三十六話 神の都
「なんだい?
オルドム教に入りたいのかい?
オルドム様は他の神様と違ってこの世界によく干渉されるから、教会内でそれなりの地位についているとよくお告げが聞こえるんだよ。
それで信者としての充実感もあるし、教会の皆んなと話すのも楽しい。
だから私はオルドム教に入信して良かったと思っているよ」
何かめちゃくちゃ勧誘してくる。
まあ聞いてる限りだと良い感じに思えるけど、私は今会ってきたばかりだからなァ。
あんなに言われた後でその神様の素晴らしさを伝えられても、プラスには捉えられないんだよね。
「折角ですけど私は……」
「そうかい、それは残念だ………。
まあ、気が向いたらヘルサスにある教会にでも足を運んでみておくれ」
「……は、はい。
気が向いたら」
私は嬉しそうに勧誘する老人の誘いをやんわりと断った。
すると少しだけ悲しそうにそう提案した。
「それじゃあ私はこれで」
「ああ、はい」
老人はそう言うと手を振りながらロペルへ続く道を歩き出した。
結局どんな人なのか分らず終いだったな。
というか何で私に話しかけたの?
ただ単に挨拶したかっただけかな?
…………そういえばあの人がオルドムはよくこの世界に干渉するとか言っていたよね。
オルドム自身も光と闇の世界とか言っていたし、色んな世界があったりするのかな?
「ユウカ?」
すると突然エレノアが私に話かけた。
「ん、なに?」
「いえ、ユウカがあの人と話している時に暫く黙っていたのが気になったので」
「ああそうそう。
その事で話があるんだよ」
私はそう言って裁きの神オルドムの世界にいた時の事を話した。
するとそれを聞いたアンナがローブの中から出てきた。
「オルドムですか?」
「ああ、うん。
骸骨さん知ってる?」
「いえ、私は有名な六大神と影の女神。
そしてその子等である兄妹達しか知りませんので」
六大神は聞いたけど影の女神とかは知らないな。
あれ? でも骸骨さんはカーラって神様信仰してたからその名前が無いのはおかしい。
………それとも兄妹達の中にカーラがいるのかな?
だけど骸骨さんが知らない神様か。
有名とか言うからには沢山神様がいたりするのかな?
でもあんな風な神様はちょっとな……。
「そのオルドムとかいう神は気に入りませんが、少し気になる事を言っていましたね」
「気になる事?」
私はエレノアの言った事にそう返答した。
「自我を保てなくなると言っていたのでしょう?」
「ああそれね。
どう言う事なんだろうね」
確か身体を得なきゃいけないんだっけ?
私も出来る事なら欲しいけど、やり方とか分からないしな。
「解らない事を考えても仕方ありません。
それよりも先に進みましょう」
アンナは黙り込んでいた私にそう言うとローブの中に入っていった。
「そう、だね………。
先ずは神都に行こうか」
神都には使徒がいるし。
その人に会えたら何か分かるかもしれない。
それにしても、後どれくらいかかるのかな……?
そんな事を考えなら隠していたウルフを近くまで呼んだ。
そしてそのウルフが近くに来ると、エレノアと一緒に乗ってまた走り出した。
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私達はウルフに乗って神都まで向かっていた。
老人と会ったのは昨日の事だった。
「ユウカ、見えてきましたよ」
「え、本当!」
エレノアにそう言われて先を見てみると、そこには半分が海に造られた都市があった。
大きさはロペルとは比べ物にならない程巨大で、最初に見た城のある街の数倍はあった。
私はその都市が見えると、載っているウルフの進行を止めてその場に立ち尽くした。
「ウワァ!
でっかいな………それに綺麗」
私がその都市を見渡していると、まるでキラキラと光っている様に錯覚した。
そしてよく見ると、都市の陸側の方にだけ壁が建っていて、海側の方には船が行き来出来る港があった。
これが神都か…………神々しいな。
流石は神都と言うだけある。
……ん、あれは。
さらによく見ていると壁に門があり、そこから馬車が出て行っていた。
そしてその横では荷馬車や大きな荷物を持った人々が行列を成していた。
もしかしてあそこから中に入るのかな?
でも凄い人の量。
入るのに時間掛かりそうっていうのもあるけど、ノアの人酔いがなァ。
まあ、先ずは近くに行ってみるか。
私はアンナにウルフを破壊させると、神都に入る門に近づいた。
私は人形のおぼつかない脚で門に出来た行列の最後尾まで歩いてきた。
近くに来ると門までより遠く感じるな。
………………どの位時間掛かるかな。
…………………これ、待たなきゃいけないかな?
よく考えたら私は招待されてここに来たんだから、この行列無視して入っても良いのでは?
あ、でも招待状とか持ってなかった。
でもアウレリアさんからそんな物は渡されなかったし………。
それじゃあやっぱり順番が来るまで待てって事かな?
いや、でももしかしたら簡単に入れるかも。
アウレリアさんが私の本名を知っていたのってやっぱり予言とか言うのの所為だよね?
だとしたら今日私がここに来る事はもう既に分かっていて、門の近くで私が現れるのを待っていたりするかも?
待っていなかったら並び直しだけど………ノアがなァ。
私はそう思いながらエレノアの顔色を覗った。
だが思っていた程悪い表情はしていなかった。
「あれ? ノア大丈夫なの?」
「はい、人混みという訳ではないので」
「へえ」
町の中みたいに閉塞的じゃないからかな?
まあそれなら並んで待っていても大丈夫そう。
でも一応確認しに行こう。
出来る事ならすんなり入りたいし。
「ノア、一回門の近くまで行ってみない?」
「そうですね」
私はエレノアの返答を聞くと門の近くまで向かった。
門の近くまで来ると、行列の先頭にいた人が同じ鎧を着た男達と話をしていた。
そしてしばらく見ていると、話していた人が馬車に乗って門の中に入っていった。
よく見ると壁には馬車が通る大きな門と人一人通れる程の小さな扉があった。
鎧の男達は扉の近くにいた。
あれってもしかして検問かな?
怪しい人とかを調べる…………だとしたら私危なくない?
子供で人形の体でって、もう調べる要素しか持ち合わせてないじゃん。
ど、どうしよう…………。
「ねえ、君」
すると突然扉から一人の女性が出てきて私に呼びかけた。
「え、はい?」
「君はもしかしてユウカさんだったり………する?」
その女性は私の風貌を見ながらそう聞いてきた。
「え……!
はい、ユウカです」
これってもしかして予感的中かな?
ふふふ、私にも予言能力があるのかも。
というかこの人も私の名前知ってるんだな。
予言って物凄くプライバシーの侵害じゃない?
「それなら良かった。
他の二人も一緒にいるわよね?」
「………はい。
知っているんですか?
二人の事……」
「存在を知っているだけよ。
詳しくは知らないから安心して頂戴」
女性はそう言うと私に少し微笑んだ。
何か結構優しそうな人だなァ。
もしかしてこの人が使徒だったり?
「それじゃあ今から使徒の元へ案内するからついていらっしゃい」
「……あ、はい」
この人は使徒じゃないのか。
私達はその女性に案内されて神都への扉を潜った。
そうして見えてきたのは美しい街並みに活気のある人々だった。
皆ロペルの街の人々よりも清潔感があり、道脇の店も高級感が漂っていた。
そして何よりも外で見えた光の粒子の様な物が錯覚でない事に気がついた。
これって幻覚とかじゃなくて本当に光ってる。
何だろう、一体………。
「ユウカさん、こちらへどうぞ」
その光や街並みをもっとじっくり見たかったが、女性が私に馬車へ乗るよう促した為、断念してそれに従った。
「あの、今から何処に行くんですか?」
馬車の中で私はそう尋ねた。
「六大神を祀る神殿よ。
使徒もそこにいるわ」
へえ、どんな感じの建物なんだろう。
やっぱり大きいのかな………?
あ、そうだ使徒の事について尋ねてみようかな。
「その使徒ってどんな方なんですか?」
「ウゥンそうね………。
一言で言い表わすなら…………ワガママかしら?」
まあ神都に来いって命令するくらいなんだから、そりゃワガママでしょうね。
…………ちょっと待てよ。
よくよく考えたら神都に来たのって間違いだったんじゃ?
だって明らかに私って他の人と違う訳だし。
………もしかして監禁されて実験されたりするんじゃ。
だとしたら私の命はここまで………あ、そういえば私はもう死んでるんだった。
それなら大丈夫か………いやいや全然だいじょうぶじゃないよね?
どうしよう、これ、まずくない?




