第9話 アリシアさまに言いつけ
「びえーーん」
みんなが、あたしを見る
大笑いされる
その中でエリサだけが言う。
「読めないんだったら、座れば?」
「うん」
あたしは、半べそ。
座る。
こんなに恥ずかしかったことない。
「マリベル・フレイドル、明日から初等科に行って、古代レトア語を基礎から習いなさい」
神官教師は、言う。
そのとき、エリサも手をあげた。
「私も行きます」
「なぜ? 流暢だったぞ」
「でも、書けませんから」
クラスのみんなが、一斉にエリサを見る。
エリサは、ずっと無表情。
この夜、寮にアリシアさまと水晶を持った男の人がやってきた。
あたしは、アリシアさまの胸に飛びつく。
「アリシアさま~」
「ハイハイ、あなたには、ちょっと難しかったかしら」
「みんなに笑われました~」
「よしよし」
アリシアさまは、あたしの頭を撫でてくれる。
ちらりとエリサに目をやる。
頬が膨れてる。
アリシアさまに褒めて欲しいのかな?
「かあさま~」
ブーたれた声で、アリシアさまを呼ぶ。
「おまえは、またやり過ぎたようね?」
アリシアさまは、きびしい声でエリサに声をかける。
「こちらは、神殿の予見士のジェドよ。学び舎の同期なの」
エリサは、予見士と聞いて顔を歪める。
「なにもしてないわよ」
「教室の壁に穴を開けた件、古代レトア語で、幻視の術を使ったでしょう?」
……耳に入るのが早いわ。
「三賢人のおじいさま、アレクサスさまと相談してーーおまえの精霊の力を削ぐことにしたわ」
ーー光の神殿のトップ……三賢人
デュール谷の谷長ながら、三賢人の一人。
エリサのおじいさまでもあるわ。
それにしてもーー精霊の力を削ぐって、どういうことかしら?
エリサの精霊が上位でそろってるから?
「エリサ-シャ・フレイドル? エリちゃんでいいかな? ボクは、神殿の名代で来たんだよ。よろしく」
淡い金髪の人。
神秘的な銀色の瞳。
水晶を持ってる。
予見士?
未来が見えてしまう人?
あたしの未来の旦那さまが見えないかしらーー
アリシアさまが、言う。
「リカルド、まずおまえは下位に落とされるわ」
風の騎士の名前ね。
エリサと一番の友だちーー
「古代レトア語は、ーー多分泉の主が知識を貸したのね。おまえには、幻視を見せる力があるとはーー神殿の連中は、喜んでいたわ」
「かあさま、私は、巫女になんかならないわ」
エリサは、言う。
「それは、おまえが決めることではないわ」
アリシアさまの目は、笑ってない。
「アリシア、きびしいよ」
「いいえ、わたしは神殿ーーこの子の監視兼監察、エリサの精霊の処分まで任されてるわ」
「アレクサスさまに気に入られてるんだね~」
ジェドという人、軽い。
「その前に、若長が会いたがってるよ」
「だれ?」
銀の森の夜の風は、冷たい。




