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死霊術士は生き還る  作者: ク抹茶
小さな人形編
15/143

十五話 ミノタウロスの一撃

「おお……」

「なんでしょうか、この模様は」


 その模様は壁や床だけでなく、天井にまで満遍なく彫られていた。


「ヒッ」


 ノアがすぐ近くの壁をよく見てみると、突然怯えたように私の元まで戻ってきた。


「どうしたの!?」

「いえ、少し驚いて」


 なんだろう、ノアが怯えてる。

 あの模様が原因だよね……?


 私はノアが見た壁に近づいて模様をよく見てみた。


「ノア、これに何かあるの?」


 私がその壁を見ても、やはり意味のわからない模様があるだけだった。


「それは、文字です」

「文字……? なんて書いてあるの?」

「………主様を尊敬しているという内容です」


 ああ、なるほど。

 つまりそんな感じの文がそこらじゅうに彫られているわけか………いや、それは気持ち悪い。

 この遺跡の主は余程崇拝されていたかったのかな?


 というか、これをあのミノタウロスが書いてたわけだよね。

 あんな巨体でこんな小さい文字を、しかもこんなに満遍なく。

 フフ、考えたら物凄くシュールだな。

 

「ユウカ、何を笑っているのですか」

「ああ、いや、変なこと考えちゃって……フッ」

「早く進みましょう。ここにはあまり長いしたくありません」


 ノアはそう言って迷路の奥へと進んでいった。


「な、待って、こんなところに置いて行かないで!」


----


 私達はアンデッドを倒しながら迷路を進んでいた。

 その間も文字は消える事はなく、むしろさらに増えていた。


「ノア、前から来る!」

「わかりました!」


『ドォン! ドォン!』


 ノアの放つ青色の火球にアンデッド達は次々と倒れていった。

 この階層に来てから明らかにアンデッドの数は増えていたが、ノアの放つ火球の攻撃範囲が広いためそれ程苦ではなかった。


「ユウカ、そっちにアンデッドが!」

「任せて」


 ノアは火球を遠くまで飛ばせるが、近くで爆発すると私に当たってしまう。

 従ってスケルトンが私の周りを囲み、近くにきた敵を殴って倒すという構えをとっていた。


「よし。やっぱり強い! 遠くも狙えるし守りも固いし」

「………はい」


 ノア、あまり元気ないな………。

 まあしょうがないか。ずっとこんなのが続いているんだから。

 私は読めないからわからないけど、感覚的にはストーカーの部屋に入ったみたいな……いや入ったことないから知らないけど。


「終わらないね、この文字」

「………はい」


 どうしよう、ノアがもう限界だ。

 どうにかしてこの状況を……そうだ! あの爆発する罠を壊したときみたいに壁を破壊して進もう!

 そうすればこの文字を見ずに最短でここを抜けられる………!。


 フフッ、文字を彫るミノタウロス思い出しちゃった。


「どうかしましたか?」

「いやなんでも、フッ……ノア、ここの壁をスケルトンで壊して進もう」

「……は、その手が」


 私は壁を壊すためにスケルトンを全員壁側まで寄せた。

 だがこの数では足りないと思い、また新たなスケルトンを召喚しようとした。


「この通路狭いからなァ」


 そう言って目の前にスケルトンを召喚した……が、いつもならすぐに召喚されるスケルトンが一向に現れない。


「あれ? 出てこない……」

「ユウカ、どうかしましたか?」


 すると紫色の光が周りに漂っているのに気づいた。


 あれ、これってスケルトンを召喚するときの光……。

 いつもならすぐに集まってスケルトンが出来上がるんだけど、おかしいな。


 やがてその光は通常通りに集まりだし、スケルトンの体を作っていった。

 だが、光が作るスケルトンの大きさは周りにいたスケルトンを優に超えていた。


「え、えええ!?」


 そして出来上がったスケルトンは明らかに人の形ではなかった。


 下半身は四足歩行の動物、上半身は人間の体。

 尊重はスケルトンの倍以上。


「これって、もしかして」


 そして何より頭は牛の骨だった。


「ミノタウロス……」


 現れたのはミノタウロスのスケルトンだった。

 それだけでなく狭い壁に挟まったまま出てきた。


「ああ、挟まってる!」


 そのミノタウロスは壁に挟まったまま動けずにもがいていた。


 ええ、何この状況。

 目の前に面白い体勢で動けないミノタウロスがいるんだけど。

 私はどうすればいいのだろう……。


「ユウカ……これは」

「私にもさっぱり」


 とりあえず周りの壁を壊して……いや、突然襲ってくるかも。

 じゃあこのミノタウロスを攻撃して……待てよ、このミノタウロスって絶対私が召喚したやつだよね。

 うゥん、じゃあ操れる……よね?


「ユウカ、どうしますか?」

「………ちょっと操れるか試してみる」

「わかりました、私はいつでも攻撃できるようにしておきます」


 私は壁に挟まったままのミノタウロスにそこから抜け出すように命令した。

 ミノタウロスは自分の体をよじりながら骨をギシギシと鳴らしていた。


『ビキッ』


 すると突然ミノタウロスと接触している壁に割れ目がはいった。

 その割れ目は段々と広がっていき、やがて辺りの壁を破壊した。


「おお!」


 でっかいからインパクトあるなァ。

 力も強いのかな………うん?


 ふとミノタウロスが壊した壁の向こうを見てみると、一直線の通路の奥に立派な鉄の扉があった。


「あれ、これもうすぐだったんじゃ」

「……はい」


 それにしても、このミノタウロスは……もしかして、いやもしかしなくてもさっき倒したミノタウロスだよね。

 だとすると、やっぱり私はミノタウロスの魂を吸い取って……。


 あれ、それってなんかカーラみたい。

 魂を奪ってそれでスケルトンを召喚する……やっぱりカーラに似てるよね。


「ユウカ」

「ん!」


 ノアが指差す方向を見てみると、紫色の光が大量に集まっていた。


「ッ! これは!」

「気おつけて下さい。何か召喚されます」


 そして徐々に光が集まり一体のアンデッドが召喚された。


「これは」

「鎧を着ている」


 そこに現れたのは普通のスケルトンではなかった。

 全身に漆黒の鎧を纏い、一本の片手剣を右手に、体の半分もある盾を持ったスケルトンだった。


「ユウカ、下がって」


『ドォン』


 そう言うとノアは鎧のスケルトンに火球を飛ばした。


 だがその攻撃は容易に盾で防がれてしまった。

 さらに鎧のスケルトンは走ってこちらに向かってきた。


「こっち来た、ミノタウロス!」


 私は咄嗟にミノタウロスへ鎧のスケルトンを攻撃するよう命令した。

 するとミノタウロスは目の前まで迫って来ていたスケルトンにパンチをした。


『ガンッ!』


 その攻撃は盾で防がれたが、その瞬間スケルトンは後方へ勢いよく飛んでいき、その場で腰をついた。

 そしてよく見てみると、スケルトンが手に持った盾がバラバラに崩れているのが見えた。


「おお……! はッ、ノア!」

「はい、任せてください!」


 ノアはミノタウロスの後ろから即座に火球を放った。

 その火球はそのままスケルトンの顔面に当たり、体の大部分を破壊した。


「み、ミノタウロス……強い」

「倒せましたか?」


 あ、そうだアイツは………。


 スケルトンのほうを見てみると、上半身が丸ごとなくなったまま動かないでいた。


 ふゥ、やったか。

 出てきた時は結構強そうに思えたけど、案外あっさりだったな。

 いや、そうじゃなくてミノタウロスが強かったのか………?


「動きませんね」

「うん、ミノタウロスのパンチ強かったね」

「はい、驚きました」


 ミノタウロスの力は人の形のスケルトンとは格が違うな。

 でも大きすぎて小回りは効かないから、こういう狭い所なんかではむしろ扱いに困る。


『ギィィ』


 すると突然閉まっていた鉄の扉がゆっくりと開き始めた。

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