第46話 波紋
あたしに、挨拶してくる存在が増えてくる。
はじめは、すずめや鳥たちだったのに、神殿で飼ってるネコや犬やヤギまでも。
あたしが前をとおると、
『今日のご飯は上手い』
『お前さんのおかげでたくさんの乳が出た』
あたしは、びっくりしてヤギの前で立ち止まってしまった。
「それは、あたしのおかげじゃなくて、いい草を採ってきてくれる神官見習いの子のおかげだわ」
こんな長いレトア語を話せないので、普通の言葉で返す。
『もちろん、いい草だ。でもそれだけじゃない』
「?」
どういうことだろ?
シーツを運ぶ時に騎士とすれ違った。
騎士の仲間は、いつ出番なるか分からないので、夜勤明けなどギスギスして、トラブルが多いらしい。
でも、マリベルがすれ違った。騎士二人は仲良く談笑していた。
騎士の夜勤明けのことを聞いていたあたしは、二人を見てホッとした。
あたしとすれ違ったとき、騎士の一人が言った。
「なんで、俺たち喧嘩ばかりしてたんだろうな……」
治療棟に戻ると、治療士のみんなが休憩室に集まっている。
楽しそうだ。
「みなさん、いいことでもありましたか?」
ルチアさんがあたしの持ってきたシーツを引き取ってくれた。
「こんなに暇な日はないわ」
「天気もいいし、精霊の機嫌もいいわ。サントスの神殿中が活気に満ちてる」
「へぇ~ そうなんですか」
「あら、あなたが来てからよ」
ルチアさんが、あたしの顔を見つめながら、言う。
そんなことはないでしょう。
たまたまですよ
優秀な警備騎士。
有能な治療士
光の神に、敬虔的な神官や巫女たち。
大賢者メルクリっドさまのもと、サントスの町は平和に保たれているんだわ。




