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17/20

暴走モード、ふたたび(カップルシート編)

なし崩し的に強制デートが課せられた土曜日。

レンカノ、ならぬレンカレとして少し身なりを

整えて待ち合わせの場所へ向かう。


実は咲良の仕事やら何やらですぐとはいかず、

約束した日の2か月もあとの土曜日となった。

本人も自分で言っておきながら、仕事が入って

なかなか時間が取れず、ブーブー言っていた。


こちらとしては、土曜と宣言された手前、

いつでもいける準備は整えていたのだが…

やや、拍子抜けといった感じだ。

何を言われるのかヒヤヒヤしながら過ごして

いたのであるが、その間に何か追及される

ことはなかった。

それが逆に不安を感じる結果となっている。


この前の夜のことがよみがえる。

ミクさんとの映画の後、探るような電話が入る。

最近のおれは、常に何者か監視(咲良)の目に

さらされている気分で、あらゆることに過敏に

なっていたような気がする。

油断は禁物、そんな言葉が頭をよぎる。


ミクさんと放課後デートならぬ、バイト後デート

を楽しく過ごしたあの日。

無意識に気分が高揚していたのか。

デート?とはいえ、いきなり恋人つなぎを求める

なんてぶっ飛んでやしませんか、ミクさん。

少し浮かれていたこともあったのかもしれない。

ドキドキしながら、帰り道を歩いていたのだが、

周囲の目も暗いので問題ないと踏んでいたのが

間違いだった。

誰が見ていたのだろうか。

コロッケ屋のおばちゃん?

いや、スポーツ用品店のおっちゃんか。

浮いた話はないのかね?とか、やたら気にかけて

くれていたとは思うが…

いずれにしても過ぎてしまったものは仕方ない。

咲良センサーに引っかかってしまったようだ。

なんと言い訳すればよいのだろうか。

いや、まて。

なぜおれが言い訳を並べる必要があるのだ。

否、後ろめたい気持ちなんてどこにもないはず。

胸に手を当て自分の気持ちを確かめる。

そんなバカなやり取りを脳内で繰り広げていたら、

約束の場所にかなり早く着いてしまった。


「時間までどうしようかなー」

アイツはいつも待ち合わせの時刻ギリギリだ。

期待は出来そうにないな…

仕方ない。もう少し気持ちを整理しておくか。

ひとりフラフラ待っていると、突如人影に囲まれた。

女性ふたりがこちらを見ている。

「…。何か御用でしょうか?」

「何してるの??」

「いや、人を待っててですね」

「あー、そうなんだー」

「よかったらさ、いっしょに遊ばない?私たちと」

どういうことだ、これは。

まさか、咲良のハニートラップでは!!?

いや、実は咲良の友達とか。はたまた逆ナンか…

和也ならコミュ力であっさりスルーか裁くのでは

と思いつつ、どうしたものか返答に困る。


1.はい、よろこんで

2.彼女いるんで

3.スルー

4.トイレ


よし、1にしよう。

「はい、よ…」

「ナツ、来たよ~~♪」

「「「??」」」

「1時間も早く来た、だと…?アイツが?」

そんなバカな。

遅刻かと思ってたくらいなのに。

そう思って振り向くと、怖いくらい笑顔の

咲良が立っていた。

仁王立ち、といっても問題ない。

なんだ、その笑顔は…見たことないぞ。

気持ち悪いと思っていたが、すぐさま人の囲みを

突破しておれの腕を取ると、両手でガッチリと

ホールドして立ち去っていった。

暇つぶしに会話でもしていようと思ったのに、

想定外の来襲に戸惑っていると、

「なんか、付いていこうとしてませんでした?」

「…いいえ。そんなことは」

抱きつかれた右腕がきしむ。

咲良さん、あざでも付きそうな強さですが?

「なにか問題でも?」

いろいろ当たってるし、問題はある気はするが、

今言える空気でもないような…ひとまず従う。

仕切り直して、「本日の担当、姫川夏樹です!」

「は?」

レンカレを気取ってみたが、不評のようだ。

これにてレンタル終了。

笑顔だったが、本日のご機嫌は斜め模様だ。

「今日は何の日でしょうか?」

おっと、いきなりテストがはじまった。

まずい。心当たりがない。

誕生日でもないし、何かの記念日?

いや、そんな日はない…はず。

考えを巡らす。もしや、デビュー記念日か?

「時間切れでーす♪」

じゃあ、聞くなよ。

雑な声で口だけドラムロールがはじまる。

「正解は、タピオカの300円サービスデーです!!」

知らんわ。帰ろうかな。

振り返って帰ろうとすると止められた。

「ちょい、ちょーーーい!!」

首がしまる。シャツを引っ張るでない。

「まだ契約の時間は終わってないよ」

あれ、レンカレ継続してたのか。

「さぁ、タピオカ行きますよ♪」

こいつ、タピオカ好き過ぎだろ。

もうブームは過ぎているというのに、何やら

この食感がたまらなく好きらしい。

仕方なく付いて行き、おれまでタピオカに

付き合わされる。甘いな~これ。


仕切り直して、今日は映画に行くらしい。

何かのあてつけにも取れなくないが、ここは

素直に従うことにする。

しかも恋愛ものって。どうみてもあれですよね。

ポップコーンにジュースを買って、ひとまず咲良の

取った座席へと向かう。

飲み物はいらないと言っていたが、ポップコーンを

食べたら喉が渇く。あとで喉乾いたとか言っても

知らねーからな。

「えーと、Jの12と。ん?何か変だな。まちがい?」

「いや、合ってるよ♪」

目の前に広がるのは広いソファのような席。

家のリビングで映画を観るような快適な空間。

この席、もしかして高いのでは?

普通の料金しか渡してないが、大丈夫なのか。

「これ、カップルシートなんだって」

「ぶふぉっ!?」

勢いよくジュースを吹き出してしまった…

なに目的?何の企みなの??

カップルシートなんて初めてなんですけど。

「なっちゃんの初めてもらうね♡」

いやいやいや、何故カップルシート。

しまった。ポップコーンとかを買いに行かせて、

こっちはいいからとか言っていたのはこのためか。

どこから突っ込んでいいのか困惑していると、

ソファの隣のスペースをぽんぽん叩く。

「膝枕、する?」

「いや、しないけど?」

「まぁまぁ、そう言いなさんな」

そう言うと信じがたい力でグイっと引きずられ、

また膝枕をさせられる羽目に…

なんだかデジャヴのような気分で、でも少し心地

よかったり。なんか罪悪感を感じてる自分がいる。

すぐに起き上がったのだが、今度は咲良がもたれ

かかって抱きついてきた。

「離れなさい、それは契約違反ですよ?」

「契約は塗り替えるためにあるのだよ、きみ」

「いや、ねーだろ!」

ドス黒く、都合の悪い事実のみが塗り潰された、

背徳の契約にしか見えない。

飲み物いらないとか言っておいて、結局のところ

ポップコーンをむしゃむしゃ食べながら、おれの

ジュースに手をかける咲良。

間接キスとか気にすることなく一気に飲み干し、

予想通りの残念な結果となった。

おもちゃにされた状態で映画を堪能された後、

ランチを食べにお店に向かう。

調べていたので、迷わずに行けそうだ。

最近は連続で恋愛ものを観ることになったせいか、

映画の余韻とかそんなものは一切感じない。

無機質だな、おれ。

そんなことを考えていると、ふいに隣の人と肩が

ぶつかった。

「あ、すみません。大丈夫ですか?」

そう声をかけて顔を見た瞬間、頭の中が真っ白に。

……。ミクさんではないですか。

なぜこんなところにいらっしゃるので。

「あ、なっちゃん。どうしたの?」

「あぁ、ランチを食べようとこの店で」

「そうなの??偶然だね!わたしも♪」

「えっ、この店で??」

「いっしょでもいいよね?」

「あ、いや。うーん」

「いいよ。わたしは別に」

おれの意志を消し去るかのごとく、横から力強い

声で言葉を遮って了承してきた。

これは何のランチ会なのだろうか…

出来れば今すぐ帰りたい。この人たち知り合い

だっけ?いや、まったく初顔合わせなのでは?

なのになぜ、ご一緒しようとするのだろう。

出来れば百合のごとくふたりでお話されては

いかがだろうか。

ふたりともビジュは人目を引く顔立ちなんだから。

そんなことをぐだくだ考えていると、

店内から3名様ですね!!と元気な声でこちらへ

どうぞとご案内された。

「3名様です!いらっしゃいませ~」

張り切る店員を横目に何か暗雲が漂うおれの心。

このあと何が待ち受けているのだろうか。

後半に続く…

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