十七話 乗り移る魂達
-魔術師のスケルトン部屋前--ノア視点-
この扉、勝手に………もしかしてこの奥に遺跡の主が……。
「あ、そうだ!」
「どうかしましたか?」
ユウカ、急にどうしたのでしょうか?
「ねえノア、この遺跡を攻略したら冒険者にならない?」
それは子供の頃の私の夢。
ユウカ、私の記憶を見て、それで……。
「冒険者………いいのですか?」
私はもう冒険者に憧れていない。
今はユウカの側にいるだけでいい。
ユウカには申し訳ないのですが、私はユウカの枷になりたくはない。
「うん。私は冒険者になって強敵と戦ってみたい」
そうか、そうだった。
ユウカは今まで自分のために行動してきた。私を救ってくれたときも。
「……わかりました、ここを出たら冒険者になりましょう」
それなら私はその手助けをしたい。
ユウカのためになりたいから。
-魔術師のスケルトンの部屋-
『ドォン』
「な、なにィ………」
「おお! 当たった!」
「やりましたユウカ」
「うん、バッチリだったよ、ノア」
少しはユウカの役に立てたのでしょうか?
そうだと嬉しいのですが。
そ、それよりもアイツは。
今の攻撃で倒せたのでしょうか?
「フフフ」
「え、今何か聞こえ」
「フハハハ」
な、なんでしょうかこの声!?
さっきの声とはまた違う、まるで青年のような。
「ようやくこの体に入れた」
体に、入れた……?
一体どういう……ハッ、体に穴が空いている。
もしかして、ここにいた別の魂がアイツの体に乗り移った!
「ノア、これは一体」
「おそらくですが、アイツの体には今別の魂が宿っています」
「べ、別のって」
困った事になりました。
こうなっては何度アイツを倒そうと、ここに彷徨っている魂がいればまた復活してしまう。
あの体を粉々に破壊すれば、もう乗り移ることは無くなるかも……しれない。
「ユウカ、アイツの」
(エレ………)
ッ! 今何か聞こえて……ユウカの声じゃない、誰か別の……どこかで聞いたことが……。
そう、私はこの声を聞いたことがある。
「ノアどうかした?」
「今、声が」
「声? アイツのじゃなくて?」
ユウカには聞こえていない!?
それじゃあこの声はどこから……。
(エレノア、やつに触れて)
「ふれ、る……」
「触れるって何に、ノア?」
触れるって………もしかしてスケルトンに!?
一体なぜ。いや、それよりもアナタは誰ですか!
私とどこかで。
(触れて)
触れるって……ヤツに近づくことさえ困難なのに。
「……ユウカ、アイツをどうにか出来るかもしれません」
「本当?」
「はい……アイツに触れることが出来れば」
さっきみたいに炎を当てても、すぐに体が乗っ取られてしまう。
かといって炎を一回一回当てていても、体が全て壊れきるまでこっちがもたない。
この声を信用はできない……けど、もしこれでこの状況をどうにか出来るのなら。
それに失敗しても触れるのは私。だから犠牲になるのは私だけで済む。
「ユウカ、どうしますか」
「………わかった。やろう!」
「ハハハハ……まずは貴様らの生命力を奪ってやる。くらえ!」
『ドゴォン!!』
乗っ取られたスケルトンは突然巨大な氷を飛ばしてきた。
ユウカはそれを見てミノタウロスを召喚し、氷を防いだ。
初めから巨大な氷を飛ばしてくるなんて、さっきの魂とは違う。
私達の戦いを見られていたから、こっちの攻撃手段はわかっている。
ユウカのミノタウロスは出すまでに少し時間が掛かるから、あの氷を連続で打たれたら終わりだろう。
「アイツは私が引き付けるから、ノアは隠れて様子を伺って!」
「ですがッ」
「邪魔なデカブツだ……だがもう少し威力を弱めてもよさそうだ。そうすれば防ぐのも間に合わないだろう」
そう言うと乗っ取られたスケルトンはもう一度氷を形成し始めたが、今度は先ほどよりも格段に早まっていた。
「ノア、頼んだよ」
『ドゴォン!!』
巨大な氷は一直線に私達のほうへ飛んできた。
私は咄嗟に氷が激突した衝撃でできた岩の影に隠れた。
ユウカは自分の体を近くにいたスケルトンに放り投げさせて、ギリギリで氷を回避した。
「クソッ」
ユウカ、避けられてよかった。
でもあんな避け方じゃ、空中に飛んだ瞬間が格好の的。
これじゃあ結局ユウカが一番危険だ。
「このッ、このッ!」
『ザッザッ……バキン』
「こんな氷、簡単に避けられる!」
どうにかしてユウカを………いや、ここはユウカを信じてアイツに隙ができるのを待ったほうが。
ユウカも私を信じてくれてるし。
「頑張ってください、ユウカ」
私は小声でそう呟いた。
「クソッ、このッ………! ハッ、うぐ……」
なんだろう? アイツ急に苦しみだして。
何かの攻撃……かな。
突然苦しみだしたスケルトンは、腹に空いた穴を押さえながらうめき声を上げ始めた。
そして宙に浮いていた体が段々と下がっていき、遂には地面に伏してしまった。
「うゥ、うぐ……一体、これは………」
そしてそのまま動かなくなってしまった。
「ノア、これって……」
「……お腹の穴から常に魔力が流れ出ていたことで、霊体を保てなくなった……とか」
「そっか、じゃあもう終わったのか」
いや、本当に魔力切れなのだろうか……?
だとしたら今の今までどうやってこの部屋に留まっていたの?
「う、うあ」
「ユウカ、まだそいつ動いています!」
すると突然倒れていたスケルトンが起き上がり、また宙に浮き始めた。
「ノア、こいつの霊体が見える」
「え!?」
ユウカが霊体を見ることができると言うことは、それだけ魔力が強いということ。
そうだとすると、もう手も足も出しようが………。
「こいつの霊体、ひとつじゃない」
ユウカには複数の霊体が見えている!
そうか、複数の魂が集まることでその場の魔力が濃くなるから、ユウカの魔眼で見えるようになっているのか。
「ウガアァァァァ」
いや、そんな事を考えている場合じゃない。
ヤツの体に触れるのなら今だ!
「フッ!」
私は叫び悶えるスケルトンの元へ勢いよく飛んでいった。
そして私の手は一直線にスケルトンの頭に触れた。
その瞬間スケルトンは叫ぶのをやめ、地面にゆっくりと倒れ込んだ。
「ノア、どうなったの?」
「さ、さあ。私にも何が何だか」
これで終わりなのだろうか? あまり実感が湧かない。
ハッ、そうだユウカは。
「ユウカ、無事ですか?」
私は呆気に取られているユウカの元へ飛んでいって問いかけた。
「う、うん。私はなんとも……ノアは大丈夫?」
「はい、私のほうも問題ありません」
よかった、ユウカは無事だ。
だけれど一体、あの声はなんだったのだろうか。
どこかで聞いたことがある気がしたけど。
「ふう、それにしても危機一髪だったね」
「はい………ですが一体なぜヤツは動かなくなったのでしょうか?」
「うゥん、私が考えるに………ノアがアイツに触れたことでなんか物凄い力が働いて、それでなんか物凄いことになった、とかかな」
「フフ、そうだといいのですが」
ですが本当にあの声は………。
ちょっと待って、思い出した。この声は。
『カラン』
すると突然倒れていたスケルトンのほうから物音が聞こえてきた。
『カランカラン』
「な、何この音?」
「ユウカ、一旦下がったほうが」
その音はユウカのスケルトンが倒れた時に鳴る音に似ていた。
そしてそれは段々こちらのほうへ近づいてきて、姿を現した。
「やっと会えた……いや、ずっと近くにいた」
そう喋ってきたのはスケルトンの頭蓋骨だった。
「ユウカ様」




