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2/20

再会

懐かしい店がまえ、店内の雰囲気を堪能しつつ、

釣り具屋に入っていく。

狭い店舗だが、奥に店員らしき人影が見えた。

たぶん、おじさんだ。懐かしいな。

なんだか照れくさい。声かけづれー。


どうしようか悩んだ末に、ひとまずはここはスルー。

何やら苦しんでいるような…気のせいか。

いや、気のせいじゃなさそう。

どうやらおじさんの様子がおかしい。

まずい。声かけてみるか。

日寄ったおれは仕方なくおじさんの元に向かった。


おそるおそる近づいてみる。

ぷるぷるしているような、大丈夫だろうか…

「おじさん、おじさん」

顔をあげる元気はあるようだ。どういう状態??

「こ、こ・・・」

こ?こ、ってなによ(汗)

冷や汗をかいているようにも思えるが。


もしかして、何か泥棒にでも襲われたのだろうか。

聞こえないので、近づいて耳を傾けてその声をひろう。

「腰…」

腰?腰に目を向けてみるが、外傷のようなものはない。

「ぎ、ぎ、、、」

冷や汗がすごい。どこか悪いのだろうか。

「ぎっくりごし」

ひとまず最後の言葉レクイエムを聞いた後、

奥の部屋に何とか落ち着かせることができた。

その間の店番は頼むとのことだ。

えーっ、どゆこと??なしよりのなしなのでは。

まだ名乗ってない通りすがりの他人ですが。

一応、12年前に顔を合わせてはいると思うけど。


しばらく店番をすることになった。

ひまだな、これ。携帯でもいじってるか。

なんだいきなり事件にでも巻き込まれたのかと思った。

まぁ、殺人とかでなくてよかった。

そういうのマジで無理だから。

最近、世の中物騒なことが多い。金持ちが強盗に急襲、

田舎でも高齢の家が狙われたりと、恐ろしい限りだ。

まぁ、ここは大丈夫と思うが…


指をさす方向にあった鎮痛剤シップを貼ってあげて、

何とか落ち着いたのか、おじさんは横になって休んでいる。

4月からの学校までのルートを確認しながら、暇つぶし

にゲームを立ち上げていた。

夕方になり、客の数人とも話をすることもあったが、

特に大きな問題もなく、レジ打ちまでこなした。


奥からようやくおじさんが出てきて声をかけてきた。

「すまなかったね、本当にありがとう」

そう声をかけられ、おれはまず自己紹介をしなければ

と慌てて挨拶をした。

「今日からお世話になる姫川夏樹ひめかわなつきです」

「おーっ、やっぱりなっちゃんか!!そうだと思ったんだ」

なんだ、わかってたのか…早く言ってよ。

事件か何かと思って焦ったじゃないの。

まぁ、昔はいつも色々釣り具や仕掛けについて質問しては

教えてもらってたっけ。恩を少しでも返さないとな。


両親の話によると、昔、漁協関係で住み込みで働いてた人に

貸していた空き家があるらしく、そこを貸してくれるようだ。

国内では家なき子になり下がったおれにはありがたい話。

まずはこの環境になれなければいけない。


カギを受け取り、ひととおりの説明を受け終わると、

今日の晩飯の算段を考えることにした。

そういえばみっくんはどこにいるのだろうか。

あの時みたいに話して、ボール蹴ったりできないかな。

懐かしい、積もる話をできたら嬉しい、そんなことを

思いつつ、久々の再開は少し恥ずかしい自分がいる。

まぁ、急がなくてもいいか。


何やら両親の話ではみっくんと通う学校は違うらしい。

高校だし、というかおれには無理な学校のようだ。

おれだってそれなりに勉強はできるほうだ。

そう自負しているのだが、相当に優秀なのだろうか。

そんなことを言われると負けん気が少しは起きる。


日本に残ると決めてからになったので、急遽試験を

受ける手配をしたのだが、今の学校に決まったのは

つい先月のこと。

サッカーはそれなりに強いらしい。一応、試験は

それなりにできたと思うし、クリアした(はず)。

県内では有数の進学校ではあるし、それなりに

自信もあるつもりだけど…

今日は牛丼でも食べてゆっくりしよう。

ひとり飯、最高だ。


至福の晩飯の後、親友の和也に連絡をしてみた。

サッカーで同じ高校に通うことになっている。

反応ないな、何してるんだあいつ。

そういえば、今日はOBとして中学校の練習に

参加するとか言っていたような。。。


山の方から出てきたので、海が見える景色が

地味にうれしい。波の音が聴こえてくる。

なんか、新しい生活って感じがしていいな。

明日は何をしようか。

そう思っていた矢先にスマホが震えた。

和也かずやだ。

変なスタンプ送ってきやがって。

なになに、明日サッカーに来ないかだって。

まぁ、時間を持て余してるし、別にいいんだけど。

ちょっと体がなまってるし、久々にいってみるか。

そう思って色々部屋の片づけに励む。


送っていた荷物もおじさんが部屋に入れてくれて

いたみたいだ。ありがとう、おじさん。

もう少し部屋をなんとかしたいが…

殺風景な部屋に明るさが欲しい。落ち着く空間に

したい。自室、いや、初めてのひとり暮らしの

スタートだからね。

明日また色々と買いにいくことにしよう。


風呂を沸かしてじっくり入る。なんだか今日は

疲れたな、、ぎっくり腰のおじさんに、店番に。

ちょっとしたアルバイトみたいな経験もできた。

ま、したことないんだけどね。


釣りもまた行きますか。せっかく海に近いんだし。

さて、高校に入ったら何しようか。

カフェのアルバイト店員なんかもいいのでは?

なんか楽しそうだし。サッカーをどうするかだな。

そんなことを考えながら、新居で過ごす初日の夜が

過ぎていった。


翌朝、サッカーの準備をしてグランドに向かう。

所属していたクラブチームの監督に挨拶をすませ、

和也かずやのいるところへ。

「久々だな、断るかと思ってたのに」

まぁ、ひまだし。しばらくボール蹴ってなかった

からな。だから一応来たんだけれど。

軽いボールタッチからパス回しをする。

あー、なんだかいいなこの感じ。

あの最後の大会からもう半年はたったな。

やっぱりサッカーをするのは楽しい。


サッカーをはじめたのは幼少期の頃。

ひたすらボールをマンションの建物の壁に向かって

ぶつけてたっけ。跡がつくのがちょっと楽しくて、

ってたぶん今でいうところの迷惑行為だった??

最初はどこまで高く蹴れるか、なんて和也と競い

合ったもんだ。

そう物思いにふけっているとボールをぶつけられた。

「さぼんなー」

くっそ、あいつマジで許さん。

和也のポジションはDF、センターバックだ。

守りのかなめ、コイツだからいつも安心して

後ろを任せられる。

そういう自分はオールラウンダー。

どのポジションだってこなせる器用貧乏。

キーパー退場、なんてアクシデントがあっても、

ゴールキーパーだってこなせる。

でも本職はボランチ。ゲームを作る起点になる、

そういう役割って結構気に入ってるんだよね。


ウォームアップからのゲームを30分×4セット

こなして軽く汗をかいたあと、休憩に入った。

まだまだやれるな、おれ。

「さっきのパス、絶妙だったな」

和也が話しかけてきた。

相手チームだっただけに裏を取って鼻を明かして

やった感じだ。ざまぁ。

こいつとプレーするのも久々だ。

なんせ急に進路変更というか再受験をする必要に

迫られたし、この数か月は残るか飛ぶかモヤモヤ

していた。

だから、こうしてボールを蹴るのは気分がいい。

「疲れたな。このあとちょっと甘いもんでも行くか」

「あぁ、別にいいけど。おまえホント好きだな」

和也は大の甘いもの好き。最近は和菓子がマイブーム

らしい。まったくもって聴きたくない、不要な情報だ。

「近くの商店街にいい和菓子屋さん見つけてよ」

仕方ないな、コイツ。まぁ、付き合ってやるか。


練習の後、話しながら商店街の道を歩く。

この商店街、昔行ったことのある思い出の場所だ。

なんか変わった絵本、買ってもらったっけな。

確かに一角に和菓子屋があったような…

和也によるとイートインできるらしい。

おれあんまり好きじゃないんだよな。

店の前には和栗モンブランが次々と絞り出される

様子が見れて、なかなかに面白い。

こういうのってアートだなって、ついつい時間を

忘れて見入ってしまう。


店に入ると店員さんに迎えられ、和也はバカみたいに

甘いあんこのパフェを注文するらしい。

コイツ、女子か。聞くとわらび餅がうまいらしい。

よし、これにしておこう。

店員さんがあったかいお茶と、和也が頼んだバカでかい

パフェ、それとおれのわらびもちを運んできてくれた。

疲れて下を向いていたおれに、店員さんが戸惑いながら

「黒蜜をかけますか?」と聞いてきた。

大丈夫です、と断るとそそくさと去っていった。

なんだ、きなこじゃダメだったか。

失礼だったかな。実は黒蜜が苦手だったりする。

甘すぎるのはあまり得意じゃない。

でかいパフェを食べ終わると和也は満足したようで、

解散の運びとなった。

昼からは部屋の整理と買い物しないとな。

少し疲れたけど、いい雰囲気の落ち着く店だった。

店員さんはなぜかその後もあまり顔を合わせてくれず、

なんか黒蜜を断って悪いことしたかなと思ったが、

また来たいなと思わせる、落ち着く店だった。


帰ったら残りの荷物整理しよう。

そう思いながら足早に家路についた。

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