第16話 風の精霊の仕事?
エリサは、どうやら風の奥方と相性がよくないようだ。
彼女は、精霊を友だちみたいに思っている。
……言うことを聞くのが当たり前だと思っていたふしもある。
風の奥方は、どうやらエリサには扱いにくいタイプの精霊なのだわ。
今日の宿までの道を急ぐ。
中央神殿までの道は整備されていて一本道。人通りも多い。
女の子二人旅でも、それほどの危険はない。
でも、当てにしていたエリサがあの状態だと……
あたしも少しはしっかりしないとね!
二日目の宿を出て、一刻ほど歩いた頃だった。
エリサが突然、上空を見上げた。
懐かしい風の匂いがした。
彼女の周囲に、風が集まる。
「リカルド」
エリサが声をあげた。
同時に、空の気配がわずかに重くなる。
「風の騎士が来てるの?」
「ええ。どうしたの? あの若長にいじめられてるの?」
その声は、風を通して響いた。
――リカルドの声だ。
<エリサ~>
「……ぼろぼろじゃないの。なにかあったの?」
<これ見てくれよ>
エリサは視線を落とした。
「下を見ろって言ってるわ」
あたしとエリサは、地面に目を向けた。
砂利道。小石ばかり。
「これーー」
その中から、エリサが一つを拾い上げる。
親指大の紫の石。
「双子石ね」
「双子?」
「見たことない? かあさまが留守のときに置いていってくれるの。連絡用よ」
<若長に言われて運んできた。これをエリサに渡せって>
冷たい風が頬をかすめた。
どこか泣いているみたいだった。
「まったく……」
エリサの声が低くなる。
「聞いているわよね、若長。人の精霊に物を運ばせるなんて、どういうつもり?」
空気が変わった。
風が一瞬、止まる。
<風の精霊の仕事じゃねぇだろ、これ>
それは、リカルドの本音だった。
エリサの目が鋭くなる。
「わかっているわよ。そこにいるんでしょう、若長!」
空が曇る。
《風の貴公子は、あなたを見つけましたか?》
呑気な声が、風の奥から響いた。
「風の精霊に物理的なものを運ばせ
るのはダメでしょう!」
《あなたは飛ぶのに?》
「話が違うわ!」
風が一段強く吹いた。
<これは……僕との連絡用です>
「いらないわよ!!」
エリサが叫んだ瞬間、双子石にひびが入った。




