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挿絵(By みてみん)

久々に戻ってきた。

やっぱ海の見えるところはいいなぁ。

この前までは山に囲まれて大自然だったが…

昔は砂浜で無邪気に裸足でボール蹴ってたっけ。


電車を降りると、海岸沿いの道を歩く。

いつの頃かな、まだ物心ついてない4歳くらい?

この街で生活していたことがあった。

親に聞いてないので少し記憶が曖昧だ。


おれの両親は、世にいう転勤族。

波止場から波止場、なんか別の意味に聞こえる?

かもしれないが、昔から引っ越しの連続だった。


おれが産まれたのはまた別の場所だった。

転々としているので、あまり記憶がないというか薄い。

産まれた赤ん坊の頃は別として、ここでは特に海で遊んだ

記憶が深い。釣り具屋がおれの思い出の場所(聖域)。

いや、ちょっと美化しすぎた。


転々として故郷をもたないおれが、ここにだけは思い入れ

が深いのは、『幼馴染』と言われるみっくんの存在だ。

同い年でよく遊んでいたみっくんとは釣り具屋の近所で

出会った。昔は親父が釣り具屋に行くこともあって、

付き添いで行っていたが、当時のおれはあまりに暇過ぎて

外で待つことが多くなっていた。

親父は道具にこだわるので長いんだ、これが。

そこで出会ったのがみっくんだ。


みっくんはいつも何か楽しげに白い紙に絵を描いていた。

最初は声をかけようか、迷ってやめていた。

あまりに真剣に描いているので、邪魔はしたくない、

それが本音。

集中力がすごいなって感心して見ていたものだ。


おれは絵を描くのが苦手。今も昔も変わりはない。

親戚からも画伯?(バカにされて)とか称される実力。

海の様子と船を描いた、みっくんの絵に見とれていた。

子ども心に無心にペンを走らすその姿に、無意識に憧れ

を抱いていたのかもしれない。


しばらくは店に寄った時にちらっと見かける程度だった。

いつも座って海を眺めている姿に惹かれ、次第に近くで

見るようになった。

たかだか4歳。なんといってもひま(自由)なのだ。

ただ見ていても退屈なので、当時のおれは浅はかながら

絵について質問してみたりもした。

とはいえ、お互いまだ幼いので芸術を語れるわけもなく、

ここの船の大きさは、とか色合いがどう、とかそんなこと

を話していた気がする。


いかんいかん。つい思い出話にふけってしまった。

うーん、さっきは苦戦した。

来月から通う学校の定期を買おうと思ったのだけど、

渡されていたカードを使うもIC定期?どう買って

どう載せるのか、なかなかに煩わしい。

なしでもいけるのか、そう思っていたのだが…

何か番号の入力になったので、かたまってしまった

かとICOKKAを新しく買ってまで発行した。

もしかして、しなくてもよかったのかな。

買ってから気づいたが、もう遅い。

まぁ、他で使えるしいいや。


手こずって時間を取られていたために、後ろからきた

欧州系の観光客ふたりに話しかけられる羽目に。

“Excuse me, I’d like to top up my card.”(観光客女性ふたり)

なになに、チャージしたいのね。

“Put your card here, press this button, and you’re good to go.”

“Thank you!”(観光客女性ふたり)

おれはよく人に話しかけられる。

英語はそんな得意じゃないけど、なんとか対応できた。

感謝されることは悪い気はしない。

円安のせいか、外国人が増えている。両親が何やらそんな

話をしていたが、その影響か、この街にもまばらに外国人

観光客の姿がちらほら伺える気がする。

異国の地だとちょっとしたことで気を病むもんな。

例えば定期の購入ひとつでも(機械音痴というなかれ)。


今なんでここにいるのか、それは両親の転勤である。

今回ばかりは付いていくことを諦めた。

幼い頃なら付いていかないなんて選択肢はなかった。

拒否権はないし、生きていく術がない。


今回はなんたってイギリスである。

英語だってままならないのに、

この年でなぜに英国に渡らなければならない。

クラスの友人には羨ましがられたが、なかなかに複雑な

心境だった。

サッカーをしているおれは、海外のスタジアムの雰囲気

そのままにサッカーの試合が観れる!!

一瞬、そんな誘惑に駆られたものの、我に返った。

実際に今もやっているサッカーで向こうのレベルに通用

するのだろうか。

これは転機かもしれない。そんなことも頭をよぎった。

ただ、自分の中にある熱が失われていた。

おれは表舞台にたって、輝ける器じゃない。

様々な思いが交錯する中、結局おれは残ることを選んだ。

両親はそんなおれに理解を示してくれた。


とはいっても、ひとりで生活できる能力も高くない。

程々に料理はできる、つもりだ。生活力、両親からすると

不安のようだ。あのこともあるのだろうが、心配をかけて

すまないとは思っている。

だからこそ、幼い頃に親しかった「みっくん」の実家近く

にある部屋が空いてるのでどうか、という提案をうちの

両親がもってきたので受け入れた、それが経緯。


昔住んでたとはいえ、過去の記憶過ぎておぼつかない。

もう12年前だもんな。この辺もだいぶ賑わってきた。

色んな店舗ができている。

そろそろかな。釣り具屋が見えてきた。

なんとなくこの辺の感じはおぼえている。

「あの看板変わらないな」

古びた感じだけど、色合いや歴史を感じさせる、味の

ある看板だ。聞いた話ではおじさんが自分でデザイン

をして検討に検討を重ねて(奥さんにボロカス叩かれ)

出来上がった名作なのだそうだ。

当時の名残を残しつつ、釣り具屋に入る。

気恥ずかしさを感じつつ、店の入り口のメロディ音が

鳴る。あれ、これ○ァミマじゃね??まぁ、いっか。

変なこだわり持ってたからな…

サッカーはしているが、たまに釣りもする。

なので、そこそこに釣り具もあさって買うこともある。

この前、釣りに行ったばかりだけど和也にだいぶ仕掛け

なくされたしな。あいつ急にきて忘れたとかでおれの

道具使いやがって。いつ返してくれるんだ。


そんなことを思いながら、針や重りの仕掛けを眺めて

いると奥に店員らしき人影が見えた。

おじさんだ。懐かしいな。声かけづれー。

どうしようか悩んだ末に、ひとまずは流すことにした。

何やら苦しんでいるような…気のせいか。

いや、気のせいじゃないな。

まずい。声かけるか。日寄ったおれは仕方なくおじさん

の元に向かった。

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