三十四話 神都への道
私はアウレリアという名のエルフと応接室で話をしていた。
…………急に神都に行けとか言われたんだけど……。
やっぱり私この人に何かしたのかな? でも会ったこともないし。
そもそもエルフに会うなんて初めてだし。
というかエルフってこんなに高圧的な態度なんだ。なんか少し怖いな。
……取り敢えず何で神都に行くのか聞いてみるか。
「あの、何で神都に」
「質問は受け付けないわ。
あなたはただ黙って神都に行けばいいの」
こ、怖いよ。
少しどころじゃなくてめちゃくちゃ怖い。
エルフって皆んなこんな風なの……?
「は、はあ………」
これってもう行くしかない雰囲気?
というか神都ってどこにあるの? そもそも何で神都に行くの?
私まだロペルに来て数日しか経ってないんだけど、もう出ていかなきゃ行けないの?
しかも半強制的に。
「あの、それって強制なんですか? 断ることって……」
「あなた、とても変ね」
ええ、無視された上に変人扱いされたんだけど。
漫画とかでは皆んな容姿も性格も綺麗って感じだったけど、この人に会ってから印象が大分変わったよ。
しかも悪い方に。
「あなたは限りなく光に近い……いいえ、もう光そのものと言っても過言ではないわ。
それなのにどうして話が出来るの? 記憶もしっかりしているし」
アウレリアは私を上から見下しながらそう呟いた。
その間も顔は私から一切そらさず、真っ直ぐに私を見ていた。
私はその視線が私自身を見ていると言うより、もっと本質的な物を見られている気分になり、思わず目を逸らした。
「まあいいわ。
それより早く神都に行きなさい。
使徒が待っているわよ」
アウレリアはそう言って一人部屋から出ていった。
………行っちゃった。
それにしても気になる事をいくつか言っていたな。
光がどうとか。それに使徒が待っているって。
確か神様と直接話せる人だったよね。
「ユウカ様、一旦宿に戻りましょう。
エレノアも待っていますし、整理する時間が必要でしょう」
「……うん、そうだね」
私が暫く考え込んでいると、ローブの中でアンナがそう提案した。
それを聞いた私はアンナの提案に返答した。
そして考えるのは後にしようと思い、冒険者ギルドから出て宿に戻った。
私達が宿に戻ると、焼け焦げた厨房で複数人の男達と宿の主が話をしていた。
その中の二人はいつも宿にいる覚えのある顔だった。
私は男達が会話しているのを横目に階段を上がっていき、エレノアのいる部屋の前まで来ると、扉を開けて中に入った。
「ユウカ!」
部屋の中に入った瞬間、突然エレノアが私に抱きついた。
よく見るとエレノアは半泣きの状態だった。
「酷いです、どこに行っていたのですか!」
「ごめんごめん。
ちょっと色々あって」
あれ、なんかこれ既視感が……。
まあ今はそんな事より、現状の説明と整理をしなきゃね。
私はそう思い、抱きついていたエレノアを宥めるとベッドに座った。
そしてエレノアが寝ている間に起きた出来事を話して聞かせた。
勿論ミノタウロスのスケルトンが町までついてきた事も。
その話しを聞いている間エレノアは不機嫌そうにしていた。
「そんな事があったのですね、私の眠っている間に。
…………ですが何故私を起こさなかったのですか? ユウカ」
「えっと、それは………」
どうしよう、忘れていたとは言えないよね。
今日は朝から火事やらミノタウロスやらで忙しかったし。
「ユウカ様はアナタを危険な事に巻き込まないように思っていたのよ」
アンナは私を擁護する様にそう答えた。
それを聞いたエレノアはあまり納得していなさそうだった。
「分かり、ました………」
「それでは話の続きですが、あのアウレリアという女性に神都へ行くよう命令されているのが私達の現状です。
別に従う道理は全くありませんが………どう致しますかユウカ様?」
アンナは浮遊しながら私にそう聞いた。
まあ確かに無視しても何の害も無いだろうけど。
いやでもあのアウレリアさんなら何をするか分からない……ここは従っておこうか?
でも道理か。そういえばあの人使徒が待っているって言っていたよね。
それは少し気になるんだよね。
それに宿の宿泊期限も今日までだし。
行っちゃおうかな、神都。
「まあ別に行かなくても良いんだけど、アウレリアさん怖いし。
それにあの人の着ていた服、どう見ても受付嬢の服だよね?
今断ってロペルに残ると、次からギルドに行く時毎回顔を合わせる事になる。
それはちょっと気まずいし」
「そうですか……では神都には今から向かいますか?」
アンナは私の返答を聞いて少し考えると、承諾したのかそう聞いてきた。
エレノアはその話しを聞きながら考え込んでいた。
「そうだね……あ、でもどうやって神都まで行こう。
歩いていくわけにも行かないからスケルトンに乗っていく事になるけど、その場合ってどれ位掛かるかな?」
「あのスケルトンでは数日程………。
ですがウルフのスケルトンならば、あの素早さが有れば時間を大きく短縮出来るのでは?」
そっか、そういえばウルフ倒してたんだった。
私のスケルトンなら休まず走り続ける事ができるから昼夜問わず進める。
それに森と違ってアンデッドの事を気にしなくて良いし。
「わかった、ウルフに乗って神都まで行こう。
……そういえばその神都ってどんな所なの?」
「神都ヘルサス。
その都市はサレウス皇国の首都で皇国一、いやこの大陸一の広さを持つ都市です。
景観はとても美しいと聞いていますが。
そして何よりそこには使徒がいます」
ほえェ、何か凄そうだな。どんな所か楽しみになってきた。
でもやっぱり一番気になるのは使徒だよね。
神様なら私がこの世界に来た理由を知ってるかも。
まあ神様って言う位だから気軽に話せる存在じゃないと思うけど、頼むだけ頼んでみるか。
「………それでは出発しますか?」
「うん、早いうちに行こうか」
エレノアの問い掛けにそう答えると、私達は宿を出てロペルの門前まで向かった。
そしてロペルの町を出ると暫く道沿いに進んだ。
「うう、人形の体はどうも動かしづらいんだよね」
町を出てから暫く歩いてきたけど、まだウルフ召喚しちゃいけないかな?
まあ確かにスケルトンを人目に付かせるわけにはいけないけど、たまに転びそうになるんだよね。
「もう召喚しても良いのではないですか?」
「あ、そう? よし、それじゃあ」
アンナにそう言われて私は道の脇にウルフのスケルトンを召喚した。
まだ日は真上にあったが、馬車の行き来は無かった。
そして召喚されたスケルトンに私が乗ると、ふとある事に気がついた。
そういえばノアってどれ位速く飛べるんだろう?
ウルフと同じくらいのスピードで飛べるのかな?
折角だしノアと一緒に乗ろうかな。
「ノアも乗る? ウルフは人間のスケルトンと違って脚も速いし」
「そう、ですね。
それでは」
エレノアはそう言って私の前に乗った。
私はエレノアがウルフに乗ったのを確認すると、ウルフを全速力で走らせた。
最初に勢いよく走り出したためウルフから落ちそうになったが、なんとか必死に捕まってようやく安定した。
「は、速い」
ウルフは人間のスケルトンと段違いに速く、周りの木々が流れるように過ぎていった。
だが不意の遭遇に遭わないように道ではなく少し離れた位置で走っていた。
道ほど滑らかではないため少し揺れるが、それでもウルフの速度は人間以上だった。
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私達は数日間ウルフに乗って神都を目指していた。
夜中はやはり眠気が襲うため昼夜問わずとは行かなかったが、それでも森の中より自由に動けた。
「ん、あれは」
「ユウカ、どうかしたのですか?」
「奥に誰か見える」
昼間ウルフで走っていると、道の側で座っている人影が見えた。
それを見た私はウルフの足を止めると、近くの陰になっている場所にウルフを隠した。
そしてウルフから降りると、人影の元へ向かった。
あの人、もしかしてここで休んでるのかな?
ん、この人結構歳とってそうだな。
私が脇道で座る男性を見ると、その姿はどこからどう見ても老人で、服も見すぼらしかった。
挨拶とか必要かな?
でもなんか怪しい感じが………まあいいか、挨拶は。
でもこのままこの人の後ろを通って見つかりでもしたら私が怪しまれそうだし。
……ここは普通に道を通るか。ウルフは遠回りで後から合流しよう。
「うん? 君、少しいいかな?」
すると何食わぬ顔で横を通り過ぎようとしていた私にその老人は話しかけてきた。
あれ、話しかけられちゃった。
普通に通ろうと思ったんだけど……あ、子供の時点で普通じゃなかった。
「はい、何ですか?」
「………君一人かい?
三人いるんと思ったんだが………
人違いだったかな?」
老人は私の周囲を見渡した後そう言った。




