第54話 時空の傷
あれから、エリサはアリシアさまと銀の森に戻る。
あたしは、パーシアのもとにもとで治療を続けることになった。
デュール谷の火竜、パーシアの右腕の傷は思っていたよりも広範囲だった。
結界の破片が刺さった場所は、深いけれど、それなりに治りも早い。
数回、包帯を変えるころには、新しい鱗が見えてきた。それとは、別にその傷を中心にした肘から手首の部分でが、えぐられたように消えている。
こんなの見たことがないーー
『パーシア……どういうことなの?』
たどたどしい古代レトア語で聞く。
『持っていかれたかしらねぇ……』
赤毛の女性は、何か言ってる。
困ったわ。
パーシアの怪我の原因がわからない。
わからないということは、、手当ての手立てもわからないこと。
『バーシア、エリサが、結界を壊したとき《《何が》》起きたの?』
あたしは、心をパーシアに集中して聞いてみた。
古代レトア語は、物事の本質を表す言葉だという。
あたしのような普通の子には、雑音しか聞こえない。
だから、そんなときは、心をすまして、聞くようにと治療棟のルチアさんに言われてたの。
「あのときと同じよ。時空にほんの一瞬穴が空いたのよ』
??
時空に穴がって聞こえたけど?
水に穴が開いたことでも、風に穴が開いたことでもないわーー
そのとき、鍛冶場に、レフさまが現れた。
『パーシア、もしかして、エリサが生まれたときと同じことが起きたのか?』
『そうね、神代の仲間が呼んでるのよ』
『なんてことだ……』
『私は、選んでこの時代にいるのに……』
パーシアは、目を伏せて言った。
『いつ治る?』
『さあ? 早くても二十数年かしら?……新しい鱗を植え付ける処置をしてもらってもね……』
『ジェドと同じことを言うな』
『……? 二十年?』
あたしは、おばあちゃんになってしまうわ。
あたしは、レフさまをじっと見た。
レフさまも困った顔をしていた。
パーシアだけは、足の方を見て比較的綺麗な肌(鱗)を探しているようだった。。
『……俺の娘が、すまない』
レフさまの謝罪に、パーシアは、
『次の魔法鍛冶士が、育つまでゆっくり待つわよ』
『俺の役目は終わったな』
『楽しい時間をありがとう、レフ』
パーシアとレフさまは、特別な絆で結ばれていたのね。




