第23話 騎士団での生活
「汗臭い!! 男臭い!! きも!」
あてがわれた部屋につくなり、エリサは窓を開けた。
「リカルド、外の風を入れて」
元気よくカーテンが揺れたけど、その後エリサの機嫌は悪かった。
「この森全体が、結界の中にあるから、どこも同じですって~」
同じ結界の中でも、デュール谷の中とはちがうのね。
デュール谷は、いつも気持ちのいい風が吹いていたわ。
それに引き換えここは、ひとびとを護る訓練をする騎士がいるところ。
男臭くて汗臭いのも当然なのよ。
とりあえず、あたしは持ってきた荷物の中から、香を出して焚いた。
ーーこの香木の匂いは、かあさんの匂いなの。
寂しくなったら、香を焚いていた。
だから、どこに行くときでも、持っていくのよ。
「あら、懐かしいわね。この香」
「覚えてた?」
「マリベルの家の匂いだわ」
あたしは、嬉しくなって微笑む。
次の日からーー騎士団での生活が始まった。
そうしたら、そこでやらかしたのよ~ エリサがぁ!!
厨房に行く。
釜戸の番でもしてればよかったのにーー
水汲みをすると言って……水瓶をこぼして、厨房を水浸し。
肉はよかったけど、生野菜は大打撃。
それなのに本人はけろりとしてる。
「謝りなさいよ、エリサ」
「どうして?」
駄目だわ……
悪いとさえ思ってない。
あたしは、早朝稽古をしている騎士さんのために、朝ごはんの用意をすることにした。
水のついた野菜は、大きく切ってスープに。
見たこともない香料がたくさんあって、使ってもいいか? 聞いたところ、好きに使えといわれたので、味見をしつつーー我ながら美味しい野菜スープができたわ。
肉は、豚の丸焼きを騎士見習いの子に、火加減を見てもらいつつ、こちらもハーブで味をつけていた。
稽古の終わった騎士達が戻ってきた。
「いい匂いだな~ 誰だ? 今日の当番は?」
クライヴ騎士団長だ。
「茶髪の女の子です」
「ほお~ たしか、マリベルだったね」
美形の団長さんは、あたしの名前を初めて呼んでくれた。
あたしの胸は、跳ねた。
これは、ダールに抱きしめられたときのときめきとはちがうわ。
び、びっくりしたのよ。
エリサじゃなくて、あたしの名前が呼ばれたんですもの。
「はい」
「いつでも、嫁にいけるな」
騎士団中が笑いに包まれた。




