四十四話 綺麗な光
昼間のゴブリン討伐に行った帰りにソフィアが母親に追いかけ回されたりと今日は色々あった。
ゴブリンはもう暫くは見なくていいと思った。
神殿に戻った時には日も落ちていて、その後はソフィアと別れて部屋に戻った。
そして今はベッドで三人横になっている。
部屋の明かりは消えていて、辺りは暗い。
けれど夜空の星々のお陰で真っ暗闇という訳ではなかった。
三人で横になっているといっても、私はまだ寝ていない。
というより、なぜか今夜は眠れない。
色々あって疲れている筈なのに、眠気を一切感じない。
なんでだろう?
「ユウカ、起きていますか?」
そんな事を考えていると、横にいるエレノアが私にそう囁いた。
「うん、起きてる。
というか全然眠れない」
なんだろう、何か聞きたいことでもあるのかな?
まあでもノアとは最近話せてなかったし、丁度いいか。
「ユウカ、ソフィアさんに頼まれた件覚えていますか?」
「えっと、もしかして遺跡の破壊ってやつ?」
「はい、それです。
それを明日やりませんか?」
遺跡の話しだったのか。
でもなんで急に?
まあ私もいつやろうか悩んでたけど………ノアがそういうなら明日行こうかな。
「分かった。
明日ね」
「はい」
破壊できるかどうか分からないけど。
前に入った遺跡みたいな感じだったら外から壊したって意味ないしな。
あ、でもミノタウロスなら破壊力もあるしいけるかも。
遺跡を造った人には申し訳ないけど、ゲームじゃないから楽な方でやっても良いよね。
「ユウカ」
するとまたエレノアが私の名前を呼んだ。
話をしたいとは思っていたけど、今日はやけに積極的だ。
「ユウカは私の事どう思っていますか?」
予想外な問い掛けに私は少し驚いた。
どう思っているか?
なんで急にそんな質問を?
今日のノアは少しおかしい。
というかこの質問って彼女が彼氏に聞くみたいな内容だよね。
ハッ! もしかしてノア私の事………いや今は冗談はよそう。
「私はノアの事頼りになると思ってるよ」
「本当ですか?
その割には骸骨さんの事を頼っている様に思いますが……」
え、もしかしてノア嫉妬してた?
今の言葉ってそういう事思ってるって事だよね……。
でもノアがそんな事を考えていたとしたら、悲しい思いをさせたかも。
もっとノアに構ってあげればよかった。
思い返してみれば骸骨さんは間接的にだけど、ノアの両親を殺した様なものだし。
あの魔石を売りに行ったのはノアのお父さんだったけど………あ、そういえばカーラの予言がどうこうって言ってた……………様な?
うう、なんか最近忘れっぽくなってるな。
私ってこんなに記憶力無かったっけ?
すると突然視界が一瞬真っ暗になった。
私は突然暗くなって驚いたが、それは一瞬の出来事だったので瞬きだと思った。
だが少し考えて、この世界に来てから瞬きをしていなかった事に気が付いた。
すると今の瞬きに物凄く違和感を感じる様になった。
「ユウカ?」
「ん、何?」
「私の質問に答えて下さい。
どうなんですか?」
エレノアは少し急かす様にそう言った。
だが私にはそれがなんの事を言っているのか分からなかった。
「…………質問ってなんだっけ?」
「なッ! もういいです!」
私がそういうとエレノアは怒ってそう言った。
そして私にそっぽを向いた。
私が話しかけても、狸寝入りをしてそれ以上話す事はなかった。
私はというとその後も眠れずに、結局朝を迎えてしまった。
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次の日の朝。
まだエレノアは不機嫌そうだった。
「おはよう」と言っても返事はせず、分かりやすく私と顔を合わせようとしなかった。
アンナはそれを黙って見ていた。
「おはよう三人とも!」
するとソフィアが豪快に部屋の扉を開けて入ってきた。
私は入ってきたソフィアの顔を見て驚いた。
少し腫れた左頬。
目の下には涙の跡があった。
「そ、その顔大丈夫ですか!?」
「ああこれ?
いやァ昨日はあれから大変だったわよ。
夜通し説教で途中平手打ちをくらっちゃって。
若い頃は避けられたんだけれど………ふ、衰えたわね」
ソフィアはそう言って左頬を手で押さえた。
本当に大丈夫だろうか。
ソフィアのお母さん、そこまで怒らなくてもいいと思うけど。
ゴブリンの巣穴に行ったのがまずかったのか、それともソフィアの身代わりソフィが駄目だったのか。
………どっちだろう?
「お母さん、そんなに厳しいんですか?」
「ウゥン、どうかしら?
他の親を知らないし。
それに平手打ちは私の所為だし。
はあ………人形を精巧に作り過ぎて本当に私に何かあったのかって思ったらしい。
次はもっと上手くやるわ」
ソフィアは張り切りながら拳を強く握った。
私は思った。
全面的にソフィアが悪いと。
「それでユウカさん。
今日はどこへ行く?」
「え…………!
い、いえ今日は遺跡の破壊をしに行こうかと」
ま、まずい。
このままじゃ昨日みたいな事になりかねない。
それに全然この人懲りてない。
次は右の頬にビンタされるかもしれないのに。
何とかして切り抜けなければ!
「………そう?
それならしょうがないわね。
三人とも気をつけていってらっしゃい」
「え……あ、はい」
ソフィアは意外に早く納得した。
私はそれに少し驚いた。
だが同時に良かったと安堵した。
それから私達は神都を出て森へと向かった。
勿論馬車や人通りのある道からは外れ、ウルフのスケルトンで草原を走っている。
エレノアは私の前に乗っている。
だが相変わらず不機嫌そうだ。
アンナはというとウルフの先を浮遊している。
頭だけだからか、速度も速い。
遺跡のある森は相当大きい。
ロペルの町の近くにもあったが、神都からも数時間で行ける距離だ。
だが一日で帰ってくるのは難しいらしいので、遺跡の破壊後は一回野宿する事にした。
「ユウカ様、森が見えてきました」
私はアンナにそう言われて遠くを見ると、そこには背の高い木々がある一帯が広がっていた。
あれから数日しか経っていないのに、少しだけ懐かしいと思った。
いや、ノアの記憶を見ていた時間がそういえばあったんだった。
だからかな?
そしてウルフに乗ったまま私達は森の中に入った。
人間のスケルトンで森の中を走り回るのは少し大変だったけど、ウルフなら木々の隙間を素早くすり抜けていける。
「ん!」
暫く走っていると私の視界はまた夜中の時と同様に一瞬だけ暗くなった。
私は思わずウルフの足を止めた。
「ユウカ様、どうかしましたか?」
「………いや、なんでもない。
ごめんごめん。
先を急ごう。」
夜と同じ感じ。
だけど気のせいかもしれない。
私はそう思った。
そして木の葉が目の前を通り過ぎただけという事で納得した。
その後暫く走っていると、目の前の木に気が付かずに衝突してしまった。
この時あまり速度は出ていなかった為、ウルフからは落ちずにすんだ。
「ユウカ様!」
「ユウカ………?
随分と落ち着いていますが大丈夫なのですか?」
「……………うん」
私は急な出来事にも関わらず落ち着いていた。
そんな私をエレノアは心配そうな顔で見ていた。
落ち着いている。
そんな言葉に少しだけ疑問を持った。
どちらかというと私は呆けている感じがしたからだ。
例えるなら寝起きの時の様な。
でもそれとも違う気もする。
昨日から………というより神都に来てから私は変だ。
忘れっぽくなったり、今だって。
これはあのキラキラした光が原因だろうか?
神都の中にずっとある光。
「もしかして夜の時みたいに私を揶揄っているのですか?
………………ユウカ?」
「……うん」
エレノアは段々不安になってきた。
ユウカの反応が鈍くなり、声もどこか弱々しい。
「なぁんか音がしたと思ったら。
これって運命かねェ」
すると突然木の影から男が現れて意味深な言葉を呟いた。
それを聞いた三人は声の方を見る。
そこにいたのは眼帯の男。
私はその男を知っている様な気がした。
「お、お前は………!」
すると突然エレノアが聞いたこともない声と見たこともない形相でその男を睨みつけた。
「いやァまさかこんなに早く会えるとはな。
体格も顔も変わってはいるが、俺は騙されねえぞ。
その眼。
その片方色が違う眼がしょう……………」
すると段々その男の声が遠く感じ始めた。
それだけでは無く視界も遠く感じる。
いや、暗くなっていく。
周りが段々と………。
そして遂に辺りは真っ暗闇に包まれた。
私は何も見えなくなっても動揺しなかった。
ただ目の前の光景を見つめているだけ。
するといつの間にか目の前に一つの光がある事に気がついた。
綺麗な光。
ただ光るだけでは無く虹色に見えた。
今まで見てきた丸い魂とは少し違う。
色も、形も……。
球体に近い気はするけどそうじゃない気もする。
この光は一体なんだろう?
触れられるのかな?
私はふと気になりその光に近づいた。
だがもう少しの所で見えない壁に阻まれた。
見えないのにそこにある壁は、触れたこの無い感触だ。
ん、感触?
おかしい。
私はこの世界に来てから痛みとかがなくなってる。
それなのに今はそれを感じている。
……………まあ、いいか。
今はそれよりもあの光に触れてみたい。
そして私は光を見る。
けれどいつの間にかその光は私から離れていた。
私はもう一度その光に近づく。
そして触れてみる。
やはりそこには壁があった。
でもこの壁は意外と脆いかもしれない。
叩けば壊せるかもしれない。
一度軽く小突いてみようか。
私は 右手を軽く握って目の前にある壁を2回ポンポンと叩いた。
すると二回目でその壁は呆気なく壊れた。
そうして出来た見えない穴に手を入れた。
入っていった手が光に触れている。
様に思えたが、その光に触れる事はできなかった。
だがその光は段々と光度を失っていき、最終的には消えて無くなってしまった。
その瞬間今まであった壁は無くなり、その場所はまた暗闇に包まれた。
ここはどこなのか?
今私はどうなっているのか?
そんな事を考える余裕が出来たと思った。
と、同時に何故か周りの暗闇が恐ろしくなった。
だがふと二つの光が目に入った。
その瞬間にとてつもない安堵感を私は感じた。
私はその光の元へ向かった。
だがその瞬間私の目は途方もない量の光を捉えた。
二つの光のさらに奥。
どれ程遠くにあるかは分からないけど、そこには多くの光が見える。
しかも放つ輝きはここにある光以上だ。
私は安堵を通り越した幸福感を感じた。
こんな感覚は初めてだった。
何故これ程までにあの光に固執するのか。
それはきっとこの何処までも続く暗闇の所為だ。
私はきっとこの暗闇が怖いんだ。
だから光を求めるんだ。
だけど今はそんな事どうでもいい。
それよりもあの光をもっと近くで感じたい。
そう思い一目散に光の元へ飛んでいく。
この時に今私は霊体になっている事に気が付いた。
多くに光がある場所の上空まで私は辿り着いた。
近くで見るとより一層綺麗に感じた。
どうしよう、もう一度この光に触れてみようか………?
いや、さっきみたいに消えてしまったら勿体ない。
ならこの光は眺めるだけにしよう。
そうすればずっと安心できる。
私はそう思い暫く眺めていた。
だがそのうちチラホラとここ一帯を離れていく光が見えた。
なんだろうこの光………?
そうして疑問に思っていると、段々不安になってきた。
もしかしたら時期にこの光はここを離れていってしまうのでは?
そんな疑問がふと思い浮かぶ。
それは嫌だと思った。
だから光が逃げない様にその周りを覆って出られない様にした。
でもこれは失敗だっかもしれない。
光は私に触れられない。
だからこれは無駄なのかもしれない。
だとすればどうしよう。
そう考えていると堰き止めている場所に光が集まっているのが見えた。
どうやら出れない様だった。
私は少し喜んだ。
これでもう大丈夫。
そう思った瞬間、目の前の光と意識が無くなった。
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「ふああ………」
目が覚めて私は大きなあくびをした。
いつもの天井。
いつもの部屋。
軽く背伸びをして窓の外を見る。
今日は気持ちのいい朝だ。
けれど私は壁に掛かった時計を見ていつもより遅く起きた事に気付く。
「………あ」
私の名前は秋山ユウカ。
今日から小学一年生。
だというのに寝坊して遅刻しかけている。
やっとユウカの過去を書けそうです。
最初から早く書かなければと思っていたのでようやくです。
まあでも二、三話後になりそうですが。
あれ、じゃあ最後の小学生の所要らなかったのでは……?




