第6話 ティラン視点(1)
その日、僕は発熱していた。
まだ、朝の早い時間だったと思う。
僕の守役ーー予見者のジェド
彼の水晶が突然われた。
いつも飄々としてるジェドがーーあんなに慌てたところは見たことがない。
「ボクの水晶が~~」
本気で泣いてる。
長年、愛用してきた水晶なのだ。
……しかたない。
「奥方に、探りを入れてもらいましょうか?」
寝台から、言ってみる。
身体は、それほど辛くない。
「それは、嬉しいけど、大丈夫?」
「それより、事態を早く把握しといた方がいいと思います。後で絶対に神殿に呼ばれるでしょう?」
「水晶がわれるほどの大事故、もしくは災難。どうして予見が出来なかったのか責められるよ~」
この人、これでも30代は超えている。
淡い金の髪と銀色の瞳。
僕と同じ血を持ってる。
「リザベータ、飛んでください。何があったのか」
<承知しましたわ。ティラン様>
僕は、加護精霊の奥方を飛ばす。
彼女は精霊最上位。
程なく風の奥方は、戻って来た。
銀の森から北西のデュール谷。
古くから、エル・ロイル家とも関りの深い一族。
精霊が生まれる地としても知られるところーー
これらは古くからの結界で守られてきた恩恵。
谷の奥のほうで結界に大穴が開いてた。
古竜の火竜の巣の真上だったから、近隣の山が燃えているそうでーー
「ジェド君、急いで神殿のほうへ行きなさい」
父上が僕の部屋に入ってくる。
奥方が帰って来て直ぐだった。
僕の顔色を見た父上は、驚く。
「ティラン君、顔が赤いよ。熱が上がってるよ? 何かした?」
ジェドの代わりに、父上が張り付いてしまった。
ーーもう少し、デュール谷を探るのは後にしよう。




