第20話 火の精霊と契約
「風の騎士、飛ぶわよ」
エリサは、風を吹かせて身体を浮かせる。
くるりんと一回転する。
気持ち良さそうだ。
「久しぶりだわ~ この感じ」
<俺は、おまえ一人で精一杯だぜ?>
あたしは、地上で。
エリサと風の騎士のやりとりを見ているだけ。
「マリベルを呼んだらいけないの?」
<今の俺には、無理>
なにか、エリサが良からぬことを考えてる。
エリサは、ずっと上のほうに浮いていった。
エリサの視線の向こう。
中央神殿の北には、守護の森が広がっている。
そこには、光の神殿所属の騎士団がある。
エリサの父親、レフさまが働いているんだ。
火の魔法使いとして名高い。
もともとは、火竜の息吹を使って、魔法剣を作る魔法鍛冶士ーー
今は魔法剣士、身分は一介の正騎士。
エリサが壊した結界のせいで、あたしのとうさんが大怪我して……
その治療費を賄うために、ここにいる。
「ねえ、マリベルゥ~」
高いところから、エリサがあたしを呼ぶ。
「なに?」
「騎士団のとうさまに、会っていってもいいかしら」
「別にいいんじゃない? セルグ師も急いでなかったわ」
あたしとしてはね。
学び舎で、劣等生なんて嫌なのよ。
「いっしょに飛びましょうよ」
エリサのお誘いを、
「けっこうです」
頑なに断った。
あたしは、歩いて守護の森まで行く。
「気持ちいいのに~」
聞こえないフリ。
ところがーーあたしたちが守護の森に着くと、けたたましいサイレンが鳴る。
正確にいえば、あたしはまだ守護の森の敷地内には、足を踏み入れてない。
飛んでいたエリサのほうが、少し先を行っていたのだ。
敵襲でもあったような騒ぎーー
騎士団の中は、一気に緊張感に包まれる。
「待て」
茶髪のいかついお兄さんが、出てきた。
「森の結界に触れたな? 名前と要件を言え」
「名乗る前に自分から名乗ったら?」
お兄さん、顔が赤くなってるわよ。
怒らせたら駄目よ。
エリサ。
「……そうか、いい度胸だ。俺はジーク・アシュだよ。きさまは?」
「フレイドルって言ったらわかる?
レフ・フレイドルの娘よ」
ジークは、口を開いたままだ。
「まさかーーおまえが谷の結界を壊した……」
こんなとこでも、エリサは有名人になってる。
「そこから、動くな! 待ってろ」
ジークは、回れ右して走り出そうとした……ところでエリサが、見つけてしまった。
ジークお兄さんの頭上の、火の精霊を。
「あら、かなり上位ね? 名前はなんていうの? 私はエリサーシャ・フレイドルよ」
あたしには、何があったかわからない。
でもーー暖かい力が、エリサに寄り添ったのを感じたわ。




