表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/21

幼馴染2

わたしはいつも不幸だ。

両親はいない。なんでって?

事故で死んでしまったのだ。

わたしを置いていくなんて、

薄情者だ。


文句のひとつでも言って

やりたかった。

小さいながらに悲しい思いは

あった。けど、何が起きたのか

はっきりわからないまま、

泣いてばかりいた。

だれも受け止めてくれない。

お父さん、お母さん、わたし

を大切に育ててくれた大事な

人たち。

ある日突然、いなくなった。

薄情者だ。


その後、家族を失ったわたしは

遠い親せきの元に引き取られた。

わたしの心は晴れることはなく、

泣くことで、何とか自分が何者

かを確認できる、そんなような

気がして、お世話になっている

家から出るとひたすら泣くこと

を繰り返していた。


枯れ果てるかもしれない。

誰もわたしの事を見てなんか

くれない。

両親と行ったことのある公園、

ここだけがわたしの心の拠り所。

わたしを満たしてくれる、

たったひとつの場所。

ここにくれば涙も止まる。

そう思っていたのに。


気付けば、いつの間にかここでも

涙が止まらなくなっていた。

周りからは不思議がられ、

腫れものにさわるように

避けられるような生活。


そんな時だった。

なっちゃんが声をかけてきたのは。

声をかけてないか。

ハンカチを差し出してきたのだ。

誰とのつながりも感じられず、

孤独の海を漂っていた自分に

ただ隣で寄り添ってくれた。

どんな思いでいてくれたのか、

それはわからない。

ただただ暇だったのかも。

わたしにとっては、そんなこと

どうでもよかった。


あの時のわたしを救ってくれた

ことに恩を感じている。

大人はたまに声をかけてくるが、

なぜ泣いているの?お父さんと

お母さんは?とか。

もうこの世にはいないのに…

なっちゃんは何も聞くことなく、

からかうでもなく、だまって

隣でいっしょにいてくれた。

雨の日でもどしゃ降りの中、

気にかけて駆けつけてくれた。

もしかしたら、どこかで彼が

来てくれるのを待っていたの

かもしれない。


誰かに心配してもらえる喜び。

そんな些細な優しさにさえ、

ふれることが出来なかった。

だから求めていたのだろう。

彼はずぶ濡れのわたしの手

を引っ張って自分の家に

連れて行き、お風呂に入る

ように言った。

わたしは震えるからだを

縮こまらせながら、暖かい

お風呂につかった。

その後は服を乾かす間、

なっちゃんのシャツを

着せてもらっていたのは

懐かしい思い出だ。

仲良くなったのはその時から。


なっちゃんは最近引っ越して

きたみたいだ。

わたしと同じかな。もちろん

境遇はまったく違うけど、

両親は共働きでいないみたい。

だから、必然的にいっしょに

いることが増えた。

なっちゃんはサッカーが好き。

公園でボールを蹴ることが

日課になっていた。

わたしも付き合ってボールを

蹴ることはあったが、そんな

好きでもないので見てること

が多かった。

その時からファンみたいな

ものだった。


なっちゃんの成長を見守る。

ある意味、親のような存在で

ありながら、唯一心を許した

男の子。

だからふだんから甘えるように

絡む?ことは当たり前。

ウザがらみ?なっちゃんはそう

言うけどそんなことはない。

わたしにとっては挨拶みたいな

ものなのだ。

だから許してね。

初めて出会ってから、今まで

学校でもいっしょだったし、

どんな時でもいっしょ。

思い出もいっぱいあるし、

だからなっちゃんと離れる

なんて考えられなかった。


そんな時だった。

なっちゃんのご両親の転勤で

海外に行くことになった、

そんな話を聞いた。

どうしよう。そんなに遠くに

行っちゃうなんて考えられない。

なんでもロンドンらしい。

サッカーをするには成長できる

かもなんて言っているが…

どこまで本気なのか。


わたしは途方にくれた。

今まで支えてくれた感謝もあるが、

巣立っていく子供を見送るような、

そんな気持ちになっていた。

色々悩んだ結果、なっちゃんは

国内に残ることに決めたようだ。

でも家は引き払わないといけない。

近くなのだが、知り合いの空き家

があるようで、そこでひとり暮らし

するらしい。

わたしもいっしょに付いていきたい。

それを伝えたら全力で断られた。

さみしいかもしれないし、ごはん

とかのこともある。だからわたし

がいれば色々お手伝いできるのに。


なんとか付いていけないか。

そう考えたわたしは、なんとか地元

を離れて生活できる方法を模索した。

そこで見つけたのは芸能活動。

大手プロダクションとは言えないが、

地元でも有数のところではあるので、

オーディションを受けに行くことに

決めた。容姿はそれなりに整って

いると思ってはいる。なっちゃんにも

言われたし、学校でもよく呼び出しで

告白されることも多かった。

全部、断ってたけど。

わたしの思い人は他にいる。

鈍感で気付いてないみたいだけど。


暗くて泣いていた昔のわたしはまるで

なかったかのように、なっちゃんの

おかげで持ち前の元気さが取り柄に

なっていた。武器になったのだ。

今では陽キャだのけなされるが、

そんなこともあって、なんとか芸能

活動をスタートさせるための出発点

には立てた。

そして、なっちゃんと同じ学校に

通うことが叶った。

残念ながら勉強は出来ないので、

芸能科でコースは違う。

でもこれでまた昔と同じように

いっしょに学校に通えるし、

サッカーの試合も観に行くこと

ができる。

わたしは仕事もあるし、なかなか

微妙ではあるけどクラスも隣だ。

近くに感じていられることも

しあわせに思う。

時間も限られてるから、今日の

ように偶然見かけると勢い余って

飛びついてしまう。

ゴールデンレトリバーのような

飼い主に喜んで飛びつく飼い犬

みたいなものだ。

だから少々のスキンシップは

許してほしい。

ウザがらみ?だと無視を決め込む

なっちゃんに、ついいたずら心で

置かれていたジュースを飲み干した。

間接キス?気にしない。

そんなことは昔から経験済みだ。

あとで気付いたら怒るだろうな。

どうしてもこっちを向かないので

ほほをつねってむにむにしてやる。

ムチャクチャ面倒くさそう。

なっちゃんは芸能プロダクション

に受かったことは喜んでくれたが、

自分と同じ学校に通うためだと

わかって反対した。

自分といっしょにいるためじゃ

なければ応援はする、そう言って

くれた。わたしだってがんばる。

この仕事が嫌いではないから。

歌を歌うこともある。

久々なので、なっちゃんの肩に

頭を預けて休息をとる。

落ち着くなぁ。

わたしにとっての唯一の幼馴染。

この枠は誰にも渡さない。

あまり長いと嫌がられて少し

不機嫌になるので、そろそろ退却。

加減はわかっている。

だてに長い付き合いではない。

また今月からもよろしくね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ