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死霊術士は生き還る  作者: ク抹茶
カラクリ人形編
39/143

三十八話 ソフィア

 これが神殿の中かァ………。


 私達はソフィアともう一人の女性に神殿内を案内されていた。

 入って初めには広い空間に六体の石像が並べられた場所で、それぞれ特徴のある男女の像だった。

 男の像が二人、女の像が四人。

 どれも美しい造形であったが、特に目立っていたのは二体の隣り合った女の像で、他の像より精巧に出来ている気がした。

 間近で見てみたいと思ったが、二人は止まらずに先へ進んだ。


 途中何人かの人とすれ違い奇異の目で見られながら暫く進んでいると、扉の前で二人は立ち止まった。


「着いたわよ。

 ここが私の部屋」


 そうして案内された部屋に入ると、そこは豪華な椅子や寝具などの家具が置かれていた。

 だが何より目を引いたのは、細かな装飾を施され黄色や赤色といった光り輝く石がはめこまれた杖や槍などの武器が飾ってある場所だった。


 うわ高そうだな、アレ。

 というかやっぱり使徒だからかな?

 豪華な部屋だ………でもあの王様がいた部屋には劣るかな。

 まあ雰囲気もこことは全然違うけど。

 あの部屋は………あれ? どんな感じだったっけ?


「ほら、そこに突っ立ってないで座ったら?」


 ソフィアはいつの間にか椅子に座っており、もう一人の女性はその側に立っていた。

 そして私はソフィアが座っている椅子の隣に腰掛けた。


 そういえば私の体泥だらけだった。


「………あなた、警戒心とか余りないのね。

 まあ手っ取り早くて良いけど。

 ああ、それと骸骨さんも出てきて良いのよ?

 別に取って食おうと思っている訳ではないし」


 まだそれ程成長していない身体であるにも関わらず、それから漂う大人びた態度に違和感を感じていると、ローブの下からアンナが出てきた。


「そうは言われても私はあなたを信用していませんので」

「まあ、別に構わないけど」


 アンナが声色を変えながらそう言うと、ソフィアは不満そうにそう言い返した。


「それじゃあまず聞きたい」

「いえ、まず私から質問させて下さい」


 アンナはソフィアの言葉を遮ってそう言った。


 今日はいつになく強気だな、骸骨さん。

 敵対心持ってる感じするし。


「……分かった。

 答えられる事なら何でも……」

「何故、私達の事を知っていたんですか?」


 確かにそれは私も気になってた。

 推測では予言とかいうあの司教や骸骨さんが言っていた物の所為だと思うんだけど。


「それなら答えられる。

 あなた達の存在を知っていたのは主の予言を聞かされていたからよ」


 やっぱりか。

 まあ分かってはいたけど、そんなにピンポイントに私の周りの事だけ予言するってよく考えてみたらおかしいよね?

 ………いや、別に良いんだけど、骸骨さんの名前を知らなかったのは少し気掛かりなんだよね。

 というか今主って言った?

 主………と言ったら崇めてる神様?


「……主と言いましたね。

 先程は使徒とも………といことはあなたの主神は」

「ティアナ様よ。

 名前は聞いた事あるわよね?

 ……あなたが異世界人じゃなかったらの話だけど」


 あ、今異世界人って………やっぱり私が元いた世界の事知ってるんだ。

 でも予言って未来の出来事しか知れないよね?

 何で元の世界の事を………あと骸骨さんがこの世界の人間だって分からないのも変だし。


「何故私が異世界人だと思うんですか?」

「ただ確認しただけよ。

 ユウカさん以外に日本人がいるのかどうかを」


 あ、やっぱり私の事は知ってるんだ。

 はあ、プライベートが……。

 でも知ってるのは私だけみたい。


「………日本人」


 そういえば骸骨さんには私の元いた世界の事話してなかった。

 まあでも予言で知ってそうな感じはする。


「それでは私の事情は知らないと?」

「ええ、主が見た未来はロペルで冒険者をやっている三人の姿だから」

「………ロペルで。

 では何故ユウカ様を日本人だと思われたんですか?

 ロペルでの私達しか見ていないのならユウカ様が日本人だと分からないはずでは?」


 あ、確かに。

 あの町で私は一度も自分は日本人だ、なんて言ってない。


「ああ、だってそれを知ったのは予言じゃないから。

 ユウカさんが日本人だと分かったのは主のお力によるものなの。

 ……でも、異世界の住人ってだけじゃ会おうと思わなかったかも。

 私がユウカさんをこの神都に呼んだのは他でもない、私の母親が日本人だったからなの」


 ………ええ!

 ソフィアさんのお母さんって日本人だったの!

 ま、まあ思い返してみればロリコンなんて言葉を知っていた訳だし………。

 でも、だとするとソフィアさんのお母さんもこの世界に転生か召喚されてる事に。


「その人とは会えないの?」


 私は咄嗟にそう聞いた。


「ああ、残念ながらお母様はもうこの世界にいないの」

「そ、そうなんですか?」

「ええ………実は、魔術の試し打ちをしている時に誤ってその魔術が自分に当たって、死んじゃったの」


 …………え?

 魔術の試し打ちで死んじゃった?

 それはもうドジっ子の域を超えてるんじゃ。

 異世界に来て初めて元の世界の人と会えると思ったのに。


「まあ、お母様は少し……いえ、大分大雑把だったから。

 私もいつかはそうなるだろうと思っていたんだけどね」


 い、一体どんな人だったんだ。

 ………というか、ソフィアさんって意外と礼儀正しい感じが。

 ワガママって聞いていたから駄々をこねるお嬢様みたいなのを想像してたんだけど、そうじゃなくて良かった。


「その件に関しては分かりました。

 ですがどうにもあなたは信用できません」


 突然アンナがそういうと、ソフィアは困った表情をした。


「会いたかったのは何もそれだけではないでしょう。

 ユウカ様を厄介ごとに巻き込む訳にはいきませんので、もう帰らせて頂きます」

「え?」

「骸骨さん?」


 もう帰るの?

 まあ確かに長居するのは危ないだろうけど、もう少し話を聞きたい。


「ま、まあまあ待って下さい。

 私はただ純粋に会いたかっただけですよ」

「どうでしょうか?

 そう言ってユウカ様を騙して何がしたいんですか?」


 が、骸骨さんめっちゃ強気だな。

 ソフィアさんが大人びていたってまだ十五、六歳くらいだろうし、あまり虐めない方が……。


 そう思いソフィアの顔色を伺うと、余り機嫌の良さそうな表情をしていなかった。



「べ、別に何もしませんよ」

「口ではどうとでもいえますよね」

「私はそういう考えを持っていませんので、安心してくださ」

「はあ……だからそれも、口では」

「だ」


 アンナと言い争っているとソフィアは俯きながら、


「だからやらないって言ってるでしょ!」


 そう叫んだ。


「「え?」」

「私がへりくだってるからって………そもそも、何で私があんた達に手を出さなきゃいけないのよ!

 そんなのティアナ様に言われでもしなければ絶対にやらないから!」


 そしてその次に血相を変えて怒り始めた。


 え……怒ってる。

 さっきまであんなに穏やかだったのに凄い変わりよう。

 というかそのティアナ様に言われたらやるんだね。


「そ、その神に命令された可能性があるかもしれないでしょ!」


 怒るソフィアに負けじとアンナも大声でそう怒鳴った。


「そんな事ないわよ!

 大体何よその体は。

 頭だけじゃない!」

「なッ!

 この体はユウカ様の加護を受けているんですよ!

 それを侮辱しないで下さい!!

 それに私も言わせて貰いますけど、さっきからその喋り方が気に入らなかったんです。

 変に大人びていて、気持ち悪いです!」


 ………骸骨さん、その暴言は私にも当てはまるんだよ。

 いや、そうじゃなくて早く止めないと。

 どうにかして………ノアは何か。


 私がふとエレノアを見るといつでも対処できるように戦闘体制をとっていた。


 ノア!?

 どうしよう、早く止めないと戦いが始まってしまう!


「ま、まあ二人とも落ち着いて」

「ですが!」

「骸骨さん言い過ぎだよ。

 ソフィアさんはまだ子供なんだし、それくらいで」

「……す、すみません。

 反省します」


 アンナは私の言葉を聞くと反省して黙り込んだ。


「ちょっと待って下さい。

 私の話はまだ」

「ソフィア」


 口論を続けようとするソフィアに隣の女性がそう言った。

 するとソフィアは一瞬黙って、


「だ、だけど」

「黙りなさい」


 言い返そうとしたがまたもやその女性に威圧されて黙り込んでしまった。


 何だろう。

 てっきりあの人は召使いか何かかと思ってたけど、違うのかな?

 ……ソフィアさん、凄い不機嫌そうだな。


「ま、まあ悪いのはこちらですし、余り怒らないであげて下さい」

「そうですか?

 ですがこの子は怒り過ぎると魔術で攻撃する可能性がありますので」


 危な。

 ノアと同じような事しようとしてたじゃん。

 ……うん? この子は?


「ソフィア、骸骨さんに謝りなさい」

「いや」


 女性にそう言われたソフィアはそっぽを向いた


「いいですよ、そんな。

 謝るのはこちらの方ですし」


 なんか、何だろう。

 この状況は。


「す、すみませんソフィアさん」

「………いや、まあそこまで言うなら別に許してあげてもいいです」


 ふう、よかった。

 取り敢えず戦闘は防げたみたいだ。

 でも、先が思いやられるな。


「それにしても二人はどういう関係なんですか?」

「………この人は、私の母親なの」


 ………え?

 母親二人いるの?

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