三巨頭の野望
しばらくぶりの投稿です。
ここから、主人公たちと魔王軍との戦いが、どんどん熾烈を極めていきます。
新たなる敵も登場し、物語は加速します。
どうぞ、地球存亡をかけた白熱バトルをお楽しみ下さい。
時節は晩秋になり寝床が温かく快適なため、未来を考えるのにも飽きた敦は早寝をした。
そして眠りに落ちた時。不意に布団の中から声がした。
敦は驚いて覚醒した。
何かがいるようで、モゾモゾ感もある。
魔物か?クソッ!ホラー映画みたいな真似しやがって!
「私だ。よく眠っておったから、起こしそびれてしまったんだ」マゴヒルコだ。
「脅かすなよ。急用なの?軍団が来るのか?」
「軍団とはいずれやり合う運命たが。今回は別口だ。冥界の特命係を称する破壊獣が紛れ込んだ」
「何だよそれ」
「大事件になるぞ。これまでとはスケールの違う任務だ」
これまでも十分スケールはデカかったっつーの。
「坂島という政治家を知っているだろう。国政改革派の急先鋒とされる大御所だ。今、奴はその破壊獣に操られている」
「坂島光徳が?魔王が政治に目をつけたんだな」
「それと釈善成。人工知能研究者で、国家とも太いパイプのある男だ。奴も魔王の手先になっている」
「阿呆マンドラめ。AIも支配すんのか」
「さらに東神電力の社長である豊島邦晴も手籠めにした。魔王は傘下の原発を利用して、社会を脅迫するつもりなのだ」
「原発は一番ヤバいじゃんか」
「国を根本から崩壊させるのが目的だろう。敦、一刻も早く破壊獣を退治しなくてはならんぞ」
魔王の野郎。とんでもない国家転覆工作を打ってきやがったな。
今度は権力を人質にした厄介な仕事だ。またまた命の保障はない。
国政にAIに原発。どれも国の重大な要だ。
ちくしょう。やるしかないか。
「そうだ。メンバーを集めないとな」
「お前たけでやるのだ。他の者はあくまで脇固めだ。救国使であるお前の成長なくしてこの世は救えない」
「あんた、何処までいじめ好きなんだよ」
「人に頼るな。自分に頼れ。天津神からの言伝だ」
「あっそう。そんで、まず誰んとこに行きゃあいいんだ?」
「三地点をわざわざ大返しするのは非効率だろう。なぜ私が今日来たか分かるか?折良く、明日三人が会合することになっているのだ。同時に三人を説得してくれ」
三人とも国の浮沈に多大な影響力を与える重要人物だ。そう簡単に近づける人間じゃない。
側には魔王の配下がくっついてる。用心しなきゃな。
マゴヒルコが起動させた四次元装置は、国の中枢である異京市まで敦を運んだ。
三者巨頭会談が行われたのは、代議士坂島本人の事務所だった。
「いよいよもって、マンドラの帝国樹立の日も近い」坂島が陰険かつ悪辣な目つきで冷笑する。政界の大物だけあり、恰幅のいい重厚感が漂う。
「凄いっちゃ凄いですよね。人工知能を極限まで乱用した暗黒社会が始まるのかあ。開発者として待ち遠しい限りだ。高揚感でウズウズするなあ」そう吐露した釈が、こちらも魔道に堕ちた暗い眼光を瞬かせる。まだ気鋭の若輩で、明晰な頭脳の陰にどこか危うさが見て取れる。
「原発を廃炉し、全世界の電気供給を停止させる。街は灯りを失い闇となる。人々の生活は破壊される。希望の光を奪われた人間はマンドラに屈従するだろう。まさに魔国の誕生だ」そして豊島も同様に、暗澹とした悪魔の目を湛えている。原子力という、極めて危機的なものを管理しているという責任感は、とうに持ち合わせていない。
いずれも共通して見てくれが獰悪なのは、破壊獣に魂を乗っ取られているからだ。
すると、空間に暗点が穿たれ、飄然と敦が参上する。
「こんにちわ。悪いけど、あんた方の思い通りにはさせませんよ」
三人は何事かと、目口をぱっくり開いて驚く。
「な、何者だ、君は?」坂島が詰問する。
「救国使、水上敦です。本来、やんごとなきあんた方とは面会も許されないような、末端のうつつか者であります」
三人とも、この重装ライフルを持つ一見普通そうな青年を繁々と目視する。
「救国使?君が噂の地球防衛隊員か」豊島が語調に真剣味を持たせる。
「へえ。孤独にも地球を救おうとジタバタしていると評判の、あの救国使なのかい」釈が動揺からか、しきりに瞬きをして感嘆する。
「あんたらは破壊獣に脳を支配されている。だから、僕はそのモンスターを成敗に来たんですよ」
三人は怯え眼で敦に敵意を向ける。
すると、会議室のドアが開き、奇妙な男たちが入って来た。
人数は三名。いずれも頭はつるっ禿げで、目がくりっと大きく褐色肌。皆同じ顔立ちをしていて見分けはつかない。
「お初にお目にかかるな、水上敦」一人が薄気味悪いダミ声を発した。
「破壊獣はてめえらだな?」
「我は魔王特命係リザル。二人は同じくミザル、ガザルだ」
「巫山戯た三兄弟さんよ。人工知能や原発を好きに悪用させるわけにはいかねえぞ」敦が挑発気味に通告する。
「いい気概だ。でも、お前もすぐに我々の言いなりになるよ」リザルが頬を突っ張らせて笑う。
言うなり、リザルは敦に近づく。
しかし敦は透かさず魔封銃を突き付ける。
「そのライフルで頭を破裂させるのか?優しい君にはできまい」
「うるさい!破壊獣に情はかけないぜ!」
横からミザルが口を挟む。
「撃てないよ。僕ちゃん、正義の味方だもん」
さらにガザルも付言する。
「撃てるもんなら撃ってみな、弱虫救国使さんよ」
三人、声を揃えて笑う。
「さあ、君も魔王の下僕になるんだ」リザルが目の前まで接近して来る。
そして敦がその広い額を直視すると、そこには小さな傷のような孔が四つあった。
何だこれは?訝ったその瞬間。
孔から白い粉煙が噴き出したのだった。
それは敦の顔面へ、もろに浴びせかけられた。
「うえー!」敦は堪らず壁際に退いて顔を拭う。
「これで君は我々の言う通りに行動する」リザルが冷厳に言う。
敦は必死に粉を拭ったが、すでに敵の術に堕ちてしまった。
白い顔で敦は腑抜けたように立ち尽くす。
「お前はもう命令に逆らえない。さあ、おいで。新しい人形の完成だ」リザルの言葉にミザルとガザルが喜悦の拍手をする。
敦はゆっくりとリザルの下へ歩き寄っていく。
「若く勇ましく、神の血を引く優生種よ。いざ、我らの同志。歓迎するぞ」
敦はフラフラと吸い込まれるように間合いに入った。
リザルが洗脳の抱擁をしようと手を広げた。
だが同時に敦の左手にあった魔封銃が動き、その銃床が敵の眉間に打ち込まれた。
リザルは床に倒れ、喚きながら顔を押さえる。
「ハッハッハー。残念でしたー。その粉で坂島さんたちを操ってるんだな」敦が高笑いする。
「なぜだ!今、確実に魔煙硝を浴びたはずだ!」ミザルが叫ぶ。
「先手を打ってあんだよ。浄蓮華を飲んでるから平気なんだよね」
「ジョウレンゲ?あ、あの黄泉の神草か!」ガザルが口惜しそうに唸る。
「俺を誰だと思ってんだ?天津神。天津神の子孫だぜ。思い知ったか、木偶兄弟さんよ」
敦は魔封銃を堂々と翳して豪語した。
起き上がったリザルは、血走った目で敦を一瞥すると、二人に合図を送った。
敵三人は、坂島、釈、豊島の側へ行き、言い放つ。
「銃を置け、水上。こいつらがどうなってもいいのか?」リザルが坂島の腕を取る。
そしてミザルが釈を、ガザルが豊島を盾にした。
「糞馬鹿野郎が!卑怯だぞ!」敦が罵倒する。
「マンドラの野心を叶えるのが我々魔王特命係の本懐。この三人の能力と才覚、利用させてもらうぞ」リザルが坂島に笑いかける。
坂島も自信たっぷりの笑みで頷いて弁論する。
「水上敦。君は魔物が嫌いか?私はね、この世界を真の楽園にしたいんだよ。黄泉とこの世の境界がなくなったら、どれほど面白いか。君は想像したことがあるか?魔物と人間が溶け合い融合する。なんとエキゾチックなことか」
「どこが面白いんだよ、イカレ野郎。坂島、あんた政治家だろ?国民の命を何だと思ってるんだ!」敦は飽きれた口振りで噛み付く。
「国民は愚かだ。そして怠惰であり性悪だ。守る必要などない。未来社会の結末は自滅さ。放って置いても死に絶えるだろう。ならばその前にあの世とこの世を掻き混ぜて、自由と恐怖の世界を創り上げたい。この私の手でな」坂島は野望に燃えた眼光で弁を振るう。
「そんなにマンドラと手を組みたいか?せいぜいあんたは、魔王の末端幹部ぐらいにしかなれないと思うけどな」
「私は魔物をこの世界に招くことに決めた。もうドミノは倒れ始めている」
この裏切り者が。こっちには天津神軍がいる。そんな幼稚な野心はすぐに粉々になるさ。
「そう言うことだ救国使。この国は既に我らの手に落ちた。余計な抵抗はよせ」
リザルはそうけしかけると、腕時計のプッシュを押した。
すると、空間にワームホールのような亜空間が出現した。
「シナリオは動き出した。もはやお前には止められん」リザルが不敵に口角を上げる。
「世界は私が変える。魔王とともに」坂島が執念を含ませて笑う。
そして二人は暗黒の空洞に消えた。また、ミザルが釈を、ガザルが豊島を連れて、同じく腕時計をプッシュし亜空間を広げていなくなる。
「待ちやがれ!負け犬!」
叫びも虚しく、敦は無人の会議室に取り残された。




