第63話 エドガル・ラング
……エドガル・ラング
知らない名前だ。
もっとも、サントスで治療士の見習いをやってたとき、患者さんの名前を全部覚えているわけではないけどーー
……覚えがない。
けど、
住所がブリスジンだ。
遠いけど、銀の森や中央神殿より手前たわ。
行ってみる価値はありそう。
困ってる人がいるかもしれない。
あたしは、翌日簡単な旅の支度をして、ミシャールさんにだけブリスジンに行くと言って谷を出た。
「行くとしたら、騎士団かな~」
前日、ミシャールさんと冗談を言い合った。
あたしは、少し悩んだけどエドガル・ラングさんを訪ねることにした。
再び、イムル川を遡ることになったけど、エリサといっしょに銀の森に行ったときほど船酔いしなかった。
丈夫になったのかしらーー
ーービルラード王国、ブリスジン
ラングという姓は、ブリスジンの東部に数軒固まって住んでいた。
手紙に書いてあった住所につくと、行くにも古くて小さな家だった。
あたしは、ノックをする。
「はーい」
中から、初老の女性の声がした。
誰か病人がいるのかしら?
「どちらさま?」
「あたし、マリベル・フレイドルです。エドガルさんにお手紙をもらって会いに来ました」
「マリベル・フレイドルって……
あの奇跡の治療士のーー?」
奇跡の治療士?
誰のこと?
おばあさんは、びっくりして奥にエドガルさんの名前を叫んで入っていった。
聞いた名前だけど、誰だっけ……
コツンーー杖をついた若い青年。
サントスに着いたばかりのときに出会った、爆発で足を失った騎士さんだった。
「マリベル治療士よく来てくれた」
「お加減はいかがですか? 足の具合は?」
「ありがとう、あなたのおかげで義足にもすぐに慣れたよ。
こちらに帰ってから、あなたが高名な治療士だと知ってびっくりしたよ」
「あたしは、高名な治療士なんかじゃないわ」
「いや、あなたと出会ってなかったら俺は足を失ったこと、家族に見捨てられたと絶望していた。でもーー
あなたのおかげで、救われた」
「……エドガルさん」
「サントスを離れても忘れなれなかった」
「治療ではないんですか?」
「どうか、俺と結婚してください
職は、騎士団が用意してくれるそうなんだ」
エドガルさんは、爽やかな笑顔で言った。
え?
ええ……?
結婚……!?
あたし、まだ十五歳です〜〜




