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15/22

デートのお誘い

【夏樹の憂鬱】

今日は散々だった。初めてのバイトだったのに。

あのあと、実はミクさんといっしょに帰ることに

なったんだけど、少し不機嫌な様子だったな。

咲良のあほな対応がイラつかせたのかもしれない。

アイツらはほんとに迷惑なやつだ。

二度と来ないで欲しい。


というか、この体験バイトはまだ続くのだろうか。

和也のお姉さんには、

「次は木曜にお願いねっ♪」とか言われたが、

だれも継続するなんて言ってないぞ。

ミクさんも乗り気で「わたしがついてるから大丈夫」

とかそんな調子のいいことを言っていたような…

他のバイトもやってみたかったのにな。

なんてこった。体験じゃなく、拘束されているぞ。

今はどこでも人出不足。猫の手でも借りたい、

そんな怨嗟の声が蔓延している。

「このまま和菓子屋に取り込まれる未来とか…」

正直、今のところ将来何がしたいなんて明確に

思い描けている訳でもないし、いろんなことを

経験しながら、自分なりに道を見つけていきたい。

今日は疲れたし、さっさと風呂に入って寝よう。


【美空の独り言】

今日は和菓子屋のバイトだった。

沙耶姉さんから体験バイトの手伝いをしてって

言うから、先輩として立派に努めないと、そう

思って意気込んで準備もしてお店に向かったは

いいけれど…

まさかなっちゃんが体験バイトの相手だなんて。

ほんとビックリ。ううん、これは運命かも。

朝の通学も板についていたし、もう少し関係を

深めていこうかと思った矢先の出来事であった

だけに、嬉しくてつい鼻歌を歌いながら仕事して

しまった。大きくなってからは何か「共同作業」

なんてすることはまだなかったけど、

これはお仕事だから…しょうがないよね?

いっしょにテーブルをバッシングしたり、奥に

ある道具を出すのを手伝ってもらって狭い中で

少しからだが触れ合ったりして…

次のバイトの時はどう触れ合っていこうかと

考えてみたりしている自分がいる。

はー、楽しみだな。

それはさておき、思わぬ客が舞い込んできた。

あの女、ストーカーか。なぜ体験バイトの日

を知って客として忍び込んでいたのか。

沙耶姉さんの弟(和也くん)がどうも情報を

横流ししているらしい。

なっちゃんの親友がゆえに厄介だ。

あそこをなんとか抑えておかないと、今後の

動きに翻弄されてしまうかもしれない。

戦略の練り直しが必要なようだ。

そうだ、次の木曜はお母さんたちも出かける

って言ってたし、バイトのあとごはんでも

食べるって言うのはどうだろう。

映画とか行って、そのままディナーなんて

理想の流れかも。これはデートだね♪

次の行動が決まった。早速、RHINEで

お出かけのお誘いをしてみよう。


【咲良の戯言】

はぁー、今日はなっちゃんの初バイト姿見れた!

素敵だった。和菓子屋とはまたおつだねぇ。

今日はレッスンもなかったので、かずくんにお金を

ちらつかせて情報提供を依頼したのが正解だった。

エプロンではあったものの、初々しい姿が拝めたの

だから。もちろん、激写(16連写)。

本人の知らぬところで隠し撮り済である。

何やら朝の女子といっしょにバイトに励んでいたが、

どういう風の吹き回しか。

朝のもたれかかりから、何か付き合いたての彼氏彼女

みたいな空気感出しちゃって。

まったくもって納得いかない。

急にしゃしゃり出てきたって、こちとら幼馴染として

のプライドがある。

わたしのなっちゃんは誰にも渡さない。

今度またバイトに入ることはあるのか。

情報を得たらまた抑えておかないと、またあの女狐

がわたしの将来の旦那様を狙うかもしれない。

わたしとの約束、覚えてるよね。

絶対守ってもらうんだから。


【体験バイト2日目】

だれもOKなんて言ってないはずだが、今日は

和菓子屋バイトの日だ。

和也のお姉さんは何を企んでいる?

なんか「にひひひ」って笑ってたし、何かしら

考えているとしか思えない。

昔からあんな感じの時は裏があるのだ。

にしても、今日は3時間くらいだ。

無難に過ぎればよいのだが…

昨日のRHINEを思い出す。

今日の夜はミクさんの家族はお付き合いで

外食らしい。そのため、バイト終わりに

どこかいっしょに出かけて、ごはんでも

食べないか?とのことだ。

断る理由もないので、OKのスタンプを送る

と「スタンプ(楽しみ♪)」の嬉しそうな

やつが送られてきた。

なんだか自分もうれしくなって、スタンプ

を送り返したが、少し気恥ずかしさを覚え

つつ、寝落ちしてしまった。


ミクさんは、そのあと何の映画に行くかを

相談したかったらしく、返信がなくなった

ことでご立腹。

朝にぷんすかしながら話すのを聞きつつ、

ご機嫌をなだめながら映画の話の続きを

することになった。

アクション、ホラー、恋愛もの、今やって

いるのはそのあたり。

ホラーは問題外らしく、あとは残りのどちら

にするか話し合いの結果、ミクさんがご希望

の恋愛もので決定した。

とはいえ、まずはその前に体験バイト2日目

をこなさなければならない。

簡単な作業は、持ち前の運動神経もあってか

何となく体に馴染んできてフットワークよく

行えた。あとは運搬作業など体力仕事もあり、

ひとりで出来そうな感じもしたが、ミクさんは

ふたりで運ぶと譲らなかった。

そのため、今日もまた狭い場所をふたりで運ぶ。

途中、持っているお互いの手が当たるので、

その点は申し訳ない。

そんなことを思っているが、ミクさんは気付いて

いるのかいないのか、それとも集中しているので、

意外とそんなこと気にならないのかもしれない。

たまにお客さんに話しかけられることも増えた。

同じ学校の女生徒が話しかけてきて、なんだか

話の流れでRHINEを交換してとなってしまい、

どうしたものかと戸惑っていると、ミクさんが

やってきてお断りを入れてくれていた。

なんか申し訳ない。教育係の仕事、増やして

しまってるな…


そんなこんなで体験バイト2日目も終わり、

ごはんを食べた後、映画を観に行くことに。

食後なので寝てしまいそうになるが、そんな

ことはミクさんも許してくれないようで、

絶対起きてなきゃダメだよと念を押された。

暗いしなんだか不安だと言うので、なぜか

隣の席で手をつなぐよう強制された。

ホラーでもないのに、この必要はあったの

だろうか…

手汗が気になるおれを知ってか知らずか、

ミクさんは画面に集中していた。

恋愛ものって何か冷めた感じで見ちゃう

んだよな。感動ものにはめっきり弱いが、

わざとらしさ全開のものは耐えがたい時

がある。いわゆる外れ作品だ。

今回は主人公とヒロインが幼馴染の設定。

ふとしたきっかけで離れていたものが再会。

その後、恋仲になるというラブストーリー

だった。なんかうちらの状況に似てるような…

いや、考えすぎか。

緊張のシーンとかもあって、ふいに手に力が

入ってしまうこともあった。

なぜかつないだ手がそのまま恋人つなぎに

変わり、ミクさんは終わった後もしばらく

手を離してくれなかった…

ちょっと恥ずかしかったので、手汗がと

言うと「大丈夫」と返された。

おれの感情はいずこへ…

ごはんも食べて映画も観たし、まるで

デートのような1日だった。

ん?あれ、これデートだったのか?

ごはんに行こうと誘われただけだと思って

いたのだけど、いつの間にかそんな感じに

なってしまっていた。

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