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◆書籍化進行中◆【選書魔法】のおひさま少年、旅に出る。 ~大丈夫、ちっちゃくても魔法使いだから!~  作者: ひつじのはね
第四章

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96 楽しい採取依頼

「――どけっ!!」


はっ、とこちらを見たディアンが、僕を蹴飛ばした。

同時に、ボンッ! と激しい破裂音。

声を上げる間もなくずべっと転がった僕は、慌てて葉っぱの中から顔を上げた。


「……ってぇなこの……!!」

「大丈夫?!」


い、痛いですむんだ……。

ディアンはぐるる、と唸り声を上げそうな様相で剣を抜いた。

避け損ねたらしい左脚に被弾し、カボムチャの欠片が付着している。

大急ぎで彼を回復する間にも、次々刈られていくカボムチャ。僕の役目は、もっぱらそれらを収納に入れるだけだ。


「るー!」


遠くの木から、グリポンの応援が聞こえた。

カボムチャ爆弾も、ディアンの蹴りも、どっちも危なくてグリポンと卵は畑の外でお留守番だ。

ボンッ! とまた激しい音がして、バババッと周囲へまき散らされた固い種が、葉を散らす音がする。

ふいに、傍らでゆさゆさ葉が揺れているのを見つけた。

あっ――。


「伏せろ!」


動かなくなった身体が、ディアンの声で反射的に前へ飛び込んだ。

直後、頭上を通過する種と、激しく揺れた周囲の葉。

……戦場だ。ここは、戦場。

こくり、と喉を鳴らして、おずおず生い茂る葉の中から顔を出した。

いつの間にか間近までやって来ていたディアンが、ほ、と肩の力を抜く。


「ぼーっとしてんじゃねえ! 爆発するかどうかくらいわかるだろが!」

「見えたら分かるけど……!」


だってここ、僕の腰丈くらい一面に、カボムチャの葉っぱが生い茂っているんだよ?! 


「そもそも、これ……収穫じゃないよね?! 爆弾処理じゃない?!」


絶対に、僕の想定していた採取依頼と違うんだけど!

植物が熟れたら破裂するってよくあるじゃない! これを破裂って書くのは間違ってるよ! これは、爆発!!

そう言えば確かにディアンは爆発って言っていた気がする、なんて思い返しながら、再び蹴飛ばされた。

今は! もうちょっと余裕あったでしょ?!

多分、被弾しても死にはしない。でも、それは一般の話。

そうか、こういう時にギルマスさんのボール投げ訓練が効果的なのかもしれない。

そして、手投げボールで全弾被弾した僕には、もはやどうにもならないということがよく分かる。

つまり……大怪我になる可能性が無きにしも非ず……。咄嗟に頭や顔を庇うなんてことができない僕なので。


ちょっぴり唇を尖らせながら起き上がろうとした時、視界の端で何かが動いた。

僕が両手で抱えるほどの大きさの、大きめカボムチャ。

動いた、ような。

注視する中、ふいに、深呼吸するようにそれが揺れた。


「あ、あっ……!」


カボムチャの深呼吸があっという間に頻呼吸になって――飛びつくように伸ばした手の先、小ぶりな手指が握ったナイフは、思いのほか安定していた。

サクリ、右手に感じた手応え。

途端に、置物のように微動だにしない果実となったカボムチャ。


止まっていた呼吸を吐き出した。

どうっと、急に噴き出してきた汗と、息苦しいほどの鼓動。


「で、できた……! ディアン、僕できるよ!!」

「犬でもできるわ!!」


犬にはできないよ! すげなく怒鳴り返されながら、僕はぐっとしゃがみこんで、もそもそ四つ這いのような姿勢で移動し始めた。

この視界なら……そして、この体勢なら頑丈な葉の重なりが、ふいの攻撃から守ってくれる。

スン、と鼻を鳴らす。

……もしかすると、僕分かるかもしれない。破裂寸前のカボムチャの、一気に甘くなる香り。


「……あれかな?」


用心深く近づいたカボムチャは、まだ普通の果実のよう。

見当違いかな、と諦めようとした途端。


「動いた!」


『呼吸』が始まるやいなや、素早く果実のヘタを切り離した。

ごろり、と転がった動かない果実。僕は会心の笑みを浮かべて、大きな果実に頬ずりした。

さあ、僕の反撃開始だ!

シャキン! とナイフを掲げて、僕はさっそうと畑の中へ這い出したのだった。



幹に背中を預けて座りながら、枝に引っかけた卵バッグが、わずかな風に揺れているのをぼうっと眺めた。

鮮やかな夕日は、ディアンの瞳よりも赤を濃くして、なんとなく美味しそうだな、と思う。

うつら、としかかった時、ふっと眩しい赤が遮られた。


「いつまで休憩するつもりだ」


夕日よりも濃い橙が、僕を見下ろしている。

いつまで、って言うほど長く休憩してないと思う。

渋々立ち上がって、頼りなく揺れる足を見下ろした。

僕……ここから馬車停留所まで歩ける?


夕方まで全力で収穫した結果、無事に刈り終えたわけだけど。

当然ながら僕の身体は、孵化したてのトカゲよりもきっと弱々しいことになっている。


「ねえ、野営して帰らない? 僕、ディアンが一晩中見張らなくていいようにできるよ!」

「いらねえよ、何も信用できねえ」

「そうじゃなくって! 物理的に!」


聞く耳を持たないディアンにむくれ、もはや一歩も動きたくない僕は、ゼロになった体力の代わりに十分すぎる余力のある魔力を使う!


「僕は呼ぶ、土よ、積み上がる土よ! いちに、さんっ!」


平らにならす方はともかく、こっちはあんまり使わない。用心深く簡易詠唱も唱えて――ぺたりと触れた地面に、直接魔力を流す!

足裏に伝わる微かな振動、そして、湧き出すように盛り上がっていく土の壁。

木を囲むようにぐるりと覆った土壁を眺めて、にっこり笑う。


「ね、野営でいいよね!」


ディアンが言いそうなことは、既に対策ずみだ。氷の壁だったら、きっと寒いって言うでしょう? でもこれなら大丈夫だから!

どうだ、と胸を張ると、ぽかんと壁を見ていたディアンが、僕を振り返る。

そして、深々溜め息を吐いて額に手を当てたのだった。



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― 新着の感想 ―
ルルア、ユータ化してないかい?(^^;)
ルルアは毎日走り込みをして体力をつけること! ディアンほんとにお疲れ様(^_^;)
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