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死霊術士は生き還る  作者: ク抹茶
操り人形編
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六十二話 森の遺跡

 目が覚めると部屋の中は薄暗く、窓から見える空には日が昇っていなかった。昨日早めに寝た為か、夜中に起きてしまったのだろうかと思ったが、しかし外を見ると徐々に明るくなっていくのが分かることから、どうやら早起きをしてしまったのだろう。

 私はまだボウッとするまま上半身を起き上がらせると、隣を見てアンナが寝ている事を確認した。早起きをしたのはいいけど、今は何時くらいだろうか。

 そう考えようとしたが、やはり眠気が上回りまともに頭が動かなかった。

 そして起き上がった上半身をもう一度ベッドに横たわらせると、もう少しだけ眠っていようと目を閉じた。


 起きてから少し経つが、段々目が覚め始めているせいか私は眠れていなかった。


 どうしようか………暇だな。


 外は先程より明るくなっているが、まだ日は見えない。アンナやエレノアも起きてはいなかった。

 私は自分が早起きした理由について、どうでもいい事だけど考えていた。遠足に行く前日のように張り切っていたのだろうか。しかしそれにしても早く起きすぎて暇だ。夜更かしは何度かしたことがあるけど、その時はスマホや漫画なんかを見て暇を潰せる。それがこの世界にはないのだから、この時間がとても長く感じてしまう。

 そんな事を考えていると、ふと疑問に思うことがあった。それはエレノアが寝ているのかどうかということ。


(ノッ………)


 エレノアに話しかけようとした私は、本当に寝ているのなら申し訳ないと思い途中で止めた。

 しかし疑問はもう一つ増えてしまった。エレノアは私の中にいるとはいうが、それはそのままの意味なのだろうか。中、とは霊体の中という意味だろうか。けど怪物と戦った時に何度も霊体を壊されたことからそうではないのかもしれない。それならもう一つの霊体というやつだろうか。


(おはようございます)

(あ、おはよう)


 するとエレノアが起きて挨拶をして、考え事をしていた私は慌ててそれに返した。

 外を見てみるといつの間にか明るくなっている。時間というのは意識すれば長いけど、気にしなければ一瞬で過ぎていくものだと思った。

 私は身体を起こしてベッドから降りると、軽く背伸びをしながら息を深く吸うと、思いっきり吐いて気合いを入れた。


「うう、ユウカ……様………」

「ん?」

「………エヘヘ」

「……」


 なにやら変な寝言を呟いたアンナの夢の内容が気がかりだったけど、それは見なかったことにした。

 私は頭蓋骨を揺すりながら声を掛けて起こすと、アンナは突然浮遊して目を覚まし、


「おはようございます! 今日は、今日こそは頑張ります!」


 とても大きな声でそう言った。朝早くということもあり「シーッ」と咄嗟に静かしにするよう言うと、アンナは慌てた様子で謝って静かになった。


「えっと、それじゃあどうする? もう行く?」

「私はいつでも構いません」

(私もです)


 少し早い気もしたが、二人の準備は出来ていた。

 私は早いに越したことはないと思い、遺跡のある森へ出発することにした。


「じゃあ行こう」


 私は部屋の窓を開けると、そこから浮遊して外に出た。

 アンナも浮遊して外に出ると、私は窓を閉めて高い高度まで飛んでいき、アンナもそれに続いた。私は神都を出るまでの間出来るだけ高く飛んだ。それはアンナが人目につかないようにする為だった。


 神都を出てから数時間もすると、ようやく森が見えてきた。前に来たのは人形の体があった時だったけど、その時よりも早く着いたと思う。飛んでいるので当たり前だけど。しかし、物に触れられる程にまで霊体に魔力を送るとやはり風の抵抗なんかがあったりして最初は鬱陶しかった。けれど途中からは霊体へ使う魔力を抑えて飛行した為、抵抗は全く無くなった。


 私たちは森の真上まで来ると、取り敢えず遺跡を探すために森の中に入った。


「さてと、どこにあるのかな?」

「手分けしますか?」


 手分けか………確かに効率は良いかもしれない。けどはぐれたらそもそも意味がないようにも思う。連絡手段は無いし、待ち合わせしようにも適切な場所が思い当たらないし。


「いや、一緒に探そう」

「分かりました!」


 アンナはそう言うと私からそれ程離れていない距離で遺跡の探索を始めた。張り切っているのが一目で分かるほど頭蓋骨をあっちこっちに向けている。


 ……………骸骨さん、どうやってみてるんだろう? 目玉はついていないけど………。


「私も探そう……」


 私もアンナとともに森をくまなく見渡した。


 最初に入った遺跡から考えるに、空いた穴の下に遺跡があるのではないだろうか。けどこんな広大な森、一日でいくつ見つけらるか。流石に短い距離には無いだろうし………。


 それから数時間探し続け、


「あ………」


 私は遺跡を見つけることが出来た。

 しかしその遺跡は最初に見つけた遺跡と違い、入口が地表に露出していた。


(石造りで、所々壁に模様があって…………最初に見た遺跡と似ているけど、まさか普通に出てるなんて……)

(ま、まあ見つかったことですし、良かったではないですか)


 真剣に地面を見つめ過ぎて疲れていた私は小さなため息をついた。

 しかしようやく見つけた遺跡に気合いが溢れ、すぐに元気を取り戻すと遺跡に近寄った。


「よし………二人とも、準備はできてるね」

(できています)

「はい、もちろん!」


 私はその返事に頷くと、アンナの出した炎の光を頼りに真っ暗な遺跡の奥へと入っていった。


 遺跡に入ってすぐ、アンデッドは襲い掛かってきた。

 その数は意外に多く、先へと続く通路はアンデッドに埋め尽くされている。こいつらは昼も夜も関係なしに生み出されているのだろうが、きっと日が出ている今の時間帯はこうしてずっとここに留まっているのだろう。

 そんな事を考えながら、私はアンデッドを攻撃するために人間のスケルトンを召喚し続けた。


「これで倒せるのかな………」


 神都に攻め込んできたアンデッドから考えると、召喚したスケルトンでは歯が立たない。それなら霊体を造り出すだけだけど。

 しかしそれはどうやら大丈夫だったようで、スケルトンでも十分に戦えるようだった。

 私が召喚しているスケルトンは次々にアンデッドを倒していき、私たちはどんどん遺跡の奥へ進んでいった。


 遺跡の地下二階まで来るとアンデッドの数は極端に減り、逆に私の周りにはスケルトンが溢れかえっていた。

 地下に来るまでの途中、何度かアンデッドの発生源である場所を見つけた。その場所のあちこちをスケルトンで破壊して回ると、地面に赤く光る石が埋まっているのを見つけ、私はそれを破壊した。するとアンデッドの出現が止まった為、その場所を見つけてはその石を壊している。

 そうして私たちの目の前には二メートル程の閉まった扉があった。


「これは………」


 どう考えても、ここは遺跡の主がいる部屋だというのは分かる。それは前に見た遺跡と似ているのもあるが、何よりこの雰囲気がそうとしか思えないのもある。

 私はその扉に近づき両方の取っ手を片手ずつ掴むと、浮遊しながら後ろに引っ張った。


「あ、あれ?」


 しかしその扉はかたく、引くたびに少し動いてはいるが開けられない状態だった。

 私は浮遊しているから引く力が弱いのだと思い、地面に足をつけて扉を思いっきり引いた。


「うう………クッ………うわ!」


 すると扉は急に開き、私はその所為で後ろに転んでしまった。


(だ、大丈夫ですか!?)

(う、うん…………ちょっと手と背中が痛いけど大丈夫)


 ちょっとした無様を晒して恥ずかしいと思いつつも、気を取り直して立ち上がり扉の中を覗いた。


「…………誰も、いない?」


 そこは以前の遺跡のように待ち構える主の姿はなく、静かで誰もいない部屋だった。

 私は恐る恐る部屋の中に入り周りを見回すが、やはりどこにも誰もいない。ここの遺跡には主がいないのだろうかと考えたが、エレノアがアンデッドやらを生み出すには主の力が必要だと言ったことを思い出し、それなら何故だろうと考えた。


「ユウカ様、これを……」


 アンナは近くにある石でできた椅子の近くでそう言った。

 私は歩いてそこへ向かうと、その椅子には頭蓋骨が一つちょこんと置かれていた。

 アンナにそっくりと思いつつそれを手に取ると、


「これがどうかしたの?」


 そう聞いた。周りにも骨が散らばっていた為、それ程不思議ではなかったからだ。


「生き物……というか、意識がある者には必ず魂があります。さっきのアンデッドだってそうです。そしてもし、この頭蓋に魂があったとしたら、どうでしょうか?」

「……………あ」

「はい、魂があるということは、これがここの主ということになるかもしれません」


 私はその言葉を聞いて驚きながらも、冷静になり魔眼を使って頭蓋骨を見た。

 するとアンナの言ったとおり、この頭蓋骨には魂があった。

 私はその頭蓋骨を投げ、近くにいたスケルトンのうち一体に攻撃するよう命令した。

 スケルトンは頭蓋骨の元まで走って向かうと、それが地面に落ちた瞬間に拳を叩きつけて壊した。

 その間も私は魔眼で頭蓋骨の様子を伺ったが、抵抗はせずに壊れたあと霊体も消えた。


「……何も、してこない」

(何故でしょうか?)

「ウゥン………………うわ!!」


 私が悩んでいると突然大きな音が鳴り、天井が次々に落ちてきた。

 何事かと上を見上げると、段々遺跡が崩れていくのがすぐに分かった。


「これって……ッ!」


 驚いている間にも遺跡は壊れ続け、落ちてきた天井は私に当たりそうになるがこれを避けるのは難しかった。しかし私は物に触れらるから落石にも当たってしまうけど、魔力を調節すれば何のことはない。けれどアンナだけは霊体ではないので、こんな事はできない。

 私はアンナを掴むと、ミノタウロスの霊体を複数召喚した。

 そして私の上で浮遊させると、それを盾にして真上へ飛んだ。


 なんとか遺跡の崩壊から逃げ出すことができた私たちは、そこから少し離れた場所で崩れた遺跡を見ていた。


「大丈夫だった?」

「はい、助けて頂いて感謝します!」


 ふう………危なかった。頭蓋骨が壊れてしまったら骸骨さんはどうなるのだろう? さっきの奴みたいに消えてしまうのだろうか…………?


 遺跡の破壊を見ていた私は、そういえば前の遺跡でもこうなったことを思い出した。そして主を倒したあとの脱出方法はさっきので良いのだろうかと考えた。しかしアンナを遺跡の中に入らせないようにしようとも考えたが、それはそれで可哀想なのでさっきの方法でいくことにした。


 それにしても、この調子じゃもう一つ見つける時には日が暮れている。どうにかしてもっと楽にできないだろうか。何か目印でもあれば…………ん、目印? もしかしたら……。


 私は思いついたように魔眼を使って近くから遠くまで見回した。

 すると思っていたとおり、遠くにいくつか小さい魔力が見えた。

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