笑しながら手を振って、ちょっと振り返ってみる。

……どこだろう。多分、ディアンは付いてきていると思うんだけど。

ひとしきりきょろきょろしたけれど、そもそも僕の視界は見通しがほぼゼロ。

早々に諦めて、タタッと駆けだした。

ディアンがはぐれたなら、それはそれで、僕は腰に手を当てて言えるってものだ。『ディアン、ちゃんと着いてこなきゃダメだよ』なんてね。

くすくす笑みを堪えながら、僕が眺められそうな武具屋さんを探す。


屋台形式のお店が多いけれど、地べたに直接敷布を広げて商品を並べている人もいる。そっちは屋台形式よりも少し人気がないよう。

でも僕には、ちょうど見やすくていい。

折よくナイフ中心に並べているお店を見つけ、屈み込んだ。


「わあ……」


鞘から抜かれた刃がきらりと光を反射しながら並んでいて、なんだかドキドキする。


「でも……どのナイフがいいかなんて、全然分からないなあ」

「おぉ、見て行け。どうだ、こういうのなんか、ロマンだろ。抜いてみな」

「う、うん……」


にんまりしながら差し出されたのは、ものすごくゴツゴツした大ぶりのナイフ。骨やらドラゴンやら、なんだかおどろおどろしい装飾がついているけれど、こういうのが人気なんだろうか。

受け取った途端、ずしりと重くて思わず取り落としそうになった。

こんなに重いもの、絶対に無理。でも、店主さんの期待に満ちた視線に負けて、恐る恐る鞘から抜いてみる。


「え、刃にも模様が彫ってあるんだね」

「だろ、ロマンだろ!」


そ、そうかな。汚れが落としにくそうだと思うのは、僕が包丁を想像しているからなのかも。

鈍く光る刃が、僕の手の中にある。

刃物っていうのはやっぱりカッコイイね。これはちょっとゴテゴテが過剰だけれど――そんなことを考えたから、ナイフが怒ったんだろうか。

どん、と通行人の足が僕に当たった。

あ、と思うよりも……ナイフが僕に刺さる方が、多分早かった。

 

「……てめえは刃物を持つな」

「ディ、ディアン……」


すんでの所で刃を握り込んだ手が、僕の胸に当たっている。遅れて早鐘を打ちだした心臓が痛い。

そのままナイフを取り上げられ、ディアンは慣れた仕草で鞘に納めて店主へ放った。

 

「あっ、ディアンの手は?!」


ハッと気づいてその手を取った。

 

「俺はそんな鈍臭くねえ」

「そ、そっか。良かった……ありがとう」


傷ひとつないことを確認して、ホッと息を吐く。

生ぬるい視線に、少し唇を尖らせる。


「だって、ディアンだって買えって言ったじゃない」

「刺さっても問題ねえようなのにしろ」

「そんなものないよ?!」


たとえフォークでも刺さったら大変だよ! そう言いつつ、ひとまずこのお店には僕用のものはなさそう。

再び歩き出した時、ひとつ向こうに誰も足を止めない店を見つけた。

敷布の上には武具が何もない。売り切れたのかと思いきや、何やら置かれているものはある。

なんだろう、これ。

四角いカード状の板が、いくつか束になって重ねられている。

まだ武具ゾーンなので、武器の材料だろうか。 

しげしげ眺めて、手に取ってみる。


「あれ……これ、凄くない? ねえ見てディアン、こんなに薄いよ」

「だからどうした」


そうなんだけど。でもこれ、叩いて伸ばしてるよね。わざわざ、こんな薄さに。


「僕、鍛冶のことは知らないけど、こんなに均一になるもの? ねえ、難しくないの?」

「難しいっちゃ難しいな」


退屈そうな顔をしていた小柄な髭面店主が、モゴモゴ言った。


「こんなに薄くして、何に使うの? 材料なの?」

「何にでも。完成品じゃわ」

「ええ……」


何にも使えそうにないけど?! 苦笑して金属板を戻そうとして、ふと気が付いた。

材料じゃない、完成品。じゃあ、武具だ。


「ねえ、ディアンならこれ、投げて武器にできる?」

「そんなもんが――」


受け取ったディアンが指に挟んで、ふっと眉根を寄せた。


「……いくらだ」

「いくらにしようかの」


やっぱり! ディアンなら、きっと武器にできるんでしょう。だってこれ、重さも薄さも、強度もちょうど良さそう。柄のあるナイフよりもカードの方が、飛び道具としては簡単かもしれない。

僕ももう一枚取って眺めた時、カードの隅に何か書いてあるのを見つけた。


「これ、お店の名前? あ、違うね、店主さんの名前――あっ?」


『ミース・ノルキア』。この名前、どこかで……。

 しばし首をひねって、もう一度声を上げた。


「僕、買います! あなたが、ミース・ノルキアさんで、これを作ったのがあなたなら!」

「は? 値段聞いてねえだろ」

「ほう? なんじゃ坊主、知っとるのか」

 

にやり、笑ったノルキアさんが、頷いた。


「よかろ。合格じゃ、銀貨10枚」

「いいの?! ありがとう!」

「馬鹿か?! 金属板だぞ?!」

 

ディアンが慌てて僕の肩を掴むけれど、僕は、にっこり笑って支払った。ノルキアさんの気が、変わらないうちに。

そして、ディアンに本を差し出した。選書魔法で選ばれた、2冊目の本を。

そこに掲載された昔の鍛冶コンテスト。その、連覇者の名前を。 

 

 

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― 新着の感想 ―
カードの武器! 往年のス○イヤーズ5のトランプを思い出した(^_^)
トランプでキュウリ切ったりするのあったなぁ…! 近距離が苦手なら、近づかせなければいいよね! いつもほっこりしながら読ませて頂いてまーす
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