二十七話 二人の冒険者
「結構倒したね」
「二十……六くらい?」
「ええ、多分そのくらい。まあスライムだからあまり報酬は期待できないけどね」
そっか、スライムはお金にならないのか。
まあ冒険者になれば伸び伸びと好きな依頼を受けられるし、今日はお金を稼ぐ事よりノアと冒険者になる方法を考えないと。
「それじゃあコレ持って帰ろうか」
「………スライム触るんですか?」
「ああ………頑張れば触らずに袋へ入れられる……と思う」
さ、触りたくないなァ。
いや待てよ、骸骨さんなら触らずにスライムを袋の中に入れられるんじゃ?
「ねえ、骸骨さん。スライムを袋に入れられる?」
「分かりました」
私はアンナにそう囁いた。
すると、それを聞いたアンナが目の前に集められていたスライムの亡骸を一気に浮かせ始めた。
「おお、浮いてる!」
「あの、袋を広げてください」
私がそう言うと、女の冒険者は鞄から麻袋を取り出した。
そしてその麻袋を両手で広げると、それを見た私はアンナに合図をしてスライムを袋の中に入れさせた。
「よし、それじゃあ戻ろうか」
冒険者はそう言うと、スライムの入った麻袋を背負って歩き出した。
--ロペルの町--
私達はスライムを討伐してロペルの町に戻った後、冒険者ギルドの裏手にいた。
「ここで何をするんですか?」
「依頼の達成を報告するためにこの中身を見せるの」
へえ、ギルドの人に見せるのか。
じゃあ取ってきたスライムは全部ギルドの人が処分するのかな?
だとしたら結構大変そうだ。冒険者の人が大きい身体のモンスターを討伐してきたら、それもどうにかしないといけないし。
というか持ってくる側もそれなりに大変だし、意外と冒険者ってめんどくさいんだなァ。
『コンコン』
「ハァイ」
冒険者は裏手にあった扉をノックした。
するとその音を聞いて出てきたのは、昨日冒険者達を宥めた女性だった。
あ、あの人は昨日の。
もしかして本当にギルドの人なのかな?
「あ、もしかして依頼の達成報告ですか?」
「はい、スライムの討伐を」
やっぱりここで働いてるのか。
というか冒険者ギルドって一人しか雇ってないのかな?
だとしたら結構な激務なんじゃ。
「もう、今は私しかギルドにいないんですから、ギルドが出した依頼受けないで下さいよ」
「だって冒険者ギルドの依頼は他のより楽だから」
あ、やっぱり他にもいるんだ。
今はいないってどういう事だろう? 最近辞めて今人手を探してるとか?
まあどうでも良いか。
それよりもギルドの出した依頼ってどういう事なんだろう。
「あの」
「あ、ごめんごめん。えっと、依頼を受けるにはまず大前提として出された依頼がなければいけないって事は分かるでしょ? で、その依頼を出す人の事を依頼主と言うの。それで依頼を出すのはギルドだけでなく、一般人や旅人、商業ギルドなんかも出したりする。その場合は依頼主に直接依頼達成の報告をしなくちゃいけない。そして今回はその依頼主が冒険者ギルドだったからここに来たの」
なるほど、依頼を出す人は一杯いるのか。
それでこのスライムは依頼主の冒険者ギルドに渡さなきゃいけないと。
「あれ、君は昨日の。本当についていったんだ」
ギルドの女性はそう言って私の方を見た。
「ああ、はい」
「それで、どうでしたか?」
「いやァもう凄かった。あんなに凄いのは私初めて見ました」
この人凄いしか言ってないな。
でも私をここまで立ててくれるのはありがたい。
「へえ………あ、それじゃあこのスライムは私が預かりますね」
ギルドの女性はそう言うと地面に置いてあった麻袋を持って、ギルドの中に入っていった。
「それじゃあ今から冒険者登録する?」
「え、もう出来るんですか?」
「いつでも出来るよ」
なんか意外と軽い感じで冒険者になれるんだな。
まあなれるならそれで良いけど。
というか報酬は? まだ貰ってないような気がするけど……。
「じゃあギルドの入口に行こう」
そう言って冒険者と私達はギルドの入口に周った。
よし、いよいよか。
まあ私が冒険者になるのは何とかなる。問題はノアだよね。
誰にも見えないノアは冒険者になれるのかな?
『ガチャ』
冒険者と私達は扉を開けて、ギルドの中に入った。
ギルドには冒険者が数名と、カウンターにはさっきスライムを受け取った女性がいた。
「よう、昨日の」
すると一人の冒険者が私達に話しかけてきた。
声のした方へ振り向くと、そこには昨日私をからかっていた金髪の男がいた。
げ、あいつは昨日の金髪。こんな真っ昼間から何してるの?
ん、なんかこの人ふらついてる………? もしかしてお酒飲んでたりする!?
「何しに、きたんだ……」
どこからどう見ても酔ってる。
というかやっぱりここのギルドでもお酒飲めるのか。
もう酒場なのか何なのか分からないな。
「あのォ………」
「ほら、酔っ払いはいいから行こう」
「誰が酔っ払いだって、うわッ」
すると金髪の男はふらつく足が絡まり勢いよく地面に転げた。
な、めっちゃ酔ってる。
冒険者って昼間からこんなに飲むの!? ノアの記憶でもこんな冒険者はいなかったけど。
「い、行こうか」
「はい……」
「うう、何で……」
ん、今何か言って………。
「何で俺は振られたんだ」
ええ、失恋してたのか。
それでこんなに酔って……。
まあいいか、そんな事より早く冒険者になろう。
「冒険者登録ですね」
「あ、はい」
「ではこちらに名前を」
受付嬢はそう言って一枚の紙を目の前に置いた。
み、見えない。私の身長が低すぎてカウンターの上が見えない。
この高さ、よじ登れるかな?
いや、ノアに浮かせてもらえば……。
「あ、ちょっと待ってね」
「え?」
冒険者はそう言うと、私の横腹を両手で持ち上げた。
「どうもすいません」
「ああ、いいよいいよ」
これは………もう親だな。
ま、まあいいや。それよりこの紙に名前を書くのか。
これは契約書か何かかな?
あ、そういえば名前どうしよう。ユウカでいいかな? でも最初に私の名前をノアに言った時は結構不思議そうな感じしてたな。
あの時私は苗字が言いにくいのかなって思ったから下の名前で呼ばせたけど、本当は秋山ユウカという名前自体聞き馴染みが無かったのかも。
「どうしたの?」
「ああ、すいません。今書きます」
少し考え込みすぎたな、早く名前書かないと。
ウゥン………ユウカ、ユウ、ユカ………何処からか名前を取っていい感じに。
スケルトン……いやミノタウロスから取って私の冒険者名はミノにしよう。
私は側にあった羽ペンを手に取ると、紙にミノと書いた。
よし、これで良いか。
「ミノ? 君ミノって名前なの?」
「あ、はいミノです。私の名前はミノと言います」
ミノ、で良かったよね。
変じゃないかな?
「えっと、それじゃあミノで登録を」
「あ、ちょっと待って下さい。その登録の紙ってもう一枚ありますか?」
私がそう言うと、受付嬢は辺りを見回した。
「もう一人いるの?」
「はい」
私の返事を聞いた受付嬢と冒険者は首を傾げた。
そして紙を一枚取って、私の目の前に置いた。
「よし、エレノア……と。これでよし」
これでやっと冒険者になれた。いやァ、色々あったけどまあ勉強になったかな。
あ、そういえばノアは冒険者名エレノアで良かったのかな?
後から変更できると良いけど………。
「ミノとエレノアですね……はい、冒険者登録出来ました」
受付嬢がそう言うと、それを聞いた冒険者は持ち上げていた私を地面に降ろした。
「それで、もう依頼は受けられるんですか?」
「気持ちは分かるけど、明日からでも良いんじゃない? ミノ」
「まあ、そうですね。それじゃあ」
私は受付嬢と冒険者にそう言いながら、ギルドの扉を開けて外に出た。
『ガチャ………バタン』
「じゃあね」
「……それにしても、エレノアって誰なんでしょう」
受付嬢は名前が書かれた紙を見てそう問いかけた。
「さあ………でも」
「ん、何ですか?」
「あの娘の身体、なんか変なんですよね」
女の冒険者はそう言って自分の手を閉じたり開いたりしていた。
「変……ですか?」
「肉付きが悪いというか何というか………まるで、人形みたいな」
「………もしかして家庭に何か問題が」
「そう、何ですかね……」




