第13話 風の奥方に挨拶
寮に帰るあいだ、ずっとエリサは、黙ったままだった。
ときどきーー頭上を見上げる。
ため息をつく。
あたしは、興味本位で聞く。
「ねえ、風の奥方ってどんな精霊なの」
「見たまんまよ」
「見えないわ」
「高く結った髪をした、中年の品のいい感じ」
ぼそりと言う。
もう一度ため息。
エリサの髪が揺れた。
奥方が、なにか言ってるに違いない。
「なに?」
エリサが、あたしに話す。
「風の奥方がーーあなたに《《見える》》ようになりたいかですって」
「可能なの?」
「奥方なら可能らしいわ。マリベル、とてもさっき、私と若長の話をとても興味深く聞いてたでしょう」
……ばれてるーー
でもーー
見えるだけでは困る……
「……今だけでいい。精霊が見えるなら見てみたいわ」
「そう……圧に負けないでね」
エリサは、声を低くして言う。
「リザベータ、姿を現して」
なになに?
急にあたりが暗くなる。
風が強くなる。
「私の頭の上を見て」
うわ……
妖艶な、美しい人。気品もあって、奥方と呼ばれるのにふさわしい人だわーー透けてるけど……
<マリベルさま、いつまでもエリサさまの理解者でいてくださいね>
エリサを通して、奥方にお言葉を頂いてしまったわ。
そのときの奥方の顔は、とても優しく、精霊最高位だとは思えなかった。
優しい風が吹き抜ける。
圧が和らいで、奥方の姿は見えなくなった。
「でもーー若長は、精霊の交換なんか……」
エリサは、黙ったままだ。
それが答えなのだ。
若長は、エリサよりも魔力が高い。
風の奥方が、エリサと契約することでは神殿の思惑?
教育?
それとも他に、思惑があるのかしら?




