第33話 浄化治療
それからーー
あたしは、昼間は治療棟で、患者さんの話し相手になってあげたり、水を汲んだり、繕い物をしたりして過ごした。
みんながとても、喜んでくれるので嬉しかった。
「マリベルが来てくれてから、よく眠れるよ」
「痛みが薄らぐよ」
「さすがに、伝説の巫女の娘だな」
……という人もいるけど。
あたしは、かあさんのように巫女でもなんでもないわ。
大賢者さまに言われて、ここにいるだけ。
香木もこんなに種類があるなんて知らなかった。
誰もなにも教えてくれない。
ーー
これだと思った香を、不安そうにしている患者さんのところに持っていってあげる。
そうして言われるの。
「きみの選んでくれる香木を嗅いでると安心できるよ」
あたしは、なにもしてないわよ。
適当に選んでるだけ。
「マリベルが配膳してる人だけ、顔色がよくなっていくみたいだな」
「昔のカティアさまみたいだね~」
おばあさんが言ったわ。
でも、あたしは、かあさんを知らないの。
ーーはじめは、部屋に入ることさえ、いい顔をしていなかったとうさん。
あたしが、来るのを楽しみにするようになったわ。
とくに、包帯も変えさせてくれるようになったんだ。
黒ずんで、焼けただれた皮膚の傷が、次第にきれいになっていくのが嬉しかったわ。
「とうさん、この傷は、どうやったら治るの? レフさまは、ほとんど目立たなくなったわよーーとうさんはなかなか治らないね?」
「そうか……レフは、火竜の加護があるからな……それでも、俺をかばったせいで火傷をさせてしまった。レフがいなければ、俺は、骨も残っていまい」
寂しく笑う、とうさん。
「どんな姿でも、生きていてくれて嬉しいわ」
あたしは、とうさんに抱きついた。
「マリベル……古竜の傷は癒えることはないのだ。無理をするな」
「あたしには、特別な力はないわ。とうさんの包帯を変えてるだけ」
とうさんは、あたしを久しぶりに抱き締めてくれた。




