第45話 奇跡
あたしの周りは、急に寂しくなった。
エリサは、古代レトア語を短期間でマスターして、伝道師としてエラドーラの町に派遣されていった。
神殿もエリサを神殿の中に押し込めるよりもーー町中で、聖典を読ませる伝道師に仕立てたのだ。
アリシアさまもエリサについていった。
レフさまは、谷に帰った。
ジェド氏と若長は、銀の森へ。
あたしは、昨日の疲れが嘘なくらい元気だわ。
私は、いつものように、水汲みから日常に戻る。
患者さんに配膳して、包帯変えて。
いつもの一日。
いつもの日課。
その合間に古代レトア語の勉強……?
クスクス。絵本だものね。
でも、不思議。
急に理解できることがあるの。
……?……
ある日を堺に、朝起きるとすずめの声が聞こえるようになった。
『おはよう』
声をかける。
『おはよう、銀のちいひめ』
銀のちいひめ?
あたしのこと?
『そうだよ。聖なる浄化のちいひめ』
チュンチュンという鳴き声とともに、そんな言葉が聞こえてくる。
その日から、おかしなことが起こりだした。
治療棟の中心で、患者さんの身体を拭いていた。
周りの人も、熱が引いたり、痛みがなくなったりーー
夜にとうさんのところに通う。
顔だけでも早く包帯が取れたらいいなーー思いながら……
とうさんの顔を包みながらーー銀色の光が手から出てくる。
とうさんは、驚く。
「やめろ! マリベル。その力を長く使うな」
「たぶん、大丈夫よ」
「カナは、長く生きられなかったんだぞ」
「あたしは、大丈夫よ」
なぜだか、わからないけど、断言できた。
とうさんの頬のところの、黒ずんでいた包帯が少しずつ白くなっていく。




