二十九話 金髪野郎
ウルフから出てきた三つの魂は真っ直ぐに私の方へ飛んできて、スウッと消えていなくなった。
「これで三度目か……」
「ユウカ、もしかしてあのミノタウロスの時と同じような事が?」
「うん、ウルフから魂が出てきて、私の方へ…… 」
遺跡の主とかミノタウロスの時よりもなんというか、弱々しい感じだったけど魂にも強弱ってあるのかな?
そういえば一番最初に殺してしまったあの人の時はちゃんとした形が無かったな。
「ユウカ様、もしかすると貴方は殺した生物の魂を取り込んでいるのではないですか?」
「取り込む……」
骸骨さんの言ってる事が本当なら、ミノタウロスの時と同様にこのウルフも召喚できるのかな?
あれ? でも待てよ……それなら最初の人も召喚できるんじゃ?
あの人は今のスケルトンよりも体格が普通というか平均的だからすぐに見分けがつくかも。
私はそう考え目の前にエレノアを襲っていた男のスケルトンを召喚しようとした。
だがしばらく待ってもスケルトンは召喚されなかった。
「ユウカ?」
「おかしいな……」
そして次に仕留めたばかりのウルフを召喚した。
すると先程とは違い、紫色の光が集まってウルフのスケルトンを召喚した。
「おお!」
「これは………」
狼……には見えないな。
まあそれもそうか。生き物の骨って耳がないから大分印象は変わるよね。
というかやっぱり私は魂を吸い取っていたんだなァ。
でもウルフは召喚できてあの人は召喚出来ないのはなんでだろう?
「そういえば骸骨さん。あの時ユウカの中にいたと言っていませんでしたか?」
「私の中? なにそれどういう意味?」
「はい。このスケルトンに取り憑く前、ユウカ様が倒したそのウルフやミノタウロスがいる場所に私はいました」
それじゃあ益々カーラって感じだな。
私の中か………どんな感じなんだろう?
いや、そんな事よりも骸骨さんいつの間にそんな場所にいたの? ノアの記憶では前日から私が来るまで眠っていて、その間骸骨さんに何があったのか分からないんだよね。
「そして私の見たその場所は只ひたすらに続く真っ暗闇の中に、二つの光り輝く星の様なものがポツポツと存在していました」
「星? というか私の中ってそんなに広いの? それに骸骨さんはいつ私の中に……」
「ユウカ様の中に入ったのはエレノアを襲っていた男が死んだ時です」
ん、だとするとあの時のモヤモヤは骸骨さんという事に。
それじゃああの男の魂はどこに行ったのか………。
というか骸骨さんが言ってる二つの星ってやっぱり魂かな? 確かにあれが夜空に浮いていたら星と間違えるかも。
それと二つって事はスケルトンとミノタウロスかな?
「………というか私の中って何?」
「ああ、詳しく説明すると長くなりますが、簡単に言うと自分の世界といった所でしょうか……」
自分の世界………いや分からない。
骸骨さんが私の中にいたって言っていた事から考えると、何か別の空間みたいな?
それで広かったってことは骸骨さんが小さくなってるのかな?
「ええと……じゃあその世界に私が倒した生き物が入ってるって事だよね? それじゃああの人は? ノアを襲っていた人はどこへ行ったの?」
「実は私はユウカ様が殺した男の身体の中にいたのですが、私がユウカ様の中に入る時、その男の魂が別の方へ飛んで行くのが見えた気がしました」
え、私はそんなの見えなかったけど………弱い魂だったとか?
というか骸骨さん、私があの男の人を倒さなかったら私の中に入れなかったんじゃ……?
随分な賭けだよね。いや、そういえばノアの記憶で予言がどうたらとか言ってたから、こうなるって分かっていたのかも。
だとすると便利だなァ予言。まあでも案外代償も大きかったりして。
それに予言を知ってしまったらもうそれは絶対に起こるとかだったら逆に嫌だな。
「まあ分からないけど分かったよ。それじゃあ私は倒した生き物の魂を奪う事ができて、それをスケルトンとして召喚できると」
自分の力なんだけど、何というか悪役っぽいというか。
そういえばスライムはどうなんだろう? 骨はなさそうだけど倒したからには召喚出来るのかな?
私はそう考えスライムを召喚しようとしたが、しばらく経っても何も起きなかった。
やっぱり骨が無いからかな? それともスライムは生物じゃ無いとか?
「骸骨さん他には何かない?」
「私が見たのはあの世界だけで、ユウカ様の能力については何も」
私の力がカーラに似てるって事は分かったけど、結局詳しい事は分からずじまいか……。
まあウルフのスケルトンを手に入れて結構戦力が増強されたんじゃない?
ギルドの依頼を受けるついでにこうやって強くもなれるし、冒険者は一石二鳥だな。
「ユウカ、その話は後にしましょう。それよりもウルフを商業ギルドに届けなければ」
「うん、そうだね」
そうだそうだ………でもこの首を切り落とされたウルフを持って街中を歩くのか。
しかも商業ギルドの場所は分からないし。
まあ、ウルフは私じゃなくて骸骨さんに持ってもらうか。私は例え一匹でも持てないだろうし。
「じゃあ骸骨さん、ウルフを頼める?」
「分かりました、お任せを」
アンナは再び私のローブに入ると、三匹のウルフを浮かせた。
それを見た私とエレノアはロペルの町へと歩きだした。
--ロペルの町-門前--
私達はウルフを浮かせて、ロペルの門前まで戻ってきていた。
町の中の人々は私を見るなり驚いた表情を浮かべながら歩いていた。
「着いたね。それじゃあ今から冒険者ギルドに行って商業ギルドの場所を受付嬢に聞きに行く訳だけど………やっぱり目立つね」
「無理もないです。こんな光景を見るのは初めてでしょうから」
そういえば冒険者ギルドは大通りにあったから、もしかしたら商業ギルドもこの道沿いにあったりして……。
ウゥン、でもここは馬車の通りも激しいから不用意に歩き回れないんだよね。
「それでは行きましょうか」
「うん」
私達はそう言って町の中に入って行った。
だが大通りは進まず、路地を進んで冒険者ギルドまで行く事にした。
「うお! 何だそれ」
しばらく歩いていると、金髪の冒険者が驚いた声を出して私の元へ駆け寄ってきた。
「ああ、どうもこんにちは」
「いや、こんにちはじゃなくて………ウルフか?」
「はい」
偶然会ったのがこの人なのは残念だけど、ちょうど良いし商業ギルドの場所を尋ねてみるか。
「あの、お聞きしたい事があるんですけど」
「え、何だ?」
「このウルフを倒す依頼は商業ギルドから受けたもので、私達は今から依頼達成の報告をしなきゃいけないんですけど……肝心のギルドの場所が分からなくて」
私がそう言うと、金髪の冒険者は言葉を失った様子でその場に立ち尽くした。
「……それで町中をそんな風に歩き回っていたと。というかそれ、どうなってるんだ?」
「すいませんが商業ギルドの場所を教えて貰えませんか?」
「え、ああ………案内してやるよ」
金髪の冒険者はそう言って歩き出し、私達もそれに着いて行った。
「それにしても中型の獣を討伐するんなら荷車ぐらい用意しとけよ」
「それを買うお金が無いもので、あはは………」
「おいおい、流石にそんな冗談じゃ俺は騙せないぜ。大体金が無かったらどうやって生活するんだよ」
お金が無いから宿にも泊まれないんだよね。
まあ人形の体だから食べ物は要らないし、疲労しないしで便利だけどね。
そういえばノアは霊体だけど、お腹とか空かないのかな? 肉体じゃ無いから大丈夫………か?
「ほら、着いたぞ。ここが商業ギルドの裏口だ」
金髪の冒険者はそう言って大通りからは離れた場所にある建物に私を案内した。
その建物に二階は無く、他とは違ってとても無機質だった。
これが商業ギルドか。
なんか思ってたのと違って倉庫って感じの建物だな。
というか金髪は意外と優しかったんだな。少し見直したかも。
「商業ギルドの依頼は場所の指定が無ければほぼ全てこの場所に依頼品を持って来れば良い」
「ああ、どうも有難うございました」
これで後はウルフ三匹を渡せば依頼達成。
一匹五千オルムって書いてあったから全部合わせて一万五千オルムか………ウゥン、高いのか安いのか分からないな。
まあ宿代稼げてればそれで良いし、サッサとこのウルフとおさらばしよう。
「それじゃあ」
「ん、ちょっと待て」
私が金髪の冒険者に別れの挨拶をしようとすると、冒険者はそれを遮って私を呼び止めた。
「何ですか?」
「報酬がまだだろ? ここまで送り届けた報酬が」
き、金髪……。
少しは見直しかけてたのに………まあ道案内してくれた事には感謝してるし、別に良いか。
「わ、分かりました。それでいくらですか?」
「ウゥンそうだな………五千でどうだ?」
この金髪野郎!




