三十七話 使徒
--ロペルの町-冒険者ギルド--
ユウカ達がロペルをたってから数日。
アウレリアというエルフの受付嬢が帰ってきた冒険者ギルドでの事。
受付にはアウレリアとケイティが二人、ギルド内には冒険者が数人。
テーブルにはミノタウロスを倒した三人が雑談をしていた。
「今日も来ねえな」
ニコラッドは相変わらず昼間から酒を飲んでいた。
「ミノの事か?
………確かに最近見かけないな。
どこかに冒険しに行ってるのか?」
ニコラッドの呟きにダニエルはそう返答した。
ダニエルもニコラッド同様に酒を飲んでいるが、彼ほど酔ってはいなかった。
「あら、二人とも知らなかったの?
あの子は神都に行ってるみたいよ」
エリザは二人とは違うテーブルに座って自分で討伐した依頼の品を確認していたり、ウルフの牙などの依頼品とは関係のない物も並べていた。
「なに?
あなた達寂しいの?」
すると突然受付からアウレリアが出てきて三人に話しかけてきた。
「寂しくはないが、少し気になってな。
ほら、だってあいつまだ子供だろ?」
「ああ、その子供にお前は五千もせびったんだよな?」
ニコラッドの心配を余所にダニエルは冗談半分にそう言った。
「そ、その話まだ引っ張るのかよ!
あれは正当な報酬だって言ってるだろ?」
「はいはい、報酬ね。
分かってる分かってる」
ムキになるニコラッドをダニエルは軽くあしらった。
それを見たニコラッドは不満そうな顔をして何かを言い掛けたが、喉まで出掛かった所で呑み込んだ。
「そういえば、アレについて何か知っているかしら?」
「アレってミノの事か……?
まあ、小さくて可愛いよな。
あとケイティから聞いたんだが、ミノがもう一人冒険者登録して欲しいって言ってたんだってな。
確か名前は………エレノアだったか?」
アウレリアがそう尋ねると、ニコラッドは疑問に思いながらそう返答した。
「小さくて可愛いって………お前まさかあんな小さい子が好みなのか?」
「は! ちげえよ!!
そういう意味じゃねえから!
……はあ、ただ単純にそう思っただけだっつの」
ニコラッドはダニエルの言葉に憤慨しながらそう言うと、落ち着いて否定した。
「大体俺はあんなガキよりも、清楚な感じの」
「はいはいそうですか」
ニコラッドがそう言いかけたと同時にダニエルは割り込んでその話を遮った。
それをアウレリアは冷ややかな目で見ていた。
「はあ………アレの顔が整っているのは人形だからよ。
体に触れれば分かるでしょ?
それに私が聞きたいのはあの目の事よ」
「目………?
ああ、確かに左右の色が違ったな」
「もしかして魔眼だったりしてな。
……ま、有り得ねえか」
二人はアウレリアの言った事に一瞬疑問を持ったが、あまり深く考えなかった。
「その話、詳しく聞かせてくれねえか?」
すると今まで近くのテーブルで酒を飲んでいた男が四人に話しかけてきた。
その声を聞いたダニエルとニコラッドがその男を見ると、そこそこ高そうな服を着ていて、顔をよく見ると片方の目を眼帯で覆い隠していた。
「誰だ?」
「あ、俺の名前か?
そうだな………ウルフとでも呼んでくれ」
ダニエルの問いに男はそう答えた。
それを聞いたニコラッドは少し不服そうな表情をした。
「まあ俺の名前は何でもいい。
それより、そのミノって子供の瞳の色を聞きたい」
「あ? 何でそんな事………まあ別にいいが。
片方は黄色で、もう片方は……ああ、丁度アンタに似た青色をしていたっけな」
ニコラッドはまだその男を疑っていたが、そのくらいなら問題ないだろうと思い男に教えた。
それを聞いた男は冒険者達の前で不敵な笑みを浮かべて見せた。
--神都ヘルサス-神殿前--
私達は馬車で門からどの建物よりも大きい神殿に連れてこられた。
そして神殿へと続くちょっとした階段の前で降ろされると、ここで待っているように言われ女性と馬車はどこかへ行ってしまった。
神殿の周りには杖を持った人や、あまり使われていないであろう綺麗な鎧を纏った騎士がいた。
その殆どの人達は白に近い服を着ていた。
「もしかして……あなたがユウカ?」
すると突然一人の女の子が階段の上から私にそう話しかけた。
背は今の私よりも高かったが、まだ大人には見えない。
銀髪の髪を風になびかせる彼女は周りの光と相まってとても眩かった。
「は、はい私がユウカです。
えっと……あなたは?」
「私の名前はソフィア。
あなたを送り届けた人から聞いてないかしら?
………私は使徒だって」
ソフィアがそう言った途端周りが徐々に騒がしくなった。
え、この人が使徒?
てっきり仙人みたいなのが出てくると思ったんだけど………随分若い、というかまだ子供なんじゃ。
「やっと会えたわね。
結構心待ちにしていたのよ」
「は、はあ………」
ソフィアはそういうと一段一段階段を降りていき私の目の前に立った。
「ねえ。
一つ、あなたに聞きたいことがあるの。
……良いかしら?」
「はい、何ですか?」
何だろう、聞きたい事って?
もしかしてオルドムみたいに神の敵がどうとか言われるんじゃ……。
「ロリコンって………何?」
「……へ?」
その瞬間私は思考が停止し、ソフィアが何を言っているのか理解できなかった。
だが直ぐに我に返って状況を理解し焦った。
「ななな何を!??」
「ん?
何でそんなに動揺してるの?
お母様がこの言葉を使っていたからどういう意味か尋ねたら、あなたに聞いてみなさいと言われたんだけど………そんなに動揺する程言っちゃいけない言葉だったかしら?」
この子のお母様何でそんな言葉使ってんの!?
しかも子供の前で……。
そして説明が難しいからって私になすりつけないでよ!!
「えっと、それは………」
何て言えば良いの?
真っ正直に女児が好きな人だって答えればいいのかな?
ここは上手く誤魔化して………いや、嘘を付くのは余り良くないかな。
うん、出来るだけ直接的な言葉を使わずに説明しよう。
「簡単に言うと、小さな女の子が好きな人………かな?」
こ、これでどうだ!
出来るだけ分かりやすく教えられたと思うけど……。
「………それってつまり、我が子を愛し育てる親ってことかしら?
だとしたら……お母様はロリコンじゃないわね」
「え、いやそうじゃなくて……」
「え? 違ったの?」
うう、どうしたら良いんだ。
元の世界にいた頃は日本の性教育は遅れてるなんてネットを見ながら思ってたけど、実際に教える側に立つとどう話して良いか分からなくなるな。
ウゥン………ソフィアさんのお母様は意外と厳しかったり?
「親子の関係じゃなくて、何というか………恋人?
的な感じかな?」
「………子供に性的な感情を抱いてるの?
あなた」
「うんうんそ……え?」
ソフィアさん今私をロリコン扱いしなかった?
「ロリコンじゃないの?」
「え、私が?
いやいや何で!?」
「……お母様がそう言っていたから」
お母様ァ!!
ロリコンの説明をしたっていうのに、その仕打ちがこれって……。
というか、私何やってるんだろ。
「もしかして、違うの?」
「全然違いますから。
そして私がロリコンだとするとレズビアンも一緒に付いてくるから」
「れずび……?」
しまった!
また質問されるかも!
まあロリコンよりも説明しやすいけど……。
「あら、まだ神殿に入っていなかったの?」
ソフィアが質問しかけた所で突然女性の声が聞こえた。
私がその方向に振り向くと神殿まで案内してくれた女性がいた。
「ちょっと今ロリコンとレズビアンについて話し合っていたの」
「ろり? れび?」
な、何だこれ。
もしかしてまたロリータコンプレックスについて説明しなきゃいけないの?
あ、でもこの女の人なら普通に知識ありそう………。
私はそう思い女性の方を見てみると、
「なあにそれ?」
困った表情と共に疑問の声を上げていた。
駄目だったァ………。
そうか、そもそもそういうのに関しての知識とかこの世界には無いのかも。
それなら知らないのも当たり前か………あれ? それっておかしくない?
何で私の世界の言葉をソフィアさんのお母さんは知ってるの?
「まあそんな事より。
二人とも早く神殿に入りましょう。
あ、二人じゃなくて、四人だったわね」
女性はそう言って微笑んだ。
「そうね、それじゃあ入りましょうか。
ユウカさんにエレノアさん。
それと、骸骨さん……だったわよね?」
骸骨さんだけ名前呼びじゃないのは何でだろう?
私とノアの名前は知っていたのに……。
「ユウカ」
ふと疑問に思った事を考えていると、エレノアが私に話しかけた。
「ん、何かあった?」
「ユウカは、小さな女の子が好きではないのですか?」
………ノア、なぜ今その話を。




