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◆書籍化進行中◆【選書魔法】のおひさま少年、旅に出る。 ~大丈夫、ちっちゃくても魔法使いだから!~  作者: ひつじのはね
第四章

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95 いざ、採取依頼へ

「そよぎたゆたう、風の命。清き風でその身を満たせ――僕は癒やす、風の回復!」


着替えるディアンの向かいで、膝の上に卵を抱えて、朝の日課をすませた。

なんだか……この数日で思ったより随分とサイズアップしている。

魚から救出して、翌日にでも孵るかと思っていたくらいなのに、随分気が早かったらしい。


「もったいね……」

「なにが?」


ほの温かい卵を撫でていると、ディアンがどさりと腰を下ろして朝食に手を伸ばした。


「そんなもんに回復魔法を……いくら安くても銀貨だぞ」

「えっ?! そんなに?! 待って、それじゃ僕が頑張って採って来た薬草――」

「比べモンになるかよ、カゴ何杯いると思ってんだ」

「ええ……」


がっくり項垂れながら卵をタオルに包み、カバンにしまいこんだ。

もう懐に入れられるサイズじゃなくなったので、卵専用肩掛けバッグを使っている。


「でも、回復魔法の練習にもちょうどいいから。ディアンにもかけてあげるね!」


やっぱり、途中で霧散させてしまうことに比べたら、実際に放つ方が何倍も練習になる。

ディアンにはいつも通り火の回復をかけて、じっとりした視線をもらった。い、いいじゃない。どうせ魔力を使い切ることってないんだもの。


「回復かけてるから、デカくなるんじゃね?」

「そんなことある?! でも、定期的にかけていたら、問題なく孵化できるでしょう?」


卵の中は見えないのだから、どの回復がいいかわからない。

というわけで、日課として朝昼夕晩に全4種類の回復をかけている。どれかは当たるだろう。

そろそろ持ち運ぶのが重くなってきたので、出て来てくれると嬉しいのだけど。きっとトカゲなら、生まれてすぐに歩けるよね!


バッグを後ろに回し、僕も朝食パンを頬張った。

今日は、カンベリーのジャムパンとスープ。甘酸っぱい香りで、お口の中がきゅっとする。


「……で、依頼は」

「そう! 依頼だね。見てこれ! ゲルワームとカボムチャ、どっちが美味しいか聞いたら――」

「ゲルワームを食おうとすんな!!」


う、うん……そんなになの? むしろゲルワームに興味を引かれつつ、頷いた。


「それ、ガイアスさんにも言われたの。だから、カボムチャの方にしたんだよ!」

「……」


なんだか嫌そうな顔をしているディアンに、首を傾げた。


「ディアン、カボムチャ嫌い?」

「好き嫌いなんざあるかよ。違ぇ、てめえ連れてカボムチャ……めんどくせ」


あれ? カボムチャって植物のはずだよね。

そもそもこの依頼では、町の外とはいえ、きちんと畑で管理されているものの収穫だ。

ランク的に頃合いだと思ったのだけど。僕だって、何も考えずに依頼を見てるわけじゃない。

 

「めんどくさいの? カボムチャって」

「めんどくさいのは、てめえだ」

「だから、何が?!」


むっと頬を膨らませ、改めて図鑑を開いた。

ほら、やっぱり植物だ。人を食べちゃったり、攻撃する類でもない。食用で、僕の頭くらいから大人が抱えるほどのサイズがあるそう。熟れ切って破裂する直前が一番おいしいんだって。


「もしかして、カボムチャが大好物の怖い魔物がいるとか?」

「ねえよ。爆発するだけだ」

「熟れすぎると破裂するんだよね」


大丈夫、分かってるよと頷いた。

だから、それまでに収穫しなきゃいけない。


「お前は分かってねえ……」


はあ、と溜め息を吐いて、ディアンはスープを飲み干した。

 

 

――ちら、とディアンを見上げた。

いつもの鋭い雰囲気で、前を見て微動だにしない。僕も前を向いて、それから、伸びあがって道の向こうを見る。

薄青い空気の中、ただむき出しの土街道が、ゆるくカープを描いて続いている。かかとを下ろして、前を向いた。

前の人のベルトをしばらく見つめ、ちら、とディアンを見上げ――。


「うぜえ! ごそごそすんな!」

「じっとしてるよ?!」


怒られて、少しむくれた。きちんと、列に並んでいるじゃない。

だって僕、馬車に乗ったことないんだもの! しょうがないでしょう。

いや、師匠に連れられて、一度か二度は乗ったことあるはずだけど、もう何年も前で、しかも僕はちいさかったもの。


どうも、カボムチャ収穫の畑へ行くには、それなりの距離があるらしい。

歩いて行くには効率が悪すぎるんだとか。

つまり――馬車だ!

だからこうして、朝一番の馬車列に並んでいる。

隣町が始発の馬車は、まだ来ない。


仕方なく、グリポンを手の平に乗せて、指先で方々を丁寧に掻いた。

気持ちよさそうに目を閉じたグリポンが、右の翼を上げ、くるりと回って左の翼を上げ。

ぐいと首を傾けて左耳の下を。

指示されるままに掻いていたら、とうとうころりとひっくり返ってしまった。


白くてふわふわの毛並みは、撫でる手も心地いい。

無防備なお腹や足の付け根を撫でていると、段々その身体が弛緩していく。

うん……ちょっとグリポンには早起きだったもんね。


ほかほか温かい身体を両手で包んだ時、ガララララと滑らかな車輪の音が響いて来た。


「来た! 来たよディア――」

「うるせー! 騒ぐな!」


飛び上がってばんざいした途端、ガシっと口が塞がれる。

じとり、と見上げると、ディアンが橙の目を細めた。黙ってろ、とそういう目。

固い手を両手でむしり取って、唇を尖らせながら馬車を眺めた。

珍しくはない。普通の馬車。

町で、普通に見かける馬車。

でも、今日のは特別大きくて立派な気がする。

馬だって、いつものより綺麗で堂々としている。


声を出すと怒られるので、赤いだろう頬で近付いてくる馬車とディアンを交互に見た。

見て、ほら、見て! 見て! 来たよ、馬車! ほら、もう――


「うぜえ!!」

「り、理不尽!!」


何も言ってないのに! 

青筋を浮かべたディアンに頭を鷲掴まれ、ぎっちり固定されてしまった。

後ろから、くすくす笑う声がして、少し首を縮めた。

僕……目立ってたのかな。

さっきとは違う頬の熱さで、僕は少しディアンにくっついた。


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― 新着の感想 ―
今日もグリポンがめんこかった。癒やされました(^_^)
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