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死霊術士は生き還る  作者: ク抹茶
カラクリ人形編
26/143

二十五話 ユウカ空を飛ぶ

 その日の朝、小鳥の囀りと共に私は目覚めた。


「おはよう骸骨さん」

「おはようございますユウカ様」


 昨日はうるさくて寝るのに苦労したな。

 心なしかスケルトンの拠点よりもうるさかった気がする。

 というかこんな所で寝てる子供なんて他人から見たら相当心配する状況だよね。

 今は……まだ日が昇り始めた頃か。


「おはようございますユウカ」

「おはようノア」


 さてと、今日は冒険者になる為に頑張らないと。

 そういえば待ち合わせは何時とか聞いてないけど………もうギルドに行って良いのかな?


「ユウカ様、この後はどう致しますか? もうギルドへ?」

「そうだね、早めにギルドで待っておこう」


 まあ他にやる事もないしね。

 いやァでも楽しみだなァ。


 静まり返る町の中、私達は冒険者ギルドへ向かった。

 路地を抜け大通りに出ると、今度は迷わずにギルドの前まで来る事ができた。


「よし、ここでしばらく待っていよう」


 私達はまだ人通りの少ない朝の大通りを、ギルドの扉横で眺めながら冒険者が来るのを待った。

 その間に段々と行き交う人は増え始め、閉じていた門も開いた。


「お、嬢ちゃんじゃないか」


 すると突然男の声が聞こえてきた。

 私が振り向くとそこには昨日会った大きな身体の冒険者がいた。


「あ、おはようございます」

「おう、おはよう。って、こんなに朝早くから待ってるのか?」

「ああ、はい。あはは」


 やっぱり早くきすぎたのか。

 今何時くらいだろう? まだ待たなきゃいけないのかな?

 この人に聞いてみるか。


「あの、昨日の冒険者の人達はいつ頃来ますか?」

「え、ああ………もうすぐ来るんじゃないか?」


 この人絶対いつ来るか知らないよね。

 まあ気長に待つか。ここで道ゆく人を眺めてるのも悪くないし。

 あ、でもこんなに人が増え始めたらノアが昨日みたいに人酔いしちゃうな。


「それじゃあな」


 男は右手を軽く挙げてギルドの中に入っていった。

 そして私はその後にエレノアの顔色を伺った。


 うゥん、少しキツそうな表情してるかな。

 休ませてあげたいけどこの近くにノアが落ち着きそうな場所はないし。

 どうしようか………あ、そうだ屋根の上なら結構休めるんじゃいか?

 ノアなら飛んでいけるし。


「ノア、気分が悪いなら休んで良いよ。屋根の上とかなら落ち着くんじゃない?」

「…………いえ、私はユウカとここにいます」


 エレノアは建物の屋根上を見たまましばらく考えた後、私の方を向いてそう言った。


「そう………」


 ノア、キツくないのかな? 顔色は優れてないように見えるんだけど。

 ……もしかして昨日人酔いしてギルドが見つからなかった事に責任を感じてるのかな?

 そんなに気にしなくても良いのに。


「じゃあノア、私に寄り掛かってなよ」

「……良いのですか?」

「うん」


 それを聞いたエレノアは私の肩に手を置いて身体を休めた。


「すいません、初めての都会で」

「別に良いよ」


 これで少しは落ち着くと良いけど。

 というかこの町でこんなになるんだから、私が初めて見たあの国に行ったら気を失うだろな。


 私達はその後もしばらくギルドの前で冒険者を待った。

 その間にも昨日ギルドにいた冒険者達が入っては出ていった。


 この町を見てて思ったけど、人間しか見かけてないな。

 いや、ノアの記憶でも見た事ないし、滅多に姿を現さないのかな。

 異世界といったらエルフとかドワーフだと思うんだけど。

 あ、あと獣人とかも見てみたいな、尻尾の付け根とか気になる。いや一番気になるのは耳がいくつあるのかって事だよね。そこら辺見てみたい。


「おはよう、朝早いのね」

「おはよう」


 そんな事を考えていると、突然二人の男女が声を掛けてきた。

 私が声のした方に振り向くと、そこには昨日ギルドに案内してくれた冒険者がいた。


「あ、おはようございます。それで、いつ依頼をしに行くんですか?」

「ああそうね、今から依頼を決めるから見てみる?」

「はい!」


 依頼の受け方か……言われてみればどうやって依頼を受けるのか分からないな。

 冒険者になる前に学べて良かった良かった。


 そして冒険者達はギルドに入って行って私達もそれについて行った。


「ここで依頼の内容を選べるの」


 杖を持った女はそう言って壁の掲示板に貼ってある紙を指差した。

 そこには大きい板にほぼ満遍なく文字や絵が書かれた紙があった。


 おお、昨日は気づかなかったけどこれが依頼書か。

 内容は………ふむふむ。

 殆どが町やその周辺の雑務だな。

 掃除をしてくれ、ペットを探してくれ……ってこれ冒険者がやる事なの? 冒険者も大変だなァ。


「そうね……それじゃあこの依頼はどう?」


 杖を持った女は一つの紙を指差して、盾を持った男に見せた。


「ああ、良いんじゃないか?」


 男がそう言うと女は指差した紙を手に取って、腰にかけていた鞄に入れた。


「それじゃあ行くわよ」


 杖を持った女は私にそう言ってギルドを出た。


 あれ、もうギルドを出るのか。

 というかさっき指差してた紙を受付の人に渡さなくても良いのかな?


「あの」

「どうかした?」


 私はギルドを出て大通りを歩きながら冒険者に問いかけた。


「あの板の紙って受付とかしないで良いんですか?」

「ああ、あれは依頼を達成した時ギルドの受付に渡せば良いわ。まあ見ながら覚えて」

「あ、はい分かりました」


 そしてそのまま私達は町の門から出た。


----


「ふう、着いた……」


 私達は町を出てしばらく歩くと、少し広い池に辿り着いた。


「ここが目的地ですか?」

「ええ、ここでスライムを倒すというのが今回の依頼ね」


 おお、スライム!

 そういえば異世界に来てから一度も見かけてないな。

 スライムといえばなんか柔らかいってイメージしかないけど、アイツって物理攻撃効かないんだっけ?

 まあそうだよね。斬ったら分裂してさらに増えそうだし。


「あ、いたいた。ほら、あそこにスライムがいる」

「お……本当だ」


 杖を持った女が指差す方向を見ると、池の横でピョンピョンと跳ねるスライムがいた。


 あれがスライムか……なんかちょっと可愛い。

 水辺で跳ねて遊んでるのかな?


「今からアレを倒すんだけど………任せたわよ!」

「え、俺かよ」


 女はそう言って男の背中をポンと叩いた。


 あれ? 女の人が倒すんじゃないのか。

 身なりからして魔法使いっぽいんだけど。

 あの男の人はどう見ても戦士って感じだし。


「俺スライム嫌いなんだよね」


 男はそう言って近くに落ちていた石を手に取ると、スライムめがけて勢いよく投げ飛ばした。


「え!」


 だが男の投げた石はスライムには当たらなかった。


「あ、あの」

「ああ、幻滅したでしょ。冒険者って強い獣や魔物と戦うって皆んな思ってるかもしれないけど、実際そんな事が出来るのは一握りだから。あと自分の武器をあんなスライムで消耗させたくないからこういう風に投げ物を使ったりするの」


 ま、まあそれは理解できるけど、スライムに物理は効くのか?

 いや、効くのなら別に良いけど。まさか石を投げるとは……。

 というか強敵となら既に一度戦ってるからそこら辺は問題ない。


『ブチュッ』


 すると突然聞いた事もない音が聞こえてきて、私が音のした方を見ると、石が命中してそこから中身が溢れ出ているスライムがいた。


 い、意外と気持ち悪い。

 スライムの中身ってあんなドロドロしてるんだ。


「やった?」

「多分」


 冒険者はそう言ってスライムの元まで駆け寄って行った。

 それを見て私も冒険者について行った。


「ほら、これがスライムだよ」

「なんというか……こう」

「気持ち悪い?」

「はい……」


 これがスライムか、間近で見ると思ってたより柔らかくなさそうだな。

 それにしてもスライムは石を使って倒すのか、勉強になるな。

 いやでもこれならスケルトンの攻撃の方が早い気が。


「そして今回の依頼はここの池のスライム討伐なんだけど、少なくともあと十体は倒さないと報酬は貰えないから」


 十体か………意外と少ないな。

 スケルトン一体ですぐ終わりそう。


 私は辺りの水辺を見渡し、そこに十数体のスライムがいる事を確認するとそう考えた。


「あとこういう討伐系の依頼だと倒したっていう証拠がいるから」

「証拠ですか?」

「うん。このスライムだとこれコイツ自体持っていかなきゃ行けない。まあ殆どの場合牙とか体の一部を取って持っていくけどね」


 なるほど、それで報酬を貰うわけか。

 いくら位なんだろうか?


「それじゃあやってみる?」

「え、良いんですか?」

「まあ無理にとは言わないけど」


 よし、ここで私の実力を見せつける時。

 いや厳密にはノアがやるんだけどね。

 さて、それじゃあ先ずはノアに私を浮かして貰わないと。


「頼んだよ、ノア」

「はい、任せてください」


 私はエレノアに小声でそう囁いた。

 私の近くにいたエレノアはそれを聞くと、私を後ろから抱き締めてゆっくりと上へ持ち上げた。


「え……ええ!」

「こ、これは……飛んでるのか!?」


 さあ見よ! 私の空中浮遊を!

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