十六話 遺跡の主
『ギィィ』
「扉が……」
その扉は錆びた音を立てながらゆっくりと開いた。
この扉、ひとりでに開いたよね?
もしかしてこの先に遺跡の主が………じゃあこれって、私達に入って来いって言ってるのかな?
「ノア、これって……」
「はい、ここに遺跡の主はいます。きっと」
まあ普通に考えるならそうだよね。
今召喚されたスケルトンも門番みたいな感じだったし。
「入りますか?」
「うん、行こう」
もしもここに主がいるのなら、遺跡の攻略ももうすぐだ。
この遺跡から出られたら私が召喚された理由とかも調べたいし。
「あ、そうだ!」
「どうかしましたか?」
「ねえノア、この遺跡を攻略したら冒険者にならない?」
冒険者はノアの記憶で見た幼い頃からの夢。
私自身そういうものに興味が無いわけではない。
「冒険者………いいのですか?」
「うん。私は冒険者になって強敵と戦ってみたい」
「……わかりました、ここを出たら冒険者になりましょう」
まあ私が召喚された理由を調べようにも、どうすればいいかわからないし。
それに冒険者も楽しそうだし。
そういえば、冒険者ギルドってノアの記憶で見た限りでは、鎧を着た人達がお酒飲んだり他愛無い話で盛り上がったりと、まるで酒場みたいな感じだったな。
「ユウカ?」
「ああごめん。ちょっと考え事を………中に入る前に、まずはスケルトンをいかせよう」
私は数体のスケルトンに扉の奥へ入り、敵がいたら攻撃するよう命令した。
ミノタウロスはむしろ邪魔になると思い、その場で待機させた。
スケルトン達はカタカタという音を立てながら扉の中に入っていった。
『ザッザッ……バキン!』
すると扉の中で突然奇妙な音聞こえた。
それと同時に今まで聞こえていたスケルトン達の足音が一瞬で止んだ。
「これって、中にいた敵に攻撃されたってことかな?」
「さっきの音……ここの主は魔術を扱うのかもしれません」
魔術か……魔術は詠唱がいらないんだっけ……?
そういえば今までそんなやつとは戦ったこと無いな。
スケルトン達で攻撃を防げるかな……?
いやでも、さっきのあの音が聞こえてからスケルトンの足音が聞こえなくなった。
それってつまり一瞬でやられたってことだよね? スケルトンで大丈夫かな………ミノタウロスなら或いは。
「ユウカ、どうし」
「来い、我があるじの砦を荒らす不届き者共………」
「ノア、今中から声が」
「はい、遺跡の主……ではないようですが」
そうだよね、『我があるじの』って言ってたし、まだ先があるのかな?
それに話しかけてきたから会話ができるのかな? でも怒ってるみたいだし、素直に中に入って攻撃されても堪んないからなァ。
「うゥん……」
そうだ! こういう場合ってボスは部屋から出られないとか、そういう縛りがあったりするよね。
それじゃあここからスケルトンを送り続ければいずれは………グヘヘ。
「はあ……まったく」
え、なんか今溜息が聞こえ。
『ガタンッ』
すると突然後方から大きい物音が聞こえた。
それと同時に進んできた迷路が塞がれ壁ができた。
「な!」
そしてその壁は見る見るうちにこちらへ迫ってきた。
私達はその壁に押されて一気に部屋の中に入ってしまった。
「うゥ……ノア、大丈夫?」
「はい、なんとか」
びっくりした。なんで急に壁が。
この遺跡の自動修復みたいな原理かな?
それにしても強引だなァまったく………え、これって。
辺りを見渡すと、そこにはバラバラになったスケルトン達がいた。
そしてそのさらに奥には、全身を黒いローブで纏い、顔に奇妙な面をつけ、宙に浮きながらこちらをじっと見つめるスケルトンがいた。
「来たか、賊ども」
なにあれ、空飛んでる。
幽霊……には見えないし、何かの魔術とか?
いや、そんなことよりこの状況をどうにかして。
「ここがお前達の墓場だ」
『ザッザッ』
ローブを纏ったスケルトンはそう言うと右手で尖った氷を作り出し、こちらに飛ばした。
「うわ!」
『バキン!』
私は咄嗟に一体のスケルトンを私の前に出して、尖った氷を防いだ。
飛んできた氷がスケルトンに当たると、体は一瞬であちこちに飛び散った。
「ユウカ、走り回ってあの攻撃を避けましょう!」
「うん!」
私はスケルトンに距離を取ったまま走り続けるよう命令した。
相手の攻撃が届くよりも早くにスケルトンは走り続けた。
ひとまずこれで攻撃は当たらない。
とういうか、さっきの氷でスケルトン達をやったのか。
あの一撃は強力だな、スケルトンであれなんだから、私の体に当たったらと思うと……うう。
魔術を使うスケルトンか……どうやって倒そう。
「私の炎が効くか試してみます」
「うん、頼んだ」
ノアはそう言って火球を相手に飛ばした。
『ドォン』
火球は見事、相手に命中した……かに思えたが、相手が片手で作り出した半透明の障壁によって攻撃を免れていた。
「え、あれバリア?」
「防御魔術です……まさかあれ程の爆発を防ぐとは」
あれじゃこっちの攻撃が当たらない。
どうにかして……。
ふと周りを見てみると、最初にいた入口付近にポツンと佇むミノタウロスが見えた。
あ、ミノタウロスがいたんだった。忘れていたよ。
ひとまず攻撃が通じるか試してみよう。
私はミノタウロスに相手を攻撃するよう命令した。
するとミノタウロスは相手の元へ走っていった。
それを見た魔術師のスケルトンはミノタウロスへ氷を飛ばした。
だがその攻撃はミノタウロスの肩に当たって砕け、ミノタウロスにはまったく効かなかった。
『ドン!』
ミノタウロスは魔術師のスケルトンに右手で攻撃した。
その攻撃は魔術師のスケルトンを壁際まで押し退けた。
「クッ、この!」
魔術師のスケルトンは激昂しながら今までのとは比にならないほど大きな尖った氷の塊を空中に作り出した。
「なッ、ノア私の後ろに!」
私はミノタウロスを一体目の前に召喚して盾にした。
『ドゴォン!!』
巨大な氷はミノタウロスに激突し、轟音と共に辺りに土煙を起こした。
「……ノア無事?」
「はい、私は平気です」
物凄い音、耐えられてよかった。
それにしても、あんなのを連発されたら防ぎようが………ミノタウロスはどうなったかな?
しばらくすると土煙も晴れて周りが見通せるようになった。
そして私が目の前を見てみると、上半身が無くなっているミノタウロスがいた。
「ミノタウロスが……」
「ユウカ気をつけて、まだアイツが」
そうだ、アイツはどうなっているんだ?
流石にあの攻撃で動けなくなってるとかに……。
「くそ、この私に……貴様ら」
元気そうだな、うん。
どうしたものか。
でも、あの攻撃には結構隙があった。
その間にミノタウロスで……それとも大量にスケルトン出せばいけるかな?
スケルトンはいくらでも出せるけど、この場所は開けてるし、アイツのあの攻撃ならどんなに出しても一掃できる。
あの巨大な氷は作るのに時間が掛かるけど、私のスケルトン達じゃ間に合わない。
それならあの巨大な氷を出してる間にノアの炎で攻撃すれば当たるかも。
よし、この作戦でいこう。我ながら結構いい作戦なんじゃ!
「ノア、私が大量にスケルトンを出すから、アイツがさっきの攻撃を始めたら攻撃して」
「なるほど……あの攻撃のときは他の魔術を使うのは難しいでしょうし、いけるかもしれません」
ああ、そういえばバリアあったんだった。
意図せずしてバリアの対処していたな。
「やりましょうユウカ」
「うん!」
私は最初にミノタウロスを一体召喚し、その次に大量のスケルトンを召喚して相手の元へ向かわせた。
「そんなものをいくら出そうと!」
すると魔術師のスケルトンは巨大な氷を形成しはじめた。
ノアはその隙をついて火球を相手に飛ばした。
『ドォン』
放たれた火球は見事、魔術師のスケルトンのお腹に命中した。
「な、なにィ………」
「おお! 当たった!」
「やりましたユウカ」
「うん、バッチリだったよ、ノア」
よし、これで終わりだよね。
いや、でもまだ倒せてないかも。
スケルトン達に確かめさせるか。
「フフフ」
「え、今何か聞こえ」
「フハハハ」
その声が聞こえたと同時に、倒れていた魔術士のスケルトンが起き上がった。
「ようやくこの体に入ることができた」




