67話 爆風姫
初日に、厨房を水浸しにしたけど、あたしにはエリサほど力はないので、少しの被害ですんだ。
エドガルさんが、率先して不自由な足なのに野菜を高い位置に移動してくれて、生野菜は助かった。
「ありがとうございます、エドガルさん」
「これもリハビリの内だから、気にしないで」
優しいな~ エドガルさん。
しばらくしたら、とうさんとレフさまが騎士団にやって来た。
とうさんは、だいぶ、元気になっていた。黒いすすも取れて、白い包帯のところが多くなっていた。
レフさまは、騎士団で魔法剣士を育てる役割を担うそうだ。
どこまでいっても、一流の魔法使いだもの。
すごいな。
ロサの王都で伝道師をしていた、エリサも顔を出してくれた。
騎士団のみんなは恐々とした顔で、隠れていたけど。
エリサは気にしない。
「マリベル、しばらく、騎士団にいるんだって?」
「うん、そうよ。誰に聞いたの?」
「風が噂してたわ。銀のちいひめは、銀の森でもなく、サントス大神殿でもない、守護の森の騎士団へ行ったとーー」
「その、銀のちいひめって……」
エリサに言われるとこそばゆい。
「いいわね、そんな可愛らしいあだ名つけてもらってーー」
エリサは、ため息をひとつ。
「あたしなんて、爆風姫よ。銀の森に行っても精霊が近寄ってこなくなったわ」
あたしはピンと来た。
若長はエリサのことを諦めていないんだ。
だから、何度も呼びつけているのね。
「だから、逃げることをやめようと思うの。マリベル。修行期間が終わったら谷へ帰るーー」
エリサ……?
何か決心をしてるような……?
「それで、ミシヤールと結婚するわ」
「えええ~~!!」
エリサの目は大真面目。
「あなたもダールが好きなら、ここにいる間に告白しちゃいなさいな」
「だって……ダールが正騎士になれるのは、まだ先だし、騎士団の人は結婚が遅いと言うし……」
あたしは、しどろもどろになっていく。
そんなあたしの様子を見て、エリサは言った。
「わかったわ、爆風姫らしい噂を流しといてあげるわ。精霊の声が聞こえる人には届くはずよ」
「……何をする気?」
「人間には、なにも。ただ風の噂でマリベルは、ダールのことが好きって言っておくだけよ」
「そんな!! 魔法使いの人には、わかるんでしょう?」
「はぐれ魔法使いにも、”耳“のいい人にも届くわよ」
エリサは悪びれてない。
「あなたは有名人だもの、これくらいガードしといた方が叶うわよ。後は、ゆっくり告白すればいいわ」
エリサは目を細めて笑った。
あたしは、ため息をつく。
告白はまだ早いと思ってる。
ここでダールとの距離が縮まってからでもと……
爆風姫が、爆弾を落としていったわ。




