三十話 宿の為に
こ、この金髪野郎ウルフ一匹の報酬を要求しやがった。
確かに道案内してくれた事には感謝してる。感謝してるけど、それはあまりにも高額すぎるんじゃ………。
「どうだ?」
「いやァ、少し高すぎるんじゃ………」
この世界の金銭感覚とか全然分からないけど、あの冒険者達が失敗していた事を考えるとそれなりの額なのでは?
少しでもお金が欲しいこの状況で報酬の三分の一はちょっと……。
い、いやいやこれはきっと冗談だ。そうやって私をからかっているんだ。
「高すぎるか………だが冒険者は何をするにも自己責任だ。だからきっとお前達が困っていたのを善意だけで助けてくれる奴なんてそうそう居ない。それでも俺が助けたのはウルフの報酬がそれなりだから、礼金も期待できると思ってのことだ。だから高いなんて事はないと思うぞ」
ぐ、ぐぬぬ。この金髪本気だ………あ、でもあの冒険者達は普通に善意で助けてくれたな。
あの人達ならこんな事にはならなかっただろうな………はあ。
まあでも、これから先商業ギルドの依頼を受ける時こんな風に迷わなくても済むし、別にいいか……。
「わ、分かりました。えっと、五千オルムですね………それって手渡しですか?」
「いやいや、ギルドの金庫に俺名義で預けといてくれ」
金庫? ギルドにそんなものがあるのかな? まあいいけど。
というかこの人の名前知らないんだけど。
「わ、分かりました……それであなたの名前は?」
「ん、ああそうだったな。俺の名はニコラッド、巷では双剣のニコラッドと呼ばれている」
そ、双剣………本当だ、よく見たら腰に剣がニ本ある。
その二つ名は……ちょっと面白い。
「はい……」
「そんじゃ」
ニコラッドはそう言うと何処かへ歩き去った。
………双剣のニコラッドふふふ。思い出したら面白くなってきた。
まあ気持ちは分かるけど。
「図々しい方でしたね」
「そうだね………サッサと報酬貰うか」
「はい」
そうして私は商業ギルドの扉を叩いた。
『コンコン……ガチャ』
「ハァイ………何だ子供かって何だこのウルフは!」
すると扉の中から一人の男性が出てきた。
そしてその男性がアンナの浮かせているウルフを見ると、驚きながら一歩後退りをした。
「あ、あのォ依頼の達成報告を……」
「え、君がそのウルフを?」
「はい………」
男性はそう言うとしばらくの間立ちすくんだ。
「……あ、えっと依頼だったね。そのウルフはそこに置いといて。それと依頼書にサインするから」
「ああ、はい」
私はそう言ってアンナに持たせておいた依頼書を取り出して男性に手渡した。
「………ほい、これでいいかい?」
「あ、有難うございます」
男性はそう言って依頼書を私に返した。
依頼書に何を書いたんだろう………なるほど、依頼主のサインと討伐数を書いたのか。
てことはこの依頼書は冒険者ギルドに持っていかなきゃいけないのかな? でも依頼主は商業ギルドだし。
何より依頼の報酬が……。
「………ん、まだ何か?」
「えっと……ど、どうも有難うございました」
ウゥン、結局報酬は貰えなかったけどこれで良いのかな?
私はそう思いながらその場を立ち去った。
そしてその足で冒険者ギルドまで戻ってきていた。
『ガチャ』
「あ、おかえりミノちゃん」
「え、えっと………はい」
受付嬢が私にそう挨拶すると、私は微妙な返事をした。
「それで、依頼はどうだった?」
「はい、なんとか……あ、これ依頼書です」
「ハァイ」
受付嬢はそう言って私が出した依頼書を見ると、近くの羽ペンを取って依頼書に何かを書いた。
「はい、これで依頼は達成です」
最終的に冒険者ギルドが依頼書の完了を了承して依頼は達成されるのか。
色々過程があるんだなァ………って、報酬は?
「それで、報酬なんですが……」
あ、よかった今からか。
「ミノさんの口座は既に作っていますので、報酬は近日中に商業ギルドが届けてくれます」
え、今なんと………近日中に?
という事は今すぐに報酬は受け取れないって事………? う、嘘でしょ。
「あ、あの。今すぐに報酬を貰うことは」
「えっと、残念ながら……」
……………今日も、宿なしか。
「冒険者ギルドの依頼ならすぐに報酬を受け取れるんですが……」
さ、さらにショック。
冒険者ギルドの依頼を受けてたら今日はベッドで寝られたのに。
もう外は日が暮れそうだから今すぐには無理だし………いや、私達なら朝も夜も関係なく戦えるのでは?
いや、途中で眠りそうだしそれはやめておこう。
あ、そういえば双剣のニコラッドに礼金あげないと。
「あの、それじゃあ報酬が届いたらニコラッドさんの金庫にそのうちの五千オルムを入れて下さい」
「え、そんなに……分かりました」
受付嬢は首を傾げながら承諾した。
「あ、それじゃあ」
「あ、はい。さようなら」
私は受付嬢に挨拶をすると、冒険者ギルドを出て路地裏に戻った。
「みんな、また明日から頑張ろうか」
「………ユウカ、明日は複数の依頼を同時に受けてみては?」
「おお、なるほど!」
そうか、その手があったか。
ウルフは他のより報酬が高かったから受けたけど、森に行き来するのは時間が掛かるからなァ。
それよりも報酬は少なくても数をこなせば結構報酬は期待できる……かも。
「よし、じゃあ明日はその手で行こう!」
そうして私達は眠りについた。
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私達は朝早くに起きて冒険者ギルドに行くと、近くでできる依頼をいくつか選んでいた。
「これなんかどうですか?」
「ん、なになに……下水の害虫駆除?」
虫か……あんまり気が向かないけどそれなら簡単そう。
……ん、この依頼って依頼主に倒した奴を持っていかなくても良いのか………よし、一つ目はこれにしよう。
「まずは、これと……」
私はそう言って貼ってあった依頼書を剥がした。
「他には………あ、これ」
「良いのありましたか?」
「この無くしたものを探して欲しいって依頼、報酬はそんなに高くないけど結構これ系の依頼がある。ノアなら飛び回れて移動も速いから沢山達成できるんじゃない?」
「それだと私はユウカと離れなければいけませんが……」
エレノアは少し心配そうにそう言った。
「大丈夫、ユウカ様には私がついてるわ」
「そう、ですか……分かりました、ではこういう依頼をいくつか」
そうしていくつかの依頼を持って私達は冒険者ギルドを出た。
「それじゃあ私は下水の方に行くね」
「はい、こっちは任せてください」
そう言って私とエレノアは別れた。
「骸骨さん、下水ってどっちだっけ?」
「それなら私達が寝ている路地裏にいくつか入口が」
「路地裏ね」
骸骨さんにそう言われて私はいつもの路地裏にいき、そこにあった下水道の入り口を見つけた。
ここか……。
なんというか秘密基地感があるなァこの扉。
ここだけ下っていって扉があるのって想像力が働いて………う。
そう考えながら扉を開けると、そこには真っ暗で狭い通路が続いていた。
思ってたより暗い。
それにここはあの遺跡と似てる。
まあ下水だからこんなものか。
「ユウカ様、私が明かりを灯します」
「うん、頼んだ」
アンナはそう言って私の近くに炎の球体を出して辺りを照らした。
『カサカサ』
「ん、今何か聞こえて」
『カサ』
すると突然私と同じ位の大きさをしたゴキブリのような生物が通路の角から現れた。
「あ、あれが害虫!? デカすぎるでしょ……」
『カサカサカサカサ』
その生物は私を見るなり、ものすごい勢いでこちらに向かってきた。
うわ、こっちきた。
取り敢えずスケルトンを召喚して倒そう。
私はそう思い目の前にスケルトンを一体召喚した。
『グチャッ』
召喚されたスケルトンは迫ってきた生物を勢いよく一発殴ると、その生物は気味の悪い液体を撒き散らした。
そしてしばらく苦しみもがくと、もうピクリとも動かなくなった。
「ねえ骸骨さん、この生き物は何?」
「さあ、虫にはあまり詳しくありませんので……ん、これはこいつらの卵では?」
「え……うわ、本当だ」
アンナが炎を近づけたところには、中身が少し透けたいくつかの卵があった。
「おそらく何処からか紛れ込んだこの虫がここで卵を産み繁殖していったのでしょう」
「じゃあ卵も潰さないとね……」
でもこいつらは極力見たくない……。
あ、そうだ。この下水道はスケルトンに探索させよう。
その間に他の依頼もできるし。
私はそう考え大量のスケルトンを召喚して下水道の虫と卵を破壊するよう命令した。
「これで害虫駆除の依頼は完了といっていいね。それじゃあここから出ようか」
「はい」
そうして私達は冒険者ギルドで受けたもう一つの依頼場所へ向かった。
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私達はいくつかの簡単な依頼をこなした後、スケルトンを召喚した下水道入り口に戻ってきていた。
「さてと、中はどうなってるかな?」
私が下水道入り口の扉を開けて中に入ると、数体のスケルトンが目の前で立ち尽くしていた。
虫を倒せって命令したからあそこで動いてないのはもう探しても見つからなかったって事かな?
まあ確認するのも面倒だし依頼完了って事でいいかな。
「じゃあ骸骨さん、スケルトンを呼ぶから静かに倒していって」
「分かりました」
アンナは私が次々と呼び寄せるスケルトン達を魔術で静かに倒していった。




