第56話 エル・セレシアの真名
パーシアが、目覚めたのは、日も落ちて夜になってからだ。
今日のところは、ミジェーリアさまと、ミシャールさんが付き添ってくれるという。
少しずつ慣れるものらしいけど、ピク草は、毒なのであまり一度に嗅いでも身体によくないらしい。
窓を開け放して、鍛冶場の中の空気を変えた。
パーシアは、よく寝ている。
手術は、成功といっていいだろう。
「このあとが、マリベルの出番だよ」
ミジェーリアさまに言われる。
「よくわからないけど、お世話します」
ミシャールさんが、あたしの頭にてをおいて、うんうんと頷く。
「どう? パーシア、痛みはない?」
「ピク草が、よく効いてるわ。定着するまで、どれくらいかかるかしらね?」
「よくわからないけど、お世話しますね」
あたしが、言うと、パーシアはまた眠ってしまった。
翌日の昼までパーシアは眠っていた。
包帯が、うっすらと黒ずんでいる。
それを見て、あたしは水を運びに行く。
小鳥がそれを見て、水の精霊と契約すればいいのに……と、言ったわ。
でも、あたしには精霊が見えないのよ?
なら、次にミシャールさんが来た時に、ここの水瓶に満タンにする方法を教えてもらえばいいってーー
そりゃ、治療院で使ってる癒しの泉は、ここから遠いわ。
でも、手間を惜しんでたら、良くならないんですもの。
あたしは、一日に何度も治癒の泉まで行った。
そうして、パーシアの包帯を変える。
しばらくして、ミシャールさんが、様子を見に来てくれた。
パーシアの怪我の様子を見て、
「順調だな」
と、言ってくれる。
嬉しかった。
『パーシア、エリサのしたことで、こうなったのだろう……?』
パーシアは、気だるそうに、髪をかきあげていた。
どこから見ても、人間の怪我人だ。
古龍には、見えない。
それにしても、この間もレフさまが謝っていたし……
あの子何をやらかしたのよ。
『なにも……エル・セレシアは、生れてきただけよ』
あたしの心の中に反応したように、パーシアの声が聞こえてきた。
『あの子が。産声を上げた時に、神代の時空が一瞬繋がったの』
えっと……
今のは多分大事な事だろうけど……
聞き取れなかった……
『私は自分から、この時代に残ったわ。でも、時空を開けられる人物の存在も明らかになった。私はエル・セレシアを鍵として、名前を付けました』
『エル・セレシアじゃ、格が高いってんで、エリサーシャになったんだろ。
その辺は、知ってるよ。なんせ、俺がエリサのストッパー役だからな』
ミシャールさんの古代レトア語は、共通語に近くて聞き取りやすいわ。
私たちより八歳上のミシャールさんて、そういう立ち位置だったのね。
エリサも、ミシャールさんには、素直だし。
ーーあれ?
そうすると。銀の森の若長どうなるの?
「あいつは、どこぞの姫と結婚するだろ」
ミシャールさんは、笑って言った。




