二十六話 スライムを倒す
「君、空を飛べるの!」
フッフッフ。見てる見てる。
このままササッとスライムを倒して私が強いという事を認めさせれば、冒険者になる事になんの反対も無いだろう。
「ノア、このままスライムまで一直線に飛んでいって。そしたら私がキックして攻撃するから」
「分かりました。それでは行きますよ!」
エレノアはそう言って私を持ったまま勢いよくスライムまで下降した。
『ドッ』
そして私の足がスライムの体を貫くと、あちこちにその破片が飛び散った。
フフンッ、どうだ。結構インパクトはあったんじゃないかな。
この調子で他のスライムも粉々に………ってあれ? 二人ともこっちをじっと見てるけど、驚いてるって感じじゃないな。
「ああ、スライムくっついてる」
「へ?」
スライム………?
私の体についたこのスライムに何かあるのかな?
「スライムの粘液は身体につくと取れにくいの」
「粘液って私の体に沢山ついたこのベトベトの事!?」
「ええそう………一緒に身体洗いましょうか」
やっちまった、まさかそんな事実があるなんて。
というか初めに言ってくれても良かったんじゃ。
ん? ちょっと待てよ。
今体を洗うって言った? そ、それはまずい。
流石に私の体に触れられるとこれが人形だって気付かれてしまう!
「あ、いやその、自分でできますから」
「いやでも背中にもついて」
「だ、大丈夫ですよ! 私、結構関節柔らかいので!」
私はそう言いながら走って物陰に隠れた。
「危なかったですね、ユウカ。まさかスライムにそんな危険があるとは」
エレノアは少し怒った様子でそう言った。
「いや本当だよ。でもこの粘液どうしよう」
「ユウカ様、それなら何とかなるかも知れません」
「本当? それなら良かった」
いやァさっきは人形の体がバレそうで冷や冷やしたけど、何とかなりそうなら一安心だ。
それにしてもスライム、奴は恐ろしいな。次からは気をつけよう。
「ユウカ様、一旦ローブを脱いでください。そうしたら私が魔術でその粘液を落とします」
「分かった、ちょっと待って」
私はそう言って自分の着ているベトベトのローブを脱いだ。
「これで良い?」
「はい。ではいきますよ」
アンナがそう言った途端私の体についた粘液が見る見るうちに取れていき、地面にボトボトと落ちていった。
へえ、凄いなァ。魔術でこんな事が出来るのか。
一体どうやっているのかな? 風を操るって感じでもないし。
「出来ました。ローブの方もやっておきます」
私の体の粘液が綺麗に取れた事を確認すると、アンナは粘液まみれのローブを浮かせて綺麗にし始めた。
こんな便利な事ができるなら私も魔術を扱えるようになりたいな。
そうすればできる事も増えそうなんだけど。
ん、そういえばノアはどこ行った?
私は近くにいたエレノアは何処かと辺りを見渡した。
「ユウカ様、ローブの粘液も全て取れました」
「お、ありがとう。ねえ骸骨さん、ノアは」
『ドォン』
すると突然池の方から聞き覚えのある爆発音が鳴り響いた。
「こ、この音………ノアだよね」
「そう……ですね」
私は綺麗になったローブを着ると、小走りで冒険者の元へ向かった。
「あ、だ大丈夫だった、良かった」
「一体さっきの爆発は!?」
二人の冒険者は戦闘態勢をとりながら私の方を向いてそう言った。
あ、これはまずい。
どうにかして誤魔化さないと。
「あ、あの爆発は私です」
「え!? 君がやったの!?」
「嘘だろ、本当に子供か?」
いいえ子供ではありません。年齢的には三十超えてます。
ってそんな事言っても信じてもらえないだろうし、それを証明できる証拠もないからなァ。
「君、何者?」
「あ、アハハ」
ま、まあ待て。プラスに考えよう。
これで私の力を見せつけるという目標は叶った。
ちょっとやり過ぎな気もするけど……。
「ふう」
すると爆発のした方からスッキリとした顔のエレノアが戻ってきた。
「の、ノア何やってたの?」
「えっと、その………スライムが飛び跳ねていたので、つい」
それで怒って火球撃ったって、それは流石にスライムもビックリだよ。
いやスライムだけじゃなくて私達も相当驚いたけど。
というかノアって意外と短期だったんだ。
「君、どうしたの? 一人でブツブツと」
「あ、いや少し考え事を」
「そう………それで今の爆発の事なんだけど」
やっぱり追求するよね。
私強いですっていうので納得してくれないかな……。
「君、私達の仲間にならない!」
「「え?」」
杖を持った女は目を輝かせながらそう言った。
そしてそれを聞いた私ともう一人の冒険者は同時に驚きの声を上げた。
「急に何言ってるんだ?」
「だって、空を飛べるだけでも凄いのに、魔術か魔法か分からないけどあんな威力の攻撃もできる。誘わない理由がある?」
「いや、だが………」
急に何かと思ったら……。
まあ確かに私も同じ立場にいたら勧誘しそうだけど。
でも私はノアと冒険者になるって決めてるし。そうじゃなくても空中浮遊と火球はいずれバレるかもしれないからね。
「折角のお誘いですが……」
「そう、残念……まあしょうがないわ」
冒険者は少し残念そうにしていたが、すぐに立ち直ってそう言った。
「そんな事より、どうやって空を飛んでるの? アレ私にも出来る?」
「あ、あの」
「ねえ、どう?」
すっごい食い気味にくる。
どう説明すれば良いものか。
んん………。
「ねえ!」
「えっと、ちょっと教えられないというか、何というか」
「ええ、そんな……」
そ、そんなに落ち込む? 実際に空を飛んでみてもあんまり爽快感とかなかったけどな。
でもまあ飛ぶ前は憧れてたかな? 子供の頃とか。
「あの、他の冒険者の人達にこの事は……」
「何で? あんな凄い力があるのに………? もしかして家の事情とか?」
「あ、はい。そんな感じです」
何とか誤魔化せそうで良かった。
ノアがスライムに向かって火球を放った時はどうしようかと焦ったけど、この冒険者の人が勝手に勘違いするお陰で下手な芝居しないで済んだし。
この人は少し思い込みが過ぎる所があるけど、まあ良い人だな。
折角だしこれで冒険者になれるか聞いてみるか。
「あの、それで私は冒険者になれますかね?」
「そりゃああんな力があるんなら。でも冒険者になるよりどこかの貴族に仕えた方がいい暮らし出来るんじゃない?」
「いえ、私はそれよりも冒険者になりたいんです」
まあ貴族って言ったら悪い印象しか無いしね。いやそれは漫画の見過ぎか。
でもこれで冒険者にはなれそうだな。
問題はノアも一緒になれるのかって事かな。
「それでどうする? 依頼は続けるの?」
「はい。私、お金が欲しいんで」
依頼を一杯こなさないと宿にも泊まれないからね。
今日で止まる分のお金稼げると良いけど。
「そう、それじゃあ私達も手伝うから頑張ろう」
「手伝うって、やるのは俺だろ」
「ふふ」
それから私と冒険者は別れてスライムを狩った。
『ブチュッ』
やっぱり石で倒すんだね。
私の方もどうにかしてスライムを倒さないと。
ノアの火球じゃ地形ズタボロだし。
私も石投げようかな。
私はそう思い立ち、すぐ近くに落ちていた小石を手に取ると、目の前にいたスライムに思いっきり振りかぶって投げた。
「あ、あれ?」
だが私が投げた小石はすぐに勢いを無くしてスライムの前にポトッと落ちた。
やっぱり私が投げても全然威力が無い。人形の体だからかな?
骸骨さんなら粘液を落とした時みたいに石を浮かせてスライムに当てられるかな?
「ねえ骸骨さん、あの石を浮かせてスライムを攻撃できる?」
「分かりました、試してみます」
アンナはそう言って私の投げた石を浮かせると、勢いよくスライムに飛ばした。
『ブチュッ』
「おお、凄い!」
そしてアンナが飛ばした小石は、スライムの体を貫いた。
これなら沢山スライムを倒せそうだ。
私は何もしてないけど。
「ユウカ、私も手伝います」
「ノア?」
エレノアはそういうと辺りの石を拾い集めてスライムに投げ始めた。
「ユウカ様、私も頑張ります!」
え、なんか二人が競い始めたんだけど。
まあ依頼が早く終わるなら別に良いか。
スライム
スライムはこの世界で最弱と言われる程弱いです。
やろうと思えば子供でも倒せます。
体は中が見える程半透明で、個体によっては先の景色が透けて見える物もいます。
スライムの大きさは大小様々で、その場の環境によって性質も大きさも変わります。
スライムの体の中にはちゃんと臓器があり、いつも地面に接している面には口もあります。
攻撃方法はどのスライムも共通して体内の酸で相手を溶かす攻撃です。
ですがスライムが身体に引っ付かない限り、殆どその攻撃は当たりません。
それに酸と言っても長時間掛けないと皮膚を溶かせない程弱い物ですので、誰も気にしてません。
スライムにはちゃんと中身があるので、剣でも魔法でも倒す事は可能です。
ですが皆その体から溢れ出る粘液が嫌いなので、まともに戦おうなんて考えません。
スライムは主にジメジメとした暗く湿った場所や、水辺などの周辺でよく見られます。
そして極端に乾燥を避けたがるので、しばらくの間砂漠などに放置していたらシワっシワに枯れ果て、いずれ死にます。
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