第58話 水坊主
パーシアの具合が気になって、あたしは急いで、魔竜谷の鍛冶場まで急いで帰った。
パーシアは、呑気に昼寝してた。
竜だからかしら、あたしたち人間と一日の間隔がちがうのね。
寝てるときは十日くらい寝てるし、起きてるときは逆に十日ほど起きてる。
今は、夜みたいね。
<ウソだろ〜!! 火竜のところへ来るなんて聞いてないぞ>
頭の上から、途切れ途切れに言葉が聞こえてきたわ。
きっと水坊主さんの声ねーーでも、あたしには姿が見えないから。
「ごめんなさいね、あたし治療士だから」
多分、水の精霊が、火竜のところへ来たのでびっくりしてると察した。
そこにパーシア目を覚ます。
とたんに大笑い。
そんなに笑ったら傷にひびくわ。
『パーシア! どうしたの?』
『なんなの? その精霊。丸坊主ね』
『丸坊主?』
…………
あたしは、頭の上の水坊主さんのほうに目をやる。
ミシャールさんは、センスはないけど嘘をつく人ではない。
なんせ、人間より精霊を信じるエリサが信頼してる人なのだ。
……ということは、水坊主さんは、風の騎士みたいな男前じゃなくてーーということかしら?
<おい、銀のちいひめ。おれはここで何をすればいいんだ?>
『サントス以来ね、そんな呼び方されたの』
<用がなければ、契約切って帰るぜ>
『帰るってどこに?』
<おかしな娘だぜ。風が運んでくる噂とだいぶ違うな>
????
『なんて言ったの?』
<火竜のレディ、このとんちきな娘っ子の相手をよくしていられるな>
あ……パーシアのことを火竜のレディと呼んだわ。
精霊も竜族には敬意をはらっているのね。
『たどたどしいレトア語なのが、このちいひめの魅力なのだ。
ーーここの水瓶を毎日、綺麗な水で満たしておくれ。それで十分だ』
パーシアは、あたしの頭の上を見て、古代レトア語で言った……らしい。




