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死霊術士は生き還る  作者: ク抹茶
カラクリ人形編
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二十四話 町の夜

「なんだ嬢ちゃん、依頼か?」

「いや、もしかしたら冒険者になりに来たのかもしれないぞ」


 一人の大きい男が私にそう尋ねると、金髪で細身の男がニヤけながらそう呟いた。


「そ、そうです。私達は冒険者になる為にここに来ました」

「おいおいマジかよ」

「おい、誰か親探し手伝ってやれ」


 私が冒険者になると言ったと同時にその場にいた冒険者達はクスクスと笑いだした。


 ぼ、冒険者ってこんなに性格悪い人が多かったのか。

 ………でも、これってチャンスなんじゃないか?

 私が馬鹿にされてる今、浮遊して見せたら皆んなきっと驚くだろう。

 ふふふ、私とノアの力を見るがいい!


「い、今だよノ」

「ん、なんだ? どうかしたのか?」


 エレノアに私を持ち上げさせるよう囁こうとすると、大きい男が割って入った。


 し、しまった。ノアに持ち上げてもらうにはノアと喋らなきゃならない。

 でもそうしたらここの人達に怪しまれる。

 違和感なく浮遊するには誰かと相槌を打っているような動作は見せないようにしないと。

 うゥん……そうだ! 両腕を広げて分かりやすく持ってくれと伝えよう!


「皆さんあんまり子供をいじめないでくださいよ」


 私が腕を広げようとすると、突然若い女性が冒険者達を宥めた。


「いやァ別にいじめてる訳じゃ」

「ねえお嬢ちゃん、お父さんとお母さんは?」


 若い女性は私の元へ近づいて、目の前で屈みながらそう言った。


「え、いや冒険者に……」

「あのね、君はまだ子供でしょ?」


 うう、なかなか上手くいかないな。

 というかこの人誰? ここにいる冒険者の女の人とは少し違うみたいだけど。

 なんかキチッとした服着てるし、ここのギルドの受付嬢とか?


「まあまあ、良いじゃねえか。本人が冒険者になりたいつってんだから。フッ」

「で、ですが……」


 さっきからこの金髪の人の態度は気に入らないけど、強引に押せば承諾してくれるかも。

 よし、押して押して押しまくるぞ!


「冒険者にッ」

「それじゃあ一度誰かの依頼に同行させてみれば良いんじゃない?」


 私が勢いよく喋り出そうとしたその時、一人の色っぽい女性がそう提案した。


「おお、それ良いな! それでどうだ?」

「いや、でも……」

「少し怖い思いさせてやれば諦めるだろ」


 さっきまで皆んな反対してたのに、急に賛成してくれるなんて……。

 いや、面白がってるだけか。


「おい、お前ら連れて行ってやれよ」


 金髪の男はそう言いながら私達をギルドまで案内した三人の冒険者を指差した。


「え! 俺たちですか!?」

「当たり前だ。お前らが連れてきたんだろ」

「えェ……」


 依頼の同行か。結構良いかも知れないな。

 この人達に着いていくついでに強い奴を倒せば皆んなぐうの音も出ないだろう。

 この場で浮遊するよりも良いかも知れない。

 決して浮遊する作戦に自信がない訳ではない、決して……。


「じゃ、ちゃんと冒険者の厳しさを教えてやれよ」

「は、はあ」


 三人は少し憂鬱そうにギルドを出ると、私達も後ろから着いて行った。


「ほ、本当に冒険者になるつもり? 親は反対してないの?」

「親ですか……」


 私の親は日本にいるから承諾の求めようが……。

 んん、どうにかして誤魔化すか。


「えっとですね、親は」

「もしかして……いや、ごめんなさい。言わなくて良いわ」

「え、なんだよ」

「いいから」


 あれ、何か勘違いされてない………? ま、まあいいか。

 嘘を付く必要が無くなったんだし。


「それで、いつ出発するんですか?」

「今日はもうすぐ日が暮れるから、また明日ね。朝このギルド前で待ち合わせましょう」

「はい、分かりました」


 明日か………。

 そういえば今夜は何処で寝よう。

 森の中みたいにスケルトンを出す訳にも………宿あるかな?

 いや、そもそも私は泊めてもらえるのか?


「俺は明日用事があるから」

「まあ、教えるだけなら二人でできるし」

「そんじゃあな」


 盾を持ってない方の男はそう言うと、どこかえ行ってしまった。


「それじゃあまたね」

「はい、明日また」


 そう言って私達もその場を後にした。

 そして三人の冒険者と別れた後、私達はもう一度路地に戻ってきていた。


「ユウカ、大丈夫ですか?」

「うん大丈夫。でもなんとかなりそうで良かったよ」


 年齢制限はないけど、普通に考えて子供が危ない事するのは見過ごせないよね。

 だとしてもあそこまで馬鹿にすることもないと思うけど。

 あそこで提案してくれた女の人には感謝だな。

 いや、それにしてもあの人のスタイル凄かったな。特に胸が……。


「ユウカ様をあそこまでコケにするなんて、私は怒りを禁じ得ません!」

「まあまあ。明日いい結果を出して皆んなをギャフンと言わせよう」

「「はい!」」


 とは言うものの、先ずは今日の事を考えないと。

 ひとまず泊まるとこを探して休みたい。


「それじゃあ近くの宿でも探そうか」

「はい」

「ユウカ様、それなら後ろにもう」

「え?」


 アンナの言葉を聞いて後ろを振り向くと、そこには宿屋の看板をぶら下げた建物があった。


「おお、探す必要もなかったな」

「それで、どうしますか? 私達はお金を持っていませんが」

「………あ」


 そうだった、泊まるにはお金が必要だった。

 いや当たり前の事なんだけど、すっかり忘れてた。

 うゥん……でも、もうすぐ日も暮れるし今すぐにお金を稼ぐのは無理そうだな。

 てことは今日も野宿か。


「まあしょうがないか。冒険者になったらバンバン稼ごう! でも今日はもう一回森に戻ろう」

「そうですね」

「えっと、確か入ってきた門はこっちだったよね?」


 私はそう言いながら町に入ってきた門がある場所へ向かった。


「こ、これは」


 だが私達がその場に着くと、朝は開いていた門が既に閉じていた。


「もう、閉まっていますね」

「うん」


 朝は開いてたから大丈夫だと思ってたけど、まさかもう既に閉まっていたとは。

 まだ夕方くらいなんだけどな。

 というか、朝はあんなに開けっ放しだったのにもう閉じるって、夜に何かあるのかな?


「あれ、これって私達閉じ込められたんじゃ」

「そうですね……ですが私がユウカを持って飛べばこの位の壁は越えられるのでは?」

「ああ、たしかに」


 まさか私の作戦がここで役に立つとは。

 まあそれでもいいんだけど、誰かに見られたら未確認生物扱いされそうだし、出られるところを探した後でもいいかな。


「それは最終手段にして、まずは開いてる扉を探そう」

「分かりました。では壁に沿って行きましょうか」

「うん、そうだね」


 そう言って私達は出口を探そうと壁に沿って歩き始めた。


『ドンッ』


 だがその時壁の外から突然物音が聞こえた。

 その音は壁を叩く音のようで、何度も繰り返して聞こえていた。


「ん、なんだろう?」


『ドンドンドン』


 そして次第にその音は増えていき、遠くの壁からも鳴り響き始めた。


「おお、なんか凄いね。モンスターでもいるのかな?」

「私が少し見てきます」


 エレノアはそう言って壁よりも高く浮遊した。

 そして壁の外をしばらく見渡すと、私の元までスウッと戻ってきた。


「どうやら大量のアンデッドが壁を叩いているようです」

「ああ、まあ森が近くにあるしね」


 この壁はアンデッドから町を守るためのものだったのか。

 だから夜に近づくとすぐ閉じていたわけね。

 でもそれじゃあ夜に町に来る人はアンデッドの餌食になるんじゃ……いや夜に閉まるって分かってたらそもそも朝しか来ないか。


「それじゃあどうしよう。もういっその事、路地で休む?」

「そうですね、それ以外にどうしようもありませんし」


 結局まだベッドで眠れないけど、森にいるよりはマシか。

 まあ肌の感覚無いから何処で寝ようが変わらないけど、うるさいのはなァ。


 私はそんな事を考えながら休むのに良さそうな場所はないかと辺りを見渡した。

 そして丁度良さそうな建物の間を見つけると、その場所まで小走りで向かった。


「ここはどう?」

「はい、良いのではないですか」

「では私が見張りをしておきますので、ユウカ様はお休みになってください」

「うん、おやすみ」


 その日、私とエレノアは鳴り止まない騒音の中で眠りについた。

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