第43話 対話
あたしの頭の中に、何か知らない声が聞こえてきた。
あたしは、あたりを見回した。
大きな地竜のほかには、ジェド氏しかいない。
『……』
今度は、残念そうに。
ジェド氏は、微笑みながら、あたしに教えてくれた。
「マーラが、ありがとうって」
「そうなんですか?」
「ついでに、伝わらなかったって、がっかりしてるよ」
あたしは、急に申し訳なく思った。
「古代レトア語は、基本中の基本だからね。勉強しとこうね」
「……はい。古代レトア語がわかれば、マーラさんともお話できるんですか?」
「古代レトア語は、物事の本質を表す言葉なんだ。だから、動物や小鳥だっておしゃべりできるよ」
すごいわ。
それ!
デュール谷のすずめとあいさつが、できるのかしら?
あたしは、立ち上がろうとして、ふらつきを覚えた。
あれ……
目が回る……
ジェド氏が、すぐにそばに来て支えてくれた。
「大丈夫? マリィちゃん」
「はい、ちょっとめまいがしただけです」
「あんなに、大きな力は一度に出したらいけないよ」
ーー大きな力?
そういえば、、マーラさんの鱗に触ったときに、すごく胸が押し潰される感じがしたわ。
それでーー思ってしまったの。
『マーラさんを救ってあげたい』って……
浄化治療は、代償があることは、きみのおかあさんでわかってる。
マーラも、きみを気に入ったみたいだから、ときどきでいい。マーラを癒してやってほしい」
「マーラさんは、いつからこの地下にいるんですか?」
あたしは、ジェド氏に聞いた。
ジェド氏は答える。
「もともとは、ここから北東のティエリ山脈の地脈と一体になって眠ってたんだ。ところが五十年前に、その山の一つが噴火して、マーラは眠りから目覚めてしまったんだーー」
一拍
「大怪我もしてね」
「そんな……マーラさんは寝てただけでしょう」
「……でも、麓のラウゼン辺境伯領に甚大な被害を与えてしまった」
ジェド氏は、つらそうに言う。
「父が動いて、ここの地下まで連れてきたんだ」
「大賢者さまが……すごいかたですね」
あたしは、改めてマーラさんを見た。
さっき、あたしが手を当てたところは、古い鱗が剥がれて綺麗になってる。
「きみは、これから力の調整ができないといけないよ。暴走したら、大変なことになる」
「はい」
……なんて返事をしたものの、意味は全然わかっていなかった。




