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危機一髪の空中戦

水上邸にはメンバーが揃い、母親差し入れのサンドイッチが振る舞われた。

「作戦変更だ。お前たちお側役にも助力を頼むことになった」腕を組んだマゴヒルコが戦略参謀面で三人を見回す。

「ついに出番か。俺、上がり症だから大丈夫かな」正義が弱音を吐く。

「大丈夫よ。皆で行くんだから、皆で協力しましょ」亜季が朗らかに笑う。

「やる気ないけど、地球を壊されたら、大学に進学しても無意味になるしね。ムカつく奴らを懲らしめるしかないわね」由美が恨みを込めて言う。

「おっ、皆覚悟を決めてくれたか。頼むぜ、俺の介添役」敦が友愛の情を口走る。

 一同、結束感を新たにして破壊獣三兄弟に挑む手はずとなった。

「まずは、豊島を確保しよう。ガザルは来伊浜原発だ。急げ」マゴヒルコが人差し指でピストルを作って、号令の狼煙を示した。

 

 冬の到来が迫った海岸には潮風が舞い、波音が忙しなく打ち寄せている。

 四次元装置で来伊浜湾に建つ発電所の中央塔五階へワープした四人は、社長室を目指して歩いた。

「お前、よくこんなヤバい仕事やって来られたな」正義がびくびくしながら言う。

「心配すんなって。天津神の御歴々がついてるんだ」敦が背中を叩いて鼓舞する。

「そうよ石垣君。豊島さんを無事助けようね」亜季はいつでもどこでも笑顔明朗だ。

「早くしないと手遅れになるわよ」由美はすっかり舎使としての任務を腹に据えたようだ。

「破壊獣を倒せば魔力は消える。豊島には構わなくていい。ガザルを強制回収するだけだ」敦が力強く公言する。

 四人は廊下を突っ切った先にあった社長室のドアをノックした。

 ドアが開くと、ガザルの奇顔が飛び出し一同を出迎えた。

「来たか、水上。これからこの発電所管轄区域は未来永劫停電になる。電力のない世界がどんなに暗くて寂しいか、人間の悲しむ顔が目に浮かぶわ」

「そんなことさせるか!今回は四人でてめえを葬りに来たぜ!」敦が目を剥いて魔封銃を向ける。

「そ、そうだぞ。か、覚悟しろよ」正義が震え口調で言う。

「豊島さんを解放してあげて下さい。お願いします」亜季が邪気のない言葉遣いで一礼する。

「原発を狙うなんて、黄泉のモンスターは卑怯で小心だわね」由美が小馬鹿にした表情で目を細める。

 その時。室内から豊島が声を出した。

「待ちなさい。私の話を聞いてくれ」

 ガザルが醜怪な面立ちで、四人を部屋へ入れた。

「豊島さん。それはあんたの話じゃなく、魔物の話だろ?あんたの脳は占領されてるんだよ」敦が言い諭す。

「占領してはいるが、これは豊島社長の秘めたる邪心でもある。邪心を秘めた本人の責任だ」ガザルが卑近な冷笑を洩らす。

「魔王が支配するこの地球は、闇でなければならない。光を消すのだ。世界は暗黒によって満たされたならば、いざマンドラを招来する環境が整う。冥界と現世が合体し、そこに魔国が完成する」

「止めな。そんな話はもう聞き飽きたぜ。今すぐ特命係のブタ野郎をブチのめすから」敦が銃先をガザルに向ける。

 豊島が背広からスマホを取り出す。

「私がラインメッセージを担当社員に送信すれば、電力は直ちに停止する。もう手遅れだよ」

「ああそうかい。じゃあ、こうさせてもらうさ」敦の魔封銃が火を噴いた。

 豊島のスマホが吹っ飛び、敢え無く破砕された。

「水上!貴様!」ガザルが悪罵を吐き、自らも小銃を取り出す。

 互いに机を倒し盾にするや、烈しい銃撃音が室内を占拠する。

 双方の銃弾が霰石のように舞い飛ぶ。

 お側役の三人は床に伏せて流れ弾を避ける。豊島も耳を押さえて蹲る。

 しかし威力にはかなりの差があった。ガザルの弾丸を敦の魔封弾が悉く破壊する。

 勝ち目がないと見たガザルは、秘策でもあるのか、カプセルを取り出しボタンを押す。

 現れたのは円盤形の乗り物だった。

「救国使め。こうなったら原子炉を爆破してやる。放射能をぶちまけて人間を懲らしめるしかない」カザルが円盤に飛び乗る。

「んなことさせるか!」敦が円盤を撃とうとする。

 その瞬間。円盤から煙が発射され、敦は目眩ましを受けてしまう。

 すると円盤に乗船したガザルは、磨りガラスを突き破り窓外へと飛び出した。

 割れた窓から猛風が部屋へ吹き流れ、一同は驚いて屈み込む。

「何とかしなきゃ!放射能汚染が起きたら、付近一帯はお終いよ!」由美が血相を変えて叫ぶ。

「弱ったな。飛行機なんてないし」敦が悔しそうに唇を噛む。

「しょうがないな。気が引けるけど、俺のアイテムを使うしかないみたいだ」正義がカプセルを出して押す。

 翔天の羽衣だ。今回の戦いにあたり、各人はマゴヒルコからその効験を教授してもらっていた。

「ようし。天津神の弟子、石垣正義。スーパーマンになって見せるぞ」そう啖呵を切って強がる正義は、威勢よく羽衣を羽織った。

 その途端。羽衣が翼のようにはためき、正義を宙へと浮かばせたのだった。

「じゃあ、行ってくるよ」ここに来てお側役としての使命に目覚めたのか、平素の臆病さは消え去り、勇壮な面差しになっている。

「待てよ。お前だけじゃ、何か心許無いからよ。俺も乗せてくれ」敦が正義の背中に負ぶさる。

「何だよ。重くて自由が効かないよ」

「お前は飛ぶだけでいいんだ。俺が奴を仕留める。さあ、何してんだ。さっさと追いかけろ」

 敦に駆られる格好で、正義は翔天の羽衣を纏いフワフワとガラスの割れ目から屋外に出た。

 ガザルは原子炉に向かって円盤を操る。

 敦と正義は愚痴を言い合いながら、不安定飛行で敵を追走する。

「これで人間は恐怖に打ち震える。魔王もさぞ喜ぶことだろう」ガザルが砲丸サイズの爆薬を握り締め、原子炉に投げつけようと振り被る。

「おっと、そうはさせるか」敦が魔封銃を放つ。

 ガザルは円盤をよろめかせて何とかかわす。

「しつこい奴だな貴様も」ならばまず邪魔者を片付けようと、今度は二人に次々と空気銃を発砲して来た。

「わあ!危ない!おい、腹を掴むなよ。くすぐったいじゃんか!」正義が身体をバタバタさせて、どうにか空気砲の軌道から逃れる。

「正義!グラグラすんなっての!じっと飛んでろ、ボケ!狙いが定まんないだろうがよ!」敦が自棄糞になって叱責する。

「そんなこと言ったって!羽衣は御一人様専用なんだぞ!」

「あっ、ヤバい!落っこちる!狼狽えんなよ、この補欠部員!」

 そんな珍漫才ぶりの二人は、毒づきながらひたすら空気砲を避ける。

 そしてガザルが息をついた一瞬の間の現象だった。

 正義が苦し紛れに叫ぶ。翔天の羽衣には冥界の霊力が内包されているとされる。

「羽衣!何とかして!」

 すると風を孕ませていた羽衣から、輝かしい小さな円輪が数本出現した。

 それはよく漫画などで目にする天使の頭上に載っている、あの円形の輪だ。

 それがヒラヒラと風に吹かれながら、ガザルの空気銃めがけて吸い集まっていく。

「何だ?このパルック電球もどきの光は?」ガザルが虚を突かれて当惑する。

 天使の輪は空気銃に密集吸着すると、それを光源に取り込み、あっと言う間に消失させてしまった。

「やったぜ。羽衣は黄泉と現世を繋ぐトンネルでもあるって、マゴヒルコ師匠が言ってたもんね」正義が鬼の首をもぎ取ったように勝ち誇る。

「おのれ!もう面倒だ!これで発電所は終わりだ」ガザルが再度砲丸体の爆薬を持ち、眼下の原子炉に投げ落とした。

「しまった!もう駄目だ!」正義が絶望の面相でバタつくのを止め、目を閉じる。

「それでいいんだ正義。やっと撃ちやすくなったぜ」敦が全神経を指先に集めて、魔封銃の引金を搾った。

 エネルギーの閃光弾が砲丸に命中し、壮絶な破壊音とともに砕け散った。

 敦と正義は羽衣に抱かれたまま、風圧に巻かれて地上に爆ぜ落ちていった。

 ガザルはもろに衝撃風を浴び、円盤から振り落とされて、無情にも地面に激突していった。


 八咫袋に敗北兵を詰め込んだ一同がしばらく待っていると、お迎えの四次元の黒点が目を開けた。

 ガザルの魔力が消えて、豊島は正気に戻った。

「一体何があったんだ?自分は悪事に加担していたのか?」

「そうよ。もう少しで取り返しのつかない事態になってたわ。悪に洗脳されたのは、あなたの責任よ。言い訳できないわね」由美が眉を逆立てて痛罵する。

「そうだったのか。すまない。人生を掛けて償わせてくれ」豊島は罪悪感に染まった顔で肩を窄める。

「豊島さん。どうか日本の皆のために、これからも電気を下さい。お願いします」亜季が慈悲の笑みを見せる。

「悪いのは魔王だけど、安易に奴らを信用したあんたにも落ち度はあるよ」正義が安堵の溜息を吐く。

「坂島と釈も必ず助けるから、そうしたらまた安全第一の経営を頼む。じゃあ」敦が言葉少なに言って手を翳す。

 豊島が黙念と見つめる中、四人は急いで黒点に入っていった。


 


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