三十一話 安い宿
「これで全部かな?」
「下水道を見て回りますか?」
「ウゥン………まあそこまでしなくても良いかな」
そう言って私とアンナは下水道から出た。
やっぱり下水道と外とじゃ雰囲気が全然違うな。
まあでもこれで当分は害虫駆除の依頼もないだろうし、あったとしてもやりたくはない。
それじゃあノアと合流して依頼の完了を………そういえば待ち合わせ場所とか決めてなかったな。
まあ冒険者ギルドで待っていたらそのうち来るかな。
「じゃあギルドに戻ろうか骸骨さん」
「はい、分かりました」
そう言って路地裏から大通りに出た私とアンナは、近くにエレノアが居ないか見渡しながら冒険者ギルドまで戻ってきた。
私とアンナが冒険者ギルドの入り口まで戻ると、そこには依頼の探し物を両手に抱えているエレノアがいた。
「お待たせノア………それって全部依頼の?」
「ユウカ。はい、意外と簡単に見つかりました」
「へえ、すごいな」
流石ノアだなァ。頼りになる。
あ、そういえば待ち合わせ場所決めてなかったのにここで待っているとは、以心伝心ってやつかな?
「ですがユウカ、私では依頼主へこれを持っていけないので……」
「そうか、それじゃあ私と一緒に行こうか」
「はい」
それから私達は依頼を出した人達に達成の報告をしに行った。
そして順調に依頼主のサインを貰うと、冒険者ギルドに戻った。
「やっと終わったね」
「はい、結構時間掛かりましたね」
いく先々で素性聞かれたし、やっぱり子供の冒険者は珍しいのかな?
少年とかそういうの憧れそうなものだけどなァ。
「じゃあ完了報告しよう」
私は冒険者ギルドの扉を開けて中に入った。
そしてそのまま真っ直ぐに受付へ行くと、持っていた依頼書を受付嬢に渡した。
「この量の依頼を一日でこなしたんですか?」
「はい!」
「……結構大変だったんじゃないんですか?」
「いえいえ、それ程でも」
受付嬢は私にそう話しかけながら次々と依頼書に文字を書いていった。
冒険者ギルドの依頼もいくつか受けてたから、今日は宿で寝られるかも。
そういえば宿の料金とか知らなかったな。
「あの」
「何ですか?」
「宿屋の代金っていくら位ですか? 出来ればあまり高くなのが良いんですけど……」
「安い宿ですか……それなら」
それを聞いた受付嬢は少し悩むと、近くにあった地図を取り出して指差した。
「この宿なんてどうでしょうか?」
えっと、ここは………あ、ここ最初に見つけた場所じゃん。
へえ、あそこって値段安かったんだ。何でだろう、壁に近いからかな?
「じゃあそこに行ってみます。ありがとうございます」
「はい。ああそれと、ウルフ討伐の報酬が振り込まれましたので、ご報告させて頂きます」
おお、もう報酬貰えたのか。思ってたより早かったな。
えっと、ウルフ討伐で一万五千。冒険者ギルドの依頼だけで三千位の報酬が手に入ったかな?
このお金ってギルドの金庫に入ってるんだっけ? だとしたらそれを貰わないといけないよね。
「それじゃあウルフの報酬分だけお金を……」
「……という事は一万五千オルムですね。少々お待ちを」
受付嬢はそう言うとギルドの奥に入っていった。
そしてしばらくするとトレイの上にいくつかの硬貨を乗せた受付嬢が戻ってきた。
「それではこちらが一万五千オルムです」
「これが……」
私はそう言って渡された硬貨を手に取って眺めた。
これがこの世界のお金か……。
ノアの記憶で見たことあるけど、実際に手に持ってみるとやっぱり違うなァ。
えっと、全部で六枚。銀色のが一枚で、それより少し大きい茶色の硬貨が五枚と。
これ一つでいくらなんだろう?
「これで宜しいですか?」
「ああ、はい。どうもありがとうございます」
でもこれでやっと宿に泊まれる。
いやァ、長かったような短かったような。
「それじゃあさようなら」
「はい、さようなら」
私はそう言って冒険者ギルドを出ると、小走りで教えてもらった宿屋へ向かった。
「よし、ここで良かったよね」
「おそらく」
私達は宿屋まで来ると、外観を一度見回して扉を開けた。
『ガチャ』
扉を開けて中に入ると、目の前には受付があった。
「ん、なんだ?」
すると受付にいた男が私に話しかけてきた。
「えっと、この宿に泊まりたいんですけど」
「…………金は?」
え、なんか意外とすんなりいけたな。
もっとこう、冒険者ギルドに入った時みたいに揶揄われるのかと思った。
「お金は一万五千オルムあります」
私はそう言いながら手に持っていた六枚の硬貨を男に見せた。
「……いいだろう。一泊大銅貨二枚だ」
男はそう言うって片手を差し出した。
これ大銅貨って言う名前だったんだ。
というかそれならウルフ一匹で全然足りたじゃん。
でも一泊か……どうせなら二日位泊まろうかな。
「あの、これで二日分泊まれますか?」
私はそう言って大銅貨を四枚渡した。
「ああ……」
私が渡したお金を手に取ると、男は手元にあった紙に何かを書き始めた。
「……部屋は二階の一号室だ」
「はい……」
私はそう言って近くにあった階段の方へ向かった。
その途中で一階の部屋を一望してみると、そこには客が一人か二人位いる酒場があった。
なんだろう、やっぱりここって人気ないのかな?
もしかして曰く付きだったり……?
そんな事を考えながら私は階段を登った。
えっと一号室一号室……って、二階は四部屋か。
それならすぐに………お、ここか。
そうして一号室と書かれた看板の貼ってある扉を見つけると、取っ手を握ってその扉を開けた。
ええ、鍵とかないの?
ん、これは……内側から閉める感じなんだね。
「ここが宿ですか………あまり綺麗とは言えませんね」
「あんまり使われてないのかな?」
そう言ってエレノアが部屋に入ったのを確認すると、扉を閉めて鍵を掛けた。
「ベッドはどんな感じかな?」
私はそう言いながら真っ先にベッドの方へ行くと、その上に乗った。
「………結構綺麗じゃない? 埃とかあんまり出なかったし」
「ちゃんと清掃はしているのですね」
するとローブの中にいたアンナが出てきて窓の側に近寄った。
「外はもう日が落ち始めていますね。お休みになられては如何ですか?」
「そうだね、今日はもう寝るか。あ、骸骨さんは?」
「私はいつも通り見張りを」
んん、骸骨さんは少し働きすぎてるような……。
というか、骸骨さんっていつ寝てるの?
ここは建物の中なんだし、安全だと思うんだけど。
「骸骨さんも疲れてるだろうし、今日はみんなで寝よう」
「………ユウカ様がそう仰るなら」
アンナはそう言うと、ベッドの端へ行ってそこで休んだ。
そして私は真ん中に横たわると、エレノアはその横で眠りについた。
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「んん………んあ」
「ん、おはようございますユウカ」
「え、あ、おはよう………朝か」
今朝はいつもと違って少しいい気持ちだな。
夜の騒音がいつもより少なかったからかな?
「今日も冒険者ギルドに行きますか?」
「………いや、今日は町を見て回りたいな」
この町に来てから依頼しかしてないし、大通りのお店とか全然見てないからね。
「分かりました、それでは……まだ骸骨さんが起きていないようですね」
「え……? 本当だ」
やっぱり疲れたのかな?
見張りをかわりばんこにすればよかった。
「今起こしますね」
「ああ待って。骸骨さんも疲れてるだろうから、まだ寝かせといてあげよう」
「………そうですね」
私はそう言うと、アンナを起こさないようにゆっくりと部屋から出た。
「あ、鍵はどうしよう?」
「それなら私が外の窓から入って閉めてきます」
「おお、その手が。それなら頼んだよ」
「はい」
するとエレノアは私よりも先に宿の外に出ていった。
私はそれを見ながら階段を降りると、受付の男を横目に宿を出た。
「ユウカ」
「お、どうだった」
「ちゃんと閉めてきました」
よし、これで防犯対策はバッチリだね。
「それじゃあ行こうか」
「はい」
それから私達は大通りに行き、色々な建物を見て回った。
そこには服屋や雑貨屋、武器屋などがあり、それに立ち寄る人々で町は活気に溢れていた。
「おお、改めて見ると結構賑わってるよね」
「はい……ですが少し疲れてきました」
あ、そういえばノアは人混みが駄目なんだった。
「それじゃあ裏路地も行ってみよう」
「そうですね!」
私とエレノアはそれからしばらく町を歩き回り、気づく頃にはもう夕方だった。
「時間の流れは早いなァ」
「もうそろそろ帰りましょうか」
「そうだね」
そう言って私とエレノアは宿まで戻った。
「いやァ結構楽しかったね」
「そうですね」
私とエレノアは宿の二階まで戻ると、一号室の扉をノックした。
『コンコン』
「骸骨さん」
『ガチャ』
私がそう呼ぶと、扉の鍵が開いた。
その音を聞いた私は扉を開けて中を確認した。
「ユウカ様!」
「うわ!」
すると突然骸骨さんが私の胸に飛び込んできた。
「酷いです、私を置き去りに!」
「ごめんごめん」
「もう、私がどれだけ心細かったか」
ああ、やっぱり骸骨さんも連れていった方が良かったかな………。




