三十九話 新たな身体
「母親二人いるんですか!?」
私はソフィアの意外な言葉に驚いていた。
同性婚なら分かるけど同性同士で子供が出来るもの?
異世界ならあり得るのかな?
「………その話をする前に一つ言っておきたい事が。
私の喋り方がどうとか言っていたけど、私自身もこういう口調は好きじゃないの。
それでもこうしなきゃいけない理由があるの」
「理由、ですか?」
私はそれより母親の話が気になるんだけど……。
「ええ……。
体裁って言うの?
私みたいに高い地位にいる者は周りからどう見られているのかって物凄く大事らしいの。
正直私は面倒くさいから余り人前には出ないようにしていたんだけど、その所為で使徒という私のイメージが勝手に美化されて更に面倒になって、普段気おつけてああいう喋り方しなきゃいけなくなったて訳」
やっぱり印象は大事だからね。
でも少し可哀想。
まだ大人じゃないのにこんなに頑張って………。
「……ソフィアさん、先程はそうとは知らずに失礼な事を言いました」
「ああ、良いよ別に。
私も体の事馬鹿にしてごめんね」
アンナの謝罪をソフィアは許して、自身も同じように謝罪した。
そしてそう言うソフィアの喋り方は少し気楽な感じになっていた。
「ああ、それと私の母親についてなんだけど………」
お、そうだその話をしてたんだった。
一体どうやってソフィアさんが誕生したのか……。
「その、余り人に話すような事じゃないし………申し訳ないけど」
え、そんな!
こんな終わり方じゃ余計に気になる……。
まあ、話しずらい事なのかも知れないし、余り詮索しないでおこう。
……はあ、でも気になる。
「わかりました」
私は知りたい気持ちを抑えてそう返事をした。
「それじゃあ私から質問いい?」
「ああ、どうぞ。
何でも答えます」
ソフィアの問いに私はそう返事をした。
「ユウカさんはどうやってこの世界に来たの?
見た感じ何かの加護を受けてはいないし、どこかの神に遊び半分で召喚か転生させられたの?」
そんな神様いるの!?
遊び半分って……。
えっと、確かどこかの国に召喚されたんだよね。
その時にいくつか名前を聞いたような………ウゥン、思い出せないな。
「ユウカ?」
私が考えながら黙り込んでいると、心配したエレノアが話しかけてきた。
「ああ、ごめんごめん。
えっと、多分だけど何処かの国に召喚……されたのかな?」
「曖昧な感じね。
因みに召喚後その国でどんな待遇をされたの?」
「どんな………召喚された後何人かの人と会ったかな?」
私はあの国であった事を思い出しながらそう答えた。
「ユウカ何を言っているのですか?
確かユウカはあの遺跡で召喚直後に殺されたと言っていませんでしたか?」
「あれ、そうだっけ?
……そんな感じもするような………うん、多分それであってると思う」
エレノアは私にそう疑問を投げ掛けた。
それを聞いた私はまたもや曖昧に答えた。
「……それじゃあその国がなんていう国か分かる?」
「ウゥン、どうだったかな?」
「確かユウカはそこまで言っていませんでした」
ウゥン、何か思い出せないな。
そこだけの記憶がポッカリと無くなっているような感じが………。
元の世界の事とかは覚えているのに。
何でだろう?
「ユウカさんは物覚えが悪かったりするの?」
「いや、そんな事は無いと思うんですけど………」
「…………それじゃあユウカさん。
私の神眼であなたを見てみるから」
しん、がん?
新しい癌って意味?
いやでも私を見るって言ってたから目って事かな?
ソフィアの言った事を考えていると、彼女は両目を閉じて少しの間沈黙した。
すると突然ソフィアの額に縦向きの眼が開いた。
「え!」
「驚いた?
これが神眼、主より与えられた祝福」
第三の眼じゃん!
かっこいいな。
ん? 祝福?
どこかで聞いた気が………ああそうだ、骸骨さんが言ってた神様に与えられるやつか。
確かノアの身体も祝福なんだっけ?
「ウゥン、そうね………。
これは……!」
すると神眼で私を見ていたソフィアが驚いた表情をした。
「どうかしたんですか?」
「ユウカさんの記憶が欠けている原因が分かったわ。
あなたの体は、ほぼ無いに等しい。
いえもう体と言ってもいいのか……」
え、私の体って無かったの?
……あ、そういえば。
私はふと思い出したある事をソフィアに話した。
「そういえば、この神都に来る道でオルドムっていう……裁きの神って言ってたかな?
それに会ったんだけど、その神様も身体を手に入れろだったか。
そんな事を言っていた気がします」
「え、オルドム……」
それを聞いたソフィアは鈍い顔をした。
あれ、何だろう。
何か嫌そうな表情。
あの神様嫌いなのかな?
「あの神に会ってよく何もされなかったわね」
「あの神様に何かあるんですか?」
そう言うソフィアに私は疑問を投げ掛けた。
「オルドムはいつも善がどうとか悪はこうとか言って、自分の正義に反する者がいれば容赦なく罰するの」
うんうん。
私も裁かれそうになったんだよね。
でも神様ならどんな事やっても大丈夫って言ってたな。
今考えてもとんでもない奴だよね。
「まあそんな事はどうでもいいわ。
とにかくユウカさん、今のあなたに必要なのは身体」
「でも、どうすれば………」
感覚とかそういうの無いし、想像でもすれば良いのかな?
ノアに祝福を与えられたのは記憶の中にいた時だし………。
でも、ノアの身体は生きてた頃とは違って人形そっくりになってるから、私がそうした事は間違いないと思うんだよね。
「取り敢えずその人形から出てみて?」
私が悩んでいるとソフィアはそう提案した。
「えっと………どうやって出れば」
「それなら私が。
ユウカ様、ローブを」
アンナがそういうと、私は頷いてローブを脱いだ。
それを見たアンナは人形の胸の辺りにあった印を魔術で削り取った。
するとそれと同時に人形の体は動かなくなり、私から離れて床に落ちた。
「ユウカ様、私の声が聞こえますか?」
するとアンナが私にそう聞いてきた。
周りを見るとエレノアとアンナとソフィアの母親は私を見ておらず、ソフィアの神眼だけが私を見ていた。
「うん、聞こえる。
それで、この後どうすればいいですか?」
「ウゥン、単純に想像してみればいいんじゃないかしら?
どんな姿になりたいかを。
出来るだけ人の形を想像するのよ」
「……やってみます」
やっぱり想像すんだ。
でもどんな姿をイメージすれば……。
そうだ、どうせなら理想の身体を………胸は大きくて、背は高めで、顔はクールな感じで。
ウゥン……………。
私は自分のなりたい姿を想像した。
そうして思い浮かんだのは母親の姿だった。
「………………ユウカさん」
するとソフィアが私に話しかけた。
「ん、どうですか?」
「出来ているんだけど………。
本当にその姿を想像したの?」
あれ、変な感じになっちゃったかな?
ちゃんと明確に想像したつもりだけど……。
「どんな感じになってますか?」
「……私の眼で見てみる?」
ソフィアがそういうと私の視界は一瞬真っ暗になり、明るくなった時にはソフィアの視点になっていた。
そしてそこに写っていたのは私の母親とは違う女性の姿だった。
確かに胸は大きく顔も美しかったが、その顔に見覚えはなかった。
「え、これが私………」
「これは……」
するとソフィアは私の視点を元に戻し、口に手を当てて考え込んだ。
「ソフィアさん、ユウカ様に何かあったのですか?」
エレノアはそんなソフィアにそう問いかけた。
「………いや、いいわ。
それより感覚はある?
痛みや今まで無かった不快感とかは?」
「………無い、ですかね?」
私は自分の身体を見回して手を開いたり閉じたりしてそう答えた。
胴体や手足、指先も自由に動かせるが、感覚は相変わらず感じなかった。
そうしていると、自分は服を着ていない事に気がついた。
「あ、私裸です!」
「身体を想像する時に服も想像しないとそうなるわよ」
うう、スケルトンだけでなく私まで裸に。
でも不思議と羞恥心はない。
本来の自分の身体じゃないからかな?
「身体を手に入れたなら人形の出入りも出来るんじゃない?」
「え……」
ソフィアにそう言われて私は倒れている人形の中に入った。
身体の大きさは全く違ったが、人形を操ろうとすると目線が人形の体になって私の身体も気づくと人形に入っていた。
「おお!」
こうして私は何の問題もなく人形に出入り出来るようになった。
あの胸の印は人形から出られないようにするためだったんだね。
でもこれは確かに気おつけないといつの間にか人形から出てるかも。
「ソフィア、もうそろそろ」
すると突然ソフィアの母親がそう言った。
「ああ、もうこんな時間か……。
ユウカさん、申し訳ないけど話はまた明日。
部屋は用意してあるからそこを使って」
「あ、はい……」
ソフィアはそう言って部屋を出て行った。
窓の外を見るともう日が暮れ始めていて空が赤かった。
その後私達はソフィアの母親に用意された部屋に案内された。
「何か有れば机にあるベルを鳴らしてくださいね」
「はい、どうも有難うございます」
ソフィアの母親はそう言うと扉を閉めて何処かへ行ってしまった。
色々聞きたい事あったけど、やっぱり忙しいのかな?
この身体について何か知ってそうだっけど……。
「それで、ユウカの身体はどんな姿だったのですか?」
「ウゥン、一言で言うと………ボンッ、キュッ、ボン」




