第48 神官ルシアン・モルガンの野心(2)
気になった。
マリベル・モルガン。
治療棟にそんな娘がいるなど……
気になった俺はーー
会いに行く。
治療棟で、水汲みをしている茶髪の女の子とすれ違う。
治療士にしては、若いな。
見習いか……?
それにしてもーー
独り言が多い娘だな。
「おい、娘」
娘は、びっくりしたらしい。
おそるおそる、俺のほうをふりむいた。
「あの……なんですか?」
「ひとりごとが多いのは癖か?」
「ひとりごと? あたしのことですか?」
「他に誰がいるんだ。ここに」
「水を飲みにきたすずめが、います」
すると本当にすずめが飛んでくる。
こいつは、まともじゃない!!
案内だけさせて、ずらかろう。
「おい、娘。マリベル・モルガンという娘のところまで案内しろ」
「マリベルは、あたしだけどーーあたしの名前は、マリベル・フレイドルよ」
「お、お前がカティア・モルガンの娘?」
「かあさんは、カナ・フレイドルよ」
どうも、話が食い違う。
「俺は、ルシアン・モルガンだ。たぶんお前とは、親族にあたるものだ」
「……あたしの親は、もう、とうさんだけよ」
何か、調子狂うぞ。
「お前は、母親から受け継いだものがあるだろう?」
「ありません。かあさんはあたしが三歳のときに死んだし」
こいつは、自分の価値を知らないのか?
「いいか、マリベル。神殿を出て俺と来い。モルガン家の再興に力を貸せ」
俺は、小娘になめられないように、圧をかけて言った。
「それ、急ぎですか? 洗濯が終わってからでもいいですか?」
「そこじゃない!!」
「モルガン家には、伝えられた財宝が眠っているんだ!!」
「あたしには、関係ありません」
なんだ……欲というものがないのか?
「豪邸で、いい暮らしが出きるんだぞ? 綺麗なドレスを着て、美味しいものが食べられて、たくさんの人にかしずかれるんだーーそんな生活を送りたいと思わないのか?」
「それ、大事ですか? あたしとうさんが早く治ってくれることのほうが大事だわ」
俺は、マリベルという少女の頭を殴りたくなった。
ーーが、その瞳はとんでもなく本気だった。
そんなやつを俺は見たことがない。




