第35話 ティラン視点(3)
サントスの空は、晴れていた。
この神殿に来るのは、三度目だが、こんなに晴れていたのは、初めてだ。
しかも、来るたびに魔方陣で酔うーー醜態をさらしていた。
こんなに気分よく、着地できたのは、初めてだった。
今回はどうしても気になることがあった。
僕の身体のことを、心配する母上には申し訳ない。が、サントスまでやって来た。
守役のジェドだけをつれて。
僕は、魔方陣の部屋から出て、治療棟に向かった。
途中で、空を飛んでる子に会った。
「エリサ」
声をかけると露骨に顔をして歪める。
可愛いのに、もったいないな……
「なんで、《《ここ》》に、あなたがいるのよ。もう、風の奥方なんて契約しませんからね」
早口で一方的に喋る。
「確認したいことがあって」
「なあに?」
エリサは、真顔になって僕の前に降りてきてくれた。
おやおや、彼女の精霊が五階級の風の騎士のみになっている。
「マリベルの母上のことは知ってますか?」
「知ってませ~ん。カナおばさまは私たちが三歳のときに亡くなったのよ。覚えてるわけないわ」
「カナ?」
「ええ、カナ・フレイドル。おばさまのことを知りたかったら、かあさまが知ってるわ」
「今日は、すごく親切ですね」
正直、怖い……。
「あら、中央神殿では助けてくれたでしょう?」
あれは……そんなつもりは……あったかも……
「かあさまを呼んでくるわ。待ってて」
彼女は、飛んでいってしまった。
「エリちゃん、少し落ち着いたみたいだね」
「大賢者のお仕置きがきいたのでしょう」
ーーと、上から
水。
ザバーーン!!
僕は、もろに桶の水をかぶっていた。
不思議と冷たくはない。
冷たいのは、エリサの顔だ。
「人のいないところで悪口とは、いい度胸ね」
「エリちゃん! 言ったよね! 彼はこれでも」
「大嫌い!!」
ジェドが、あとを追ってくれたが、神殿の中に雲隠れしたようだ。
完全に嫌われたかな……
「若長、大丈夫ですか? 今、乾かします。こちらへ」
エリサの母上のアリシア殿が、来てくれた。
この人もある意味、伝説の人なのだ。
銀の森の学び舎で、劣等生だったのを卒業までに一流の称号『ロイル姓』までもらうに至っている。
風の騎士は、彼女の契約精霊だった。
上位精霊を失って、今は、Aランク魔法使いなのだ。
経験も豊かで、こわざができる。
ーー手先が器用なのだな。
レフも、魔法剣に細かい彫り物をする。
……
……
……
どうして、あの規格外が?




