第18話 セルディアス・フィルム
「おまえが谷の結界を壊したやつか?」
四十絡みの男の人
すらりとした体格。
指は繊細。
肉体労働はしないんだろうな。
結界士のセルディアス・フィルム。
あたしたちが、部屋に入るなりまっすぐにエリサに言ったわ。
「……大層な精霊を二匹も従えるかーー」
エリサも大の大人相手に臆さずにいく。
「何のようよ? 小娘をこんな場所まで呼んで」
エリサは、非常に不機嫌。
まだ、若長と仲直りしたわけでもない。
中央神殿での用事がすんだら、風の奥方を回収してくれるというので、いったん引いただけーー
機嫌がなおったわけではないのよ。
部屋の中だというのに、不気味な風が吹いている。
「結界を壊したのはーー今見たところ、若僧の精霊の力というより、
貴様の魔力が強すぎて、結界の術式を壊した可能性がある」
すご……
精霊を見ただけで、わかるなんて。
「ーー聖典を読んだだけで、幻視を引き起こしたか…… そちらもすごいな」
エリサは、明後日の方向向いてる。
「真下には、火竜の巣が、あったか?」
「それがなに?」
「その竜は、普通の竜族とはちがうな」
セルディアスは、鋭い目で言う。
「知らないわ」
魔法使いのおじさん、今度はあたしのほうを向いた。
ここは、説明するべきでしょう。
「あのーー火竜谷の竜は、昔の戦で召喚された竜なの」
今確認されている竜とは、種類がちょっとちがうのよ。
もっと時代が古い時代の竜なの。
それを聞いた、セルディアス氏。
「ふん、古代の火の魔法も重なっていたかーー結界が弱まっていたわけだな。
……それにしても、あの谷の結界は、当時の結界士七人で作り上げたものーー一人の小娘に穴を開けられるとは」
セルディアス氏が目を細める。
そのときーー若長の声が双子石から聞こえてきた。
《セルディアス・フィルム、ぜひ、デュール谷の結界を直してください》
石を持っていたエリサは、あわてて、双子石をあたしに渡してくる。
あたしだって困るわ。
「その声は……若長」
あら、知り合いみたい。
「しかしーー」
《自信がないですか?》
「そんなことは!」
《では、命令です》
セルディアス氏は、盛大なため息をついた。
「エリサ・フレイドル。おまえ当分谷に戻るなよ!」
そう言うと、あたしたちは早々に退室を命じられた。




