二十話 加護の力
「ユウカ様ユウカ様ユウカ様」
や、やっぱり同行を許可したの間違いだったかな……。
「あまり騒がないで下さい……あ、アンナさん」
「ああ、ごめんなさい」
ノア、名前呼びにくそうにしてるな。
まあそうだよね、今までお母さんとか呼んでいたのに急にアンナだもん。
というか、案外可愛い名前していたんだな。
「あ、そう言えば!」
「どうかしましたかユウカ?」
ノアと骸骨さんが話してたから言い出せなかったけど、私はこの遺跡からある物をくすねていたんだった。
「ジャジャァァン!」
私はそう言うと隠し持っていた物を天に掲げた。
「そ、それは!」
「そう、これはあのスケルトンが被っていた仮面。遺跡が崩れる前になんとか拾えたんだよ。いやァ、あの時は本当にギリギリだったよね」
絶対価値があると思って必死で回収したけど、改めて近くで見ると変な顔だなァ。
「ユウカ様、その仮面には何らかの符呪がなされている様です」
符呪? それって何だろう? なんか凄そうな感じがするけど。
「教えくれてありがとう。えっと……アンナさん」
「そんな、私には勿体なきお言葉。こちらこそ感謝致します。それとユウカ様、私のことは何とでもお呼びください」
何とでもか……アンナはちょっと呼びにくいし、お母さんは絶対違う。
んん……やっぱり骸骨さんでいいかな。
「それじゃあ骸骨さんで」
「はい、私は今から骸骨さんです! はあユウカ様に名前を付けて頂けて光栄です!」
「そ、それでいいのですか」
おお、凄い喜んでる。
そんな反応されるとなんか申しわけない気が……。
「ん。そんな事よりユウカ、もうすぐ日が暮れます」
エレノアはそう言って空を指差した。
私はエレノアが指差す方を見上げてもう既に空が赤く染まってる事に気づいた。
「そっか、アンデッド達が群がってくる。急いで安全な所に行かないと」
でも安全な所って何処だろう?
塔の拠点も遺跡の拠点も無くなったし、もう行く場所が……。
あ、そうだ良いこと思いついた! スケルトンを大量に召喚して、そいつらで私達の周りを囲むようにして立たせれば簡易的な拠点になるんじゃないの?
私は咄嗟に思いついた事を実行しようと、スケルトンで周りを囲ませた。
その際に一体一体の隙間をなるべく埋める為にスケルトン同士をギュウギュウに密着させた。
「一瞬で壁を作るとは、さすがユウカ様です」
アンナは頭をピョンピョンと跳ねながらそう言った。
「ふふん、凄いでしょ。でももう少し頑張れば天井も……」
あのアンデッド達が壁を這い上がって上から侵入して来ないとも限らないからね。
私はそう思いながらスケルトン達のバランスを上手く取って天井を作った。
途中何体か転げ落ちて来たが、案外上手く出来ていた。
「結構いい感じじゃない?」
「はい、これなら安心です」
この方法なら次から安全だな。
それにしてもこのスケルトン拠点、白いから見た目はかまくらに見える。
「ユウカ様、一息ついた所で私から頼みがあります」
急に真剣だな。
頼みって何だろう……変なことじゃないといいけど。
「図々しいことこの上ないのですが……私にカゴを与えてくださいませんか」
「かご……? 私鳥籠なんて持ってないけど。入りたいの?」
狭い所が好きとか? いやもしかするとMの人……。
て、そんなわけ無いよね。
いやでも最近は多様性の時代だし……。
「ユウカ、骸骨さんの言うカゴはおそらくユウカの言う籠では無いと思いますけど」
エレノアはクスクスと笑いを堪えながらこちらの方を向いてそう言った。
「カゴとはおそらく、神によって与えられる加護の事ではないかと」
ああ、そっちの!
なんか恥ずかしい間違いしちゃったよ。しかもノアに笑われちゃったし。
あれ、でも神様の加護って私が与えられるの?
「私、神様じゃ無いけど加護って与えられるの?」
「はい、可能です。既に一度加護を与えているようですし」
え! 嘘でしょいつの間に……。
でも一体誰に加護を……。
「……もしかして、私ですか?」
思いついた様な顔でエレノアは自分を指差した。
「ええ、あの強力な火球は魔術ではなく魔法なの。まあエレノアは加護に加えて祝福まで与えられている様だけど」
な、なんか一気に話が解らなくなった。
加護? 祝福? それって何? 魔術と魔法の違いは……詠唱がいるか要らないかだっけ?
ん、だとしたらノアの火球は魔術なのでは?
「あのォ……ちょっとよく解らなかったんですけど」
「ああ、失礼しました。簡単に言うと、加護とは上位存在と繋がりを持つ事を、祝福とは繋がりを持つ相手より与えられる物、と言った所でしょうか」
お、おお。分かった様な感じが……しないでもない。
というかノアの記憶でそんな事を言っていた様な言っていなかった様な。
「あれ、そうなると私はノアに何か渡した事になるけど。ノア、何か持ってる?」
「………この身体ですか?」
エレノアは少しの間考えるとアンナの方を見てそう言った。
「ええそうよ。前の霊体とは明らかに違うでしょう? おそらくその身体を形造る魔力が一向に減らないのは、ユウカ様に与えられた祝福のお陰ね。普通あんな威力の魔術を霊体のままで放っていたら、いずれ身体が消滅してしまうもの」
それを聞いたエレノアは驚いた顔をして、その次に今までの謎が解けたような表情をしていた。
ええ! 霊体ってそんな危ない状態だったの!
身体が消滅って……ノア自身も知らなかった感じだし、記憶で見た森の幽霊達は知らない場所でひっそりと消滅していたんだなァ。
「えっと、じゃあ私は骸骨さんに加護を与えればいいんだよね?」
「はい! ユウカ様が良いのであれば」
まあ減るもんじゃないだろうし……そういえば加護ってどう与えればいいのか……?
なんか詠唱とかないのかな?
「それじゃあいくよ?」
「はい、いつでもどうぞ」
まあ大丈夫かな、一応ノアに加護は与えられてるし……。
そういえばノアの身体が変わったのって、気を失ってノアの記憶を見た時だ。
じゃあ骸骨さんの記憶も観れるのかな?
私はそんな事を考えながらアンナを持ち上げた。
そして目を瞑り、心の中で頭蓋骨を思い浮かべながらひたすら念じた。
「おお!」
骸骨さんが何か言ってる。
成功したのかな? あれ、だとすると骸骨さんはどんな風になるんだろう?
ノアの時みたいに霊体になるのかな?
私はゆっくりと目を開け、アンナの方を見た。
だがそこにはノア以外に霊体はおらず、手に持った頭蓋骨はそのままだった。
「ノア、骸骨さんは?」
「……ユウカの手に乗っていますが」
え、でも骸骨のままだし。
もしかして小さくなったとか?
「ユウカ、どうかしましたか?」
「えっと、骸骨さんの霊体が見えないんだけど」
「ユウカ様」
あれ、骸骨から骸骨さんの声が聞こえる。
てことは失敗かな?
「ユウカ様との繋がりを凄く感じます」
「え、加護与えられたの?」
「はい、もう最高です!」
成功したんだ、その割には変化が見られないけど……。
「霊体じゃないの?」
「はい、エレノアの身体は祝福によるものですから」
なるほど。じゃあ祝福までは与えられなかったのか。
まあ、いいか。霊体になっていたら骸骨さんという呼び名に違和感覚えるし。
「それに見てください!」
アンナは意気揚々とそう言うと、突然空中に浮き始めた。
「が、骸骨さんが飛んでる!」
「と、飛べるようになったのですか?」
「これもユウカ様のお力あってこそです」
骸骨さんも飛べるようになったのか。
というか、何処かのお化け屋敷にこういうのありそう。
でも実際目の前に空飛ぶ頭蓋骨が現れたら驚くよね。
町とかに行くときは人目に付かないようにしよう。
「まあ、加護を与えられたんなら良かったよ」
「それではユウカ、これから先の事についてですが………何かありますか?」
そうだ。ずっとこの森に居るわけにもいかないし、何処かの町に……。
あ、そういえば遺跡のアンデッド発生部屋。あそこに行こう。
「この遺跡にアンデッドが出てくる場所があったでしょ? 私あそこに行きたい」
この世界に経験値とかいう仕組みがあるかは知らないけど、もしかするとアンデッドを倒しまくってたら進化するかもしれないし。
「ユウカ、あそこはもう無いですよ」
「え?」
「あの場所からアンデッドが発生していたのは遺跡の主がいたからなのです。主が倒された今、この遺跡は何一つ機能していませんよ」
う、嘘でしょ。
見てみたかったのにィ。
くそぉ、遺跡の主めェ………! て、倒したのは私達だった。




